2月20日と21日、上ラダック(トゥ)のマト・ゴンパで、ナグランと呼ばれる祭りが開催されました。この祭りは、2人の僧侶が読経と瞑想を経てラバ(シャーマン)となり、このゴンパの守護神であるロンツァン・カルマルを降臨させ、人々にさまざまな神託を与えることで有名です。
祭りでは、ラバの登場に先立ってチャム(仮面舞踊)の儀式が行われました。マト・ゴンパはラダックで唯一のサキャパという宗派のゴンパです。チャムの内容も、これまでに見てきたドゥクパやゲルクパのものとはかなり異なっていて、比較しながら見ていると興味深かったです。
さまざまな表情をした仮面が次々に登場します。でも正直なところ、人々のお目当てはロンツァン・カルマルなので、チャムの注目度はイマイチな感じでした(苦笑)。
タムツェクと呼ばれる大きな仮面。マト・ゴンパ特有のものだそうです。
途中から姿を現した、マト・ゴンパの座主、ルディン・リンポチェ。リンポチェの御前ともなると、僧侶たちの踊りにも力が入ります。
ラバとなった2人の僧侶が使う剣。残念ながら、ラバの撮影は禁止されていたため、写真でご紹介することができません。ラバたちは初日のチャムの終盤に姿を現し、右手に剣、左手に槍を持ち、「キキソソラギャロー!」と叫びながらものすごい勢いで屋根の上を走ったあと、境内に降りてきて「オーッ! アーッ!」と呻きながら踊りの輪に加わります。そのうちに上半身裸になってカタ(儀礼用の絹のスカーフ)を身体に巻き付け、ダオ(ツァンパで作った人形)の破壊を行ったり、あちこちを走り回って人々に加持を与えたりしていました。
2日目の朝、境内では僧侶たちがトゥン(長いホルン)やギャリン(短い笛)を吹き鳴らして、祭りの開始を告げていました。
2日目もチャムが行われましたが、内容的には初日とほぼ同じ。それから寒風吹きすさぶ中、2時間半ほども待たされて、再びラバたちが登場する時刻となります。
一部の隙もないほど境内に詰めかけた人々。この日姿を現した2人のラバは、初日とはまったく異なり、ぼさぼさの黒髪に顔面を布で隠し、全身黒塗りの胸と背中には忿怒尊の顔、皮の腰巻、右手に太鼓、左手に長いドルジェ(金剛杵)という、まさに異形の姿。それを見つめる人々は「キキソソラギャロー! ブローブロー!」とときの声を上げ、今年の豊作と幸運を祈るのでした。
ちなみにこの日、どうにかして写真を撮れないものかと粘ってみたのですが、2、3枚シャッターを切ったところでラバではない僧侶に見つかって、ちょっとしたもみあいの挙句、カメラを取り上げられてしまいました。「マトの祭りでラバの写真を撮っているところを見つかると、カメラを壊されてしまう」という噂を聞いていたので、内心これはヤバイなーと思っていたのですが、幸いにもカメラは簡単なお祓いを受けただけで、無傷で戻ってきました。ラバが写り込んでいた写真は彼らの前で消去しましたが‥‥。マトでラバの写真を撮ると、まじで洒落にならないようです。
マトのラバがどんなものなのかを知りたい方は、このブログの「ラダックの本・写真集」というページでも紹介している「マンダラの里 — ラダック、冬に生きる」という本に写真が掲載されていますので、ご覧になってみてください。それにしても、よく撮ったな、この写真‥‥。
待ってましたマト・ナグラン、ぱちぱちぱち。
サキャパだからなのか、他のゴンパとは衣装から内容からだいぶ違うようですね。ラダックで唯一、僧侶がラバになるゴンパですしね。確か2ヶ月くらいもの間、小さくて光の入らない堂に籠って瞑想修行するんだとか。光のなかに出てきたときのパワーはすごそうですね。
それにしても残念でしたね、写真撮れなくて。やっぱり特殊なんでしょうね、ラダックのなかでもとくに。かつてはラダック王国の命運も占っていたらしいですし、ダライ・ラマお抱えのネーチュンに近いのかもしれません。
一時帰国されるとのこと、予定があえばまたお話聞かせてください。
>きよしさん
マトでラバに選ばれた僧侶は、ゴンカンという狭くて暗いラカンで瞑想してトランス状態になるそうですね。床一面に麦粒が敷いてあって、壁には剣やら盾やら、凶悪な面構えの古い仮面やらがいっぱいかけてありました(これも撮影禁止)。いやー、ハードル高かったです。ちなみにカメラの件でちょっともめた時、周囲の観客からは「日本人がラバに殴られた!」というデマが広がっておりました(苦笑)。殴られてないって。
そうですね、僕はアースデイ東京の頃までは日本にいる予定なので、きよしさんのご都合のいい時にお会いしましょう!
いつもブログ楽しく見ています。
写真が臨場感があってラダックにいるみたいです。
リンクさせていただきましたがいいでしょうか?
日本も満喫してくださいね!
>Eriさん
ありがとうございます。リンク,もちろんかまいませんとも。今後ともよろしくお願いしますね。