Days in Ladakh

まっさらな気持で

写真は、去年の夏、ヌブラのトゥルトゥクで撮った、星空と流れ星。

ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]」が発売されてから、3カ月ほど経ちました。この本を実際に作りはじめたのは去年の暮れ頃からだったのですが、それからの約半年間は、本当に怒涛のような日々で……。いつにもまして忙しかったルーティンワークや新規の依頼をこなしつつ、本の編集作業、書店へのご挨拶回り、三鷹と横浜での写真展、合計3回のトークイベントと、過去に記憶がないくらいの忙しさでした。その上、沖縄やブータンに取材に出かけたりもしてましたし。

でも、このタイミングで「ラダックの風息[新装版]」を世に送り出せたことは、僕自身にとっても本当に大きなプラスになったと思います。写真をゼロからすべて再構成して倍増させ、その後の歳月の中で感じていた思いをエピローグの新章(と未収録エピソードの小冊子)に凝縮させたことで、僕がこれまでラダックで積み重ねてきたものをすべて出し切ることができた、と実感しているからです。

これまでのことは、すべてOK。じゃあ、これからは? そう考えた時、今までになくまっさらな気持で、ラダックで、あるいは他の場所で、あれをやりたい、これもやりたい、とたくらんでいる自分がいます。どこまでやれるのか自分でもわかりませんが、だからこそ楽しみというか、やりがいがあるというか。こんなまっさらな気持になれたのも、ひさしぶりかもしれません。

そう、今年もラダックに行く時期が近づいてきました。7月11日に日本を発ち、翌12日にラダック入り。いくつかの取材に取り組んだ後、7月下旬からは現地発ツアーのガイドを務めます(各コースとも催行は決定してますが、お申し込みはまだ間に合うかも)。日本に戻ってくるのは、8月8日の予定です。

まっさらな気持で、再びラダックへ。いってきます。

旅とカメラと言葉が僕にくれたもの

6月11日(土)午後、京都の恵文社一乗寺店で開催した、写真家の吉田亮人さんと装丁家の矢萩多聞さんとのトークイベント「旅とカメラが僕たちにくれたもの」。僕にとって初の東京以外の場所でのイベント出演だったのですが、遠くは兵庫や大阪からなど、たくさんの方々にお集まりいただいて、大盛況のうちに終えることができました。「ラダックの風息[新装版]」も会場でたくさんお買い上げいただいて、とても嬉しかったです。お店の方にも喜んでいただくことができました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました。

今回ご一緒した吉田さんと矢萩さんは、トークがとてもナチュラルで面白くて、僕自身、話していてすごく楽しくて、いくらでもしゃべり続けられそうなほどでした。うまく話がまとまっていたのかどうか、例によって記憶が飛び飛びなので自信はないのですが……。ただ、ここ最近、約1週間のブータン取材など、写真家の方々と接する機会が多かったので、僕自身の旅と写真、そして文章の特徴について、おぼろげにつかんでいるだけだったものがある程度整理して捉え直せたような気がしていて、ラダックの話以外に、そのことを少しお話しできたのはよかったかなと思います。

僕は被写体と対峙した時、他のプロの写真家の方々に比べると、全然グイグイ前に行けないんですね。自分の新鮮な感動を瞬間的にズバッと切り取る、というのが、どうも苦手なようで。どちらかというと、ゆっくり、じっくり、慎重に見定めて、相手が人ならコミュニケーションを試みて、撮らせてもらえそうだったら撮る、無理そうならあきらめる。プロの写真家にあるまじき瞬発力のない弱腰な姿勢なわけです。一つの場面に費やす枚数も、全然少ないですし。

ただ、裏を返せば、それが僕の特徴でもある。最近そう思うようになりました。

前に三井昌志さんにも言われたのですが、僕のルーツは物書きなので、何かと対峙する時も、写真家というより物書きとしてのアプローチで考えているのだと思います。その人や風景やものごとを、じっくり見定め、考えて、自分なりに理解したい。そうしなければ撮れない、いや、そうするからこそ撮れる写真も、確実にあると思うのです。まあ、実際に撮り始めたら、意識はほぼ無の状態になっているとは思うのですが……。

その時、なぜ撮るのか、なぜ書くのか、自分なりの必然性を感じられるかどうかを確かめたい。僕にとって、写真を撮ることは、それについての文章を書くことと不可分ですから。逆に言えば、僕の写真は、文章と一体化することで初めて本来の力を発揮できるのかな、とも思います。

そんな風に思いをめぐらしていくと、旅とカメラと言葉が僕にくれたものは、本当に大きなものだったと思います。それらなくしては、今の僕という人間自体が成り立たなかったほどの。だからこれからもずっと、旅とカメラと言葉に関わり続けて、一冊でも多く本を作り続けたいと思っています。

写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」、横浜中華街でも開催します!

