背中を押してくれた人

数年前、僕は迷っていました。

日本での仕事をすべて放り出して、ラダックに長期滞在して取材をするかどうか。もしラダックに行ってしまえば、時間もお金もそれなりにかかるし、戻ってきてからの仕事の保障も、ラダックの本を出せるという保障もありません。バカなことを考えず、日本で現状を維持している方がよっぽど楽です。でも、しかし‥‥。

Shojiそんな逡巡を続けていたある日、僕は一冊の本を手にしました。「氷の回廊 — ヒマラヤの星降る村の物語」。冒険家・写真家の庄司康治さんが、ザンスカールのリンシェで過ごした日々やチャダルの旅について綴った本です。美しい写真に彩られた穏やかな筆致の文章を目にした僕は、少なからずショックを受けました。日本人で、ここまで徹底してザンスカールやチャダルを取材している人がいるのか。だったら自分も、中途半端なことを考えずに、徹底的にラダックの取材に取り組まなければダメなんじゃないか、と‥‥。

一冊の本に背中を押されて、僕はラダックへ行くことを決意したのでした。

それから時は流れ、昨夜、その庄司康治さんご本人に直接お会いする機会がありました。実は庄司さんは、偶然この「Days in Ladakh」を見つけられたそうで、時々コメントまで寄せていただいていたのです。大先輩の前で緊張していた僕に、庄司さんは笑いながらこう声をかけてくれました。

「ラダックやザンスカールのことでは、山本さんが書いていたブログがすごく刺激になりました。おかげで、錆びつきかけていたあの土地への思いが甦りましたよ」

自分の背中を押してくれた人に面と向かってこんな風に言ってもらえるというのは、本当にありがたいことだなあ、と思います。ラダックでがんばってきて、よかった。僕にとっては何よりもうれしい、ねぎらいの言葉でした。
でも、ここで安心してしまうわけにはいきません。自分の持てる力のかぎりを尽くしてラダックの本をきちんと仕上げなければ、何の意味もなくなってしまいますから。今はこの目の前の課題に、全身全霊をかけて取り組みたいと思います。

さて、そのラダックの本がどうなっているかというと‥‥。

昨日、第2稿が完成しました! この後もう一度見直しをかけて、今月中に第3稿を仕上げ、そこからは編集者さんやデザイナーさんを交えて、具体的な編集作業に突入する予定です。発売はおそらく、2009年3月初旬になるのではないかと思います。また予定が見えてきたらここでもお知らせしますので、もうしばらくお待ちください。

ではまた。

7件のコメント

先日は、楽しいひとときを、遅ればせながら、ありがとうございました!
過分なご紹介、恐縮です
原稿も、いよいよ、完成に近づいているみたいで…
出版の日が楽しみですね!
ラダックの空を想うと、いつも、目を閉じて、旅の日々を想い出します
ひとたび、あの土地に深く関わると、いつの日か、もう一度、戻って行くような…そんな気にさえなってしまいます

>himalayaさん
コメントありがとうございます。こちらこそ、とても楽しかったです! 原稿、今まさに手を入れているところです‥‥(笑)。
そうなんですよね。あの土地には、理由もなくまた戻ってしまいたくなるようなものがありますよね。そのお気持ち、ものすごくよくわかります。
計画中のプロジェクトが成功されることを祈っています。

はじめまして。たぶんyama_takaさんのご近所の吉祥寺で永年カレー屋をやってる者です。
昨年、ダラムサラに20数年住んで亡命政権のために尽力している友人N君との縁でチベット支援のイベントに関わらせていただきました。
そんな中でyama_takaさんの”Days in Ladakh”も知り、遡って読ませていただきその写真と文章に魅了されてまいりました。
庄司康治さんの『氷の回廊』をはじめオリヴィエ・フェルミの『凍れる河』なども繙き、ラダック、ザンスカールへの夢が膨らんできています・・・。
もうすぐ還暦のメタボジジイ故、夢は夢でしかないのかも知れませんが、今春にはまずダラムサラを訪れることにしました。
刊行目前のラダック本、とても楽しみにしております。

>tsukimomo99%さん
はじめまして。コメントをいただいてびっくりしています。「kuu kuu」には、以前友人の平松さんに連れて行ってもらったことがありますし、「まめ蔵」は今でも時々通わせていただいています(笑)。
拙ブログをご覧になっていただき、ありがとうございます。まずはダラムサラへ行かれるというのは、とてもいい選択肢だと思います。ルンタレストランのごはんはおいしいですよ(笑)。
いつかは、ラダックへも、ぜひ。去年の夏は70に手が届くうちの両親も来たくらいですので、大丈夫ですよ、きっと。
本の制作、今まさに佳境です。がんばります。

わっ、そうですか!
嬉しいです・・・今日からストレッチ、ジョギング、酒控え、その他がんばってラダック、ザンスカール、なんとしても行きたく思い候です。
刊行の暁にはぜひ宣伝させていただきたく思います。
出版記念パーティーなどがあれば教えてくださいませ!どうぞよろしくお願いいたします!

>tsukimomo99%さん
ありがとうございます。出版は今のところ3月初旬の予定なのですが、3月と4月に、僕の友人が経営している三鷹のレストランで、写真展をやらせていただく予定です。もしお時間があるようでしたら、ごはんを食べがてら、足を運んでいただけると幸いです。
本や写真展の情報は、確定次第、こちらのブログでご報告させていただきます。

tsukimomo99%さん>
平松、と言ってもわからないかもですが、Kenzo&Micaのことです。
ひょんなところでつながりましたね。
ダラムサラ、うらやましいー。
酒控えはたぶん無理だと思いますので、まずはメタボ対策と高地に向けてトレーニングを積まれるのがよいかと思います。
よい旅を!

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