2020年4月28日に『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』を発売してから、一年が経ちました。
去年の今頃は、初めて発出された緊急事態宣言の真っ只中で、僕の本も、もともと発売日に予定していた4月25日には物流の遅れの影響で配本が間に合わず、3日遅れの28日にようやく発売することができました。とはいえ、全国の主要都市の大型書店は軒並み休業中で、アマゾンや楽天も生活物資の配送を優先して本の販売はずっと滞ってしまっていて、いつ、まともに本を売れるようになるかどうかもわからず、まったく先の見通せない日々でした。
それでも、全国津々浦々の中小規模の書店さんやそのオンラインショップから、本当にたくさんの方々が『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』を入手して読んで、いろいろな形で感想を寄せてくださいました。あんな状況下でも、あの本を届けるべき人のもとには、ある程度は届けることができたのかもしれない、と、ほっとしたのを憶えています。本当にありがとうございます。
あれから一年が過ぎてもなお、世界はいまだに前代未聞の疫禍に苛まれていますが、ある意味、こういう時期にこそ、この『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』のような本は、静かに手に取ってページをめくられるのに相応しいのかもしれない、と思います。急速な変化の波に飲み込まれて忘れられつつある何か、本当は失ってはいけないかもしれない何かを、見たまま、あるがままに書き留めたのが、この本です。当たり前だと思っていた日常そのもののありようが不確かになっている今、この本を通じて、ザンスカールで人生を重ねてきた人々の姿を思い浮かべることで、僕たち自身も、忘れてはいけないこと、失ってはいけないものに、あらためて思いを向けられるのではないかと。少なくとも僕は、そう思っています。なので、まだ読んでおられない方は、よかったらぜひ、この本を手に取ってみていただけると、うれしいです。
6月に出す予定の新しい本(また発売日が緊急事態宣言下に重ならないといいんですが、苦笑)も、そういう意味では、いろいろな人のかたわらにそっと寄り添って、ページをめくられるのを静かに待っていてくれる本になるんじゃないかと、僕は勝手にそう思いながら作っています(笑)。もう少ししたら、新しい本についても、ちゃんとした形でお知らせできると思います。今しばらくお待ちを。
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