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3月末から5月末まで、東京・三鷹で開催していた写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」。約2カ月間の会期中、おかげさまでたくさんの方にご来場いただいたのですが、その一方で「都合がつかなくて行けなかった」「別の場所ででもまたやってほしい」という声も、少なからずこちらに届いていました。

そこで、以前「撮り・旅! 地球を撮り歩く旅人たち」にスリランカの素晴らしい写真をご提供いただいて、現在は横浜中華街で「旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ」を奥様と経営されている高橋良行さんにご協力いただいて、同店の店内で写真展「風息の行方」の延長戦を行わせていただくことにしました。約2週間という期間と店内の構造を考慮して、三鷹の展示での前期と後期の内容をミックスして再構成した展示にする予定です。もちろん、「ラダックの風息[新装版]」に未収録エピソードの小冊子と新旧表紙写真のポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。

会場となる「旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ」は、中東やアフリカなど他ではなかなか味わえないエスニックな料理の数々と世界各国の100種類以上のドリンクを楽しむことのできるユニークなお店です。旅カフェならではのゆるやかな雰囲気の中で、ラダックやザンスカール、スピティの写真を楽しんでいただけると嬉しいです。

三鷹での展示を見逃した方、この内容の展示は今度こそ最後になる可能性が高いので、どうぞお見逃しなく。僕も週末を中心にちょこちょこ在廊させていただくつもりなので、予定が決まったらTwitterFacebookページでお知らせしますね。ご来場、お待ちしています!

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山本高樹 写真展
「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」

インド北部、ヒマラヤの西外れにひっそりと息づくチベット文化圏、ラダック、ザンスカール、スピティ。この地をずっと見守り続けてきた「ラダックの風息[新装版]」の著者、山本高樹による最新写真展。空果つる地を吹き抜ける、風息の行方を辿る旅へ。

期間:2016年6月14日(火)〜6月29日(水)
会場:旅カフェ&バル Short Trip ショートトリップ
神奈川県横浜市中区山下町214 RIビル2F
TEL&FAX 045-641-6950 http://shorttrip.info
時間:14:00〜23:00
定休:月曜日
料金:無料(会場が飲食店なので、1品以上のオーダーをお願いします)

※会場では山本高樹の最新刊「ラダックの風息[新装版]」に部数限定の小冊子「未収録エピソード」とポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。

めぐり逢う場所で

2016年3月29日(火)から5月29日(日)まで、約2カ月間開催していた写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」。展示専門のギャラリーではなく飲食店の店内での展示というスタイルの写真展でしたが、期間中、本当に、本当にたくさんの方々にご来場いただきました。3月下旬に上梓したばかりの新刊「ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]」も、びっくりするほど大勢の方々に会場でお買い求めいただきました。心から感謝しています。

今回の写真展では、期間中に仕事の合間を縫いながら、できるだけ長い時間、会場に在廊することを心がけていました。4月と5月に書いた原稿の8割は、リトスタで在廊しながら書いたんじゃないかと思います(笑)。なるべく会場に身を置くことで、訪ねてきてくださった方々(知人の方も、初対面の方も)からいろんなお話を聞ける機会が増えて、僕自身にとっても貴重なフィードバックになりました。

4月と5月に開催したトークイベントも、この写真展もそうですが、こうしていろんな方々に出会える場所や時間を作るというのは、本当に大切なことだなと、あらためて実感しています。そうやって人とめぐり逢う場所でしか気付けないこと、伝わらないこと、感じ取れないことは、確実にあります。それをおざなりにして好き勝手に突っ走るだけでは、独りよがりになってしまいかねないですよね。だから、この写真展、本当にやってよかったと、しみじみ思います。

