ラダックは、インドの最北部にある、平均標高3500メートルを超える山岳地帯の名です。かつてはラダック王国という独立した仏教王国でしたが、19世紀に滅亡し、後にインド領となりました。現在は27万人ほどの人々が暮らしています。
周囲をヒマラヤ山脈やカラコルム山脈に囲まれているため、陸路でラダックに入ることができるのは、短い夏の数カ月間のみ。峠が雪で塞がってしまう冬の間は、飛行機だけが唯一の交通手段となります。‥‥天候不順でしょっちゅう欠航になりますが。
パキスタンや中国との未確定の国境に接しているラダックは、1974年まで外国人の入境が許されていませんでした。閉ざされた環境で自給自足の穏やかな暮らしが営まれていたこの土地は、中国に占領されたチベット本土よりもチベットらしい風習が残っていると言われています。とはいえ、最近では外部からの人や物資の流入も増え、ラダックの人々の生活も徐々に変わりつつあるようです。
ラダックでは、ほとんど雨が降りません。年間降水量はわずか80ミリ程度。生きるものの影すら見えない、乾ききった岩山がはてしなく連なる光景は、よく月世界にたとえられます。乾燥している上に標高が高いこともあって、日射しは強烈。日向で肌を露出していると、あっという間に焼け焦げてしまいます。夏は気温が30度くらいまで上がりますが、冬の寒さは非常に厳しく、マイナス20度まで下がることもあります。
ラダックの中心都市はレー。周辺にはインダス川流域を中心に、村やゴンパ(僧院)が点在しています。南にはさらに険しい山々がそびえるザンスカール、東にはチベットに連なるチャンタン高原、北東には緑豊かなヌブラ谷、北西には花の民が暮らすダー・ハヌー、西にはムスリムが多く住むプリクといった地方があります。