チベット仏教圏で行われるチャム(仮面舞踊)の祭りでしばしば登場するのが、チティパティ(屍陀林王)と呼ばれる骸骨の仮面です。「墓場の主」という意味を持つこの仮面は、かつては苦行僧だったそうで、祭りの時に悪霊を退散させる重要な役割を担うとされています。
ラダックやザンスカールの各地のゴンパで行われるチャムでも、チティパティはよく登場します(ラマユルやピャンなど、ディグンパの祭りには登場しないようですが)。地元のラダック人の間でも大人気(特に子供に!)のこのチティパティ、僕の手元にある写真のコレクションをひと通りご紹介しようと思います。
上の写真は、マト・ナグランに登場したチティパティ。きりっと引き締まった顔立ちで、シリアスな舞いを踊っていました。
僕の経験では、ラダックのゴンパのチャムに登場するチティパティは、「シリアス系」と「フリーダム系」に分かれます。シリアス系は、ほかの仮面と同じように荘厳な舞いを粛々と踊る感じ。一方フリーダム系はかなりコミカルで、観客の帽子を取り上げて投げたり、若い女の子の膝の上にどすんと坐ってしまったり、ツァンパの白い粉をぶちまけたりと、やりたい放題(笑)。地元の人々から「アツァラ(道化)」と呼ばれるのもわかる気がします。
上の四人組は、ヘミス・ツェチュのチティパティ。絵に描いたようなフリーダム系です(笑)。
これは、タクトク・ツェチュに登場したチティパティ。シリアス系です。こうして見ると、同じチティパティでも、ゴンパによってずいぶん顔立ちが違うことがわかると思います。
ティクセ・グストルに登場したチティパティ。フリーダム系です。小柄だったので、少年僧が踊っていたのだと思います。何というか‥‥目がイッちゃってる感じで、それがかえって怖いですね(笑)。
スピトク・グストルに登場したチティパティ。フリーダム系で、長いひもに結わえつけたぬいぐるみのようなダオ(仏教における悪の象徴を表す人形)を、二人組でぶんぶんふりまわしていました。
ストク・グル・ツェチュに登場したチティパティ。フリーダム系だったかな? 歯ぐき全開の、のっぺりとした顔が面白いんですけど、やっぱりちょっと不気味な感じもしますね。
チティパティは、ゴンパ内部の壁画にもよく登場します。これは、ティクセ・ゴンパのゴンカン(護法堂)に描かれたチティパティ。なんとなく、シェーッ!って感じですね(笑)。
ラダックでゴンパやチャムを見学する時、こういう特定のモチーフにも気を留めていると、また違った見方ができて、興味も深まるのではないかと思います。チティパティ、要チェックです。
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