さて、今回の写真展、これで完全にフィナーレかと思いきや……場所を変えての延長戦、あるかも? 続報をお楽しみに。

吉田亮人×矢萩多聞×山本高樹トークイベント@恵文社一乗寺店(京都)のお知らせ

4月、5月に引き続き、6月のトークイベントのお知らせです。今回は何と! 僕にとっては初の地方開催のイベント出演です。日時は6月11日(土)午後、場所は京都では知らぬ人のいない書店、恵文社一乗寺店。トークのお相手は、注目の新作写真集「Tannery」を発売されたばかりの気鋭の写真家、吉田亮人さんと、その写真集のデザインを手がけられた装丁家の矢萩多聞さん。僕にとっても、一緒にお話をさせていただくのがとても楽しみなお二人です。旅について、写真について、そして本を作ることについて、たっぷりお話しできたらと思っています。関西のみなさん、ご来場、お待ちしています!

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吉田亮人×矢萩多聞×山本高樹トークイベント
「旅とカメラが僕たちにくれたもの」

旅に出て、どこかで、何かに、誰かと出会い、心を揺さぶられる。その心の震えを、写真家たちはカメラで記憶に焼きつけていきます。バングラデシュで、人間が働くことの価値と美しさを見つめ続けてきた、吉田亮人。吉田の作品の魅力と力強さを最大限に引き出す写真集を作り上げた装丁家、矢萩多聞。ヒマラヤの最果ての地ラダックにこだわり、そのありのままの姿を写真と文章で伝え続ける、山本高樹。インドやバングラデシュといった南アジアの国々と深い関わりを持つ3人が、旅と写真、そして本づくりについて、とことん語り尽くすトークイベントです。

■日時
2016年6月11日(土)13:30開場/14:00開演

■会場
恵文社一乗寺店イベントスペースCOTTAGE(コテージ)
京都市左京区一乗寺払殿町10 恵文社一乗寺店 南側
http://www.cottage-keibunsha.com

■料金
1000円

■予約・お問い合わせ
※要予約、予約後のキャンセルはご遠慮ください。
コテージご予約フォーム:https://cotage.sakura.ne.jp/event_form/
もしくは恵文社一乗寺店まで(075-711-5919)

【出演者プロフィール】
吉田亮人(よしだあきひと)
1980年宮崎市生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイにて日本語教師として現地の大学に1年間勤務。帰国後小学校教員として京都市にて6年間勤務し退職。2010年より写真家として活動開始。2014年12月、初の写真集「Brick Yard」を発行(私家版・限定200部・矢萩多聞デザイン)コニカミノルタフォトプレミオ2014年度大賞、Paris Photo-Aperture Foundation Photobook Award 2015 ノミネート、ナショナルジオグラフィック写真賞2015最優秀賞など受賞多数。

矢萩多聞(やはぎたもん)
1980年横浜生まれ。9歳のとき、はじめてネパールを訪れてから、毎年インド・ネパールを旅する。中学1年生で学校を辞め、ペンによる細密画を描きはじめる。1995年から、南インドと日本を半年ごとに往復し暮らし、銀座、横浜などで個展を開催する。2002年、対談本『インド・まるごと多聞典』(春風社)を刊行。この頃から本をデザインする仕事をはじめ、これまでに400冊を超える本をてがける。2012年、事務所兼自宅を京都に移転。現在、インド、横浜、京都を行き来し、本とその周辺を愉快にするために日々手を動かしている。近著に『偶然の装丁家』(晶文社)がある。

山本高樹(やまもとたかき)
1969年岡山県生まれ。 著述家・編集者・写真家。 2007年から2008年にかけて、インド北部のラダックに長期滞在して取材を敢行。以来、かの地での取材活動をライフワークとしている。 著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)『ラダック ザンスカール トラベルガイド インドの中の小さなチベット』(ダイヤモンド・ビッグ社)など。

それでも僕が旅に出る理由

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5月18日(水)夜に代官山蔦屋書店で開催した、写真家の三井昌志さんとのスライドトークイベント「ラダックと渋イケメン 〜それでも僕たちが旅に出る理由〜」。正確な数字はまだこちらに届いていないのですが、会場の後方の席までぎっしり埋まるほど大勢の方々がご来場くださって、終了後のサイン会でも長い列を作ってくださいました。本当にありがとうございました。

三井さんが小気味いいテンポのトークとともに見せてくれた渋イケメンたちの写真の素晴らしさはもう圧巻の一言で、そうした知られざる人々との出会いと、その時の自らの心の動きを三井さんが大切にされていることが伝わってきて、僕自身もとても楽しませていただきました。新鮮な出会いを求めて常に旅を続ける三井さんにも、芯の部分には常にぶれずに大切にし続けている視点がある。僕はラダックという一つの場所(といってもだいぶ広いですが)にこだわりながらも、そこから人と自然とのありようという、より広い視点を見出そうともしている。二人のそういう違いがあらためて浮き彫りになったのも興味深かったです。

今回のイベントのタイトルに使った「それでも僕たちが旅に出る理由」という文言は、僕が考えました。自分はなぜ旅に出るのか。なぜ旅にこだわるのか。正直言って、自分でもよくわかりません。ただ、旅の中でも自分にとって一番大切にしたいと思える旅は、必ず何らかの形で、旅の本にしたいと思っています。なぜ旅の本を作り続けたいと思うのか、それにははっきりとした理由があります。

このイベントの会場となった代官山蔦屋書店でかつて旅行書のコンシェルジュを務め、自身もトラベルライターだった森本剛史さんは、2014年の夏の終わりに亡くなられました。その年の暮れ、お別れの会が代官山蔦屋書店のすぐ近くで催された時、森本さんの書斎の様子を撮った映像が会場で上映されました。映し出されたのは、森本さんが次に書こうとしていた本の構想をびっしりメモしたノート。最後の最後まで、森本さんは旅の本を作り続けようとしていたのだと知りました。

その時、ぽん、と、バトンを渡されたような気がしました。「ヤマモト君、次はどんな本を作るの? いいのができたら、持ってきてよ」と、いつものように、軽い調子で言われながら。

世の中には、「自分の旅の本を作りたい」と思っている人はものすごく多いと思います。でも、みんながみんな、それを叶えられるわけではありません。能力云々以前に、仕事や家庭、健康の問題など、いろんな事情であきらめなければならない人もたくさんいます。ましてや、作り続けるのはもっと大変です。そんな中、僕はたまたま運のいい巡り合わせで、旅の本を作ることのできる境遇にいさせてもらっている。それでも苦労してばかりですが、やってやれなくはない立場です。

だったら、やれるだけやってみよう。森本さんやいろんな人たちから受け取った(と僕が勝手に思い込んでいる)無数のバトンを抱えて、自分にとって大切だと思える旅を本という形にする仕事を、続けられるだけ続けよう。走って走り続けて、いつか力尽きて、別の誰かにバトンを渡すことは絶対間違いないけれど、その時が来るまでは、全力で。

一冊の本が、誰かを旅に連れ出すこともある。旅に出られない人の心に、寄り添うこともある。そういう旅の本を作ることを、僕はこれからもずっと追い求めていきたいと思っています。

写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」後半の展示開始!

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3月29日(火)からスタートした写真展「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」、あっという間に前半の展示を終え、4月30日(土)からは半分強の写真を入れ替えた後半の展示が始まります。前半はパンゴン・ツォやチャンタン高原、ザンスカールなどの自然を主なテーマにした展示でしたが、後半は2012〜13年に集中的に取材したスピティの人々とその暮らしぶりを中心とした内容になります。

会場では引き続き、未収録エピソードの小冊子とポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行っています。僕の在廊の予定はSNSなどで随時お知らせするようにします。みなさんのご来場をお待ちしています。

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山本高樹 写真展
「風息の行方 ラダック ザンスカール スピティ」

インド北部、ヒマラヤの西外れにひっそりと息づくチベット文化圏、ラダック、ザンスカール、スピティ。この地をずっと見守り続けてきた「ラダックの風息[新装版]」の著者、山本高樹による最新写真展。空果つる地を吹き抜ける、風息の行方を辿る旅へ。

期間:2016年3月29日(金)〜5月29日(日)
会場:リトルスターレストラン
東京都三鷹市下連雀3-33-6 三京ユニオンビル3F
TEL&FAX 0422-45-3331 http://www.little-star.ws/
時間:11:30〜24:00(土日祝12:00開店/日祝23:00閉店)
定休:月曜日(臨時休業や貸切の日もあるため、同店のサイトをご確認ください)
料金:無料(会場が飲食店なので、1品以上のオーダーをお願いします)

※会場では山本高樹の最新刊「ラダックの風息[新装版]」に部数限定の小冊子「未収録エピソード」とポストカード2種をセットにした「ラダックの風息[新装版]限定特典セット」の販売も行います。