Days in Ladakh

「会う」ことの価値

7月3日(金)〜5日(日)の3日間、代々木上原のhako galleryで開催されたイベント「地球の歩き方インド・公開打ち上げ」。会期中は、本当にたくさんの方々にお越しいただいて、でもみなさまのご協力のおかげでさほど「密」な状態になることもなく、なごやかな雰囲気のうちに終えることができました。

僕は主に、会場2階の書籍販売ブースにいたのですが、新刊の『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』をはじめ、本が予想以上にたくさん売れて、忙しくも嬉しい時間を過ごさせていただきました。撤収の時に箱にまとめた売れ残りの自分の本がほんのちょびっとで、手に持って楽々持ち帰れるほどだったので、とても助かりました(笑)。

今回はトークイベントのように一気に大勢のお客さんを集めるイベントではなく、期間を長めに取った飲食と物販中心のゆるいイベントでしたが、お越しいただいた方々の表情を拝見していると、マスク越しでもみなさんとても楽しそうにされているのが伝わってきて、それが個人的にはすごく印象に残りました。そして、自分が手塩にかけて作った本を、お買い上げいただいたお客さんに直接お渡しできるというのは、やっぱり、何物にも代え難い喜びでした。

昨今のコロナ禍の影響で、リアルな場でのイベントがやりにくい状況は今後もしばらく続くと思いますが、いつの日か、リモートではなく直接「会う」ことの価値が、再び見直される時が来ると僕は思っています。その時が来たら、また何か面白い企画を実現できるように、頑張ります。

イベントにお越しいただいたみなさま、ご協力いただいた関係者のみなさま、本当にありがとうございました。

「地球の歩き方インド・公開打ち上げ」開催のお知らせ

ものすごくひさしぶりに、イベントのお知らせです。7月3日(金)〜5日(日)の3日間、代々木上原のhako galleryで、「地球の歩き方インド・公開打ち上げ」が開催されることになりました。

「打ち上げ」ではあるものの(笑)、実はどなたでも参加できる、オープンな集まりです。基本的には飲食と物販のイベントで、飲食はマサラワーラーによるカレーとKAILASによるチャイ、物販はアジアハンターのインド食器、まちかど倶楽部やKAILASによる雑貨、そしてもちろん『地球の歩き方インド』最新版や関係者の著作をはじめとする書籍の販売もあります。

『地球の歩き方インド』には、今回の版から僕も取材・編集スタッフとして関わらせていただいているので、期間中は僕も、会場2階にある書籍販売コーナーにて、自分の著作を販売させていただきます。7月3日(金)は12時から19時までフルタイムで、4日(土)と5日(金)は15時から19時まで会場にいるつもりです。

販売するのは、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(『夏の旅 ラダック、東の高地へ』付き)、『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(未収録エピソード小冊子付き)、『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』の予定です。『冬の旅』と『夏の旅』はもちろんですが、『ラダックの風息[新装版]』の未収録エピソード小冊子は、僕の手元にもほんの数えるほどしか残っていないので、未入手の方はこの機会にぜひ。

時節柄、新型コロナ感染対策を万全にしつつ、ゆるくのんびり楽しんでいただけるイベントにできればと思っています。お近くにお越しの際はぜひ。

逆巻く荒波を乗り越えて

5月13日(水)に開始して以来、会期を延長して1カ月以上開催させていただいてきた、ジュンク堂書店池袋本店での『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』刊行記念写真展が、無事に終了しました。コロナ禍で不穏な世情であったにもかかわらず、会期中には本当に大勢の方々に足を運んでいただき、ありがとうございました。おかげさまで、会場で用意していた『冬の旅』と『夏の旅』のセットは、納品分の7割ほどが旅立って行ったそうです。ジュンク堂書店池袋本店にはまだ少し在庫が残っているとのことなので、未入手の方はぜひ。

『冬の旅』と『夏の旅』のセットは、ほかにも全国各地の一部の書店でお取り扱いいただいていて、こちらのページにその一覧を掲載しています。なお、書店によってはすでに『夏の旅』の在庫がなくなっている可能性もありますので、その際はご容赦ください。

お近くに『冬の旅』と『夏の旅』のセットの取扱店がないという方は、ポルべニールブックストア書泉グランデでオンライン販売を実施していますので、ぜひそちらをご利用ください。ちなみにポルべニールブックストアでは、同店のWebショップで3月から5月までの売上で1位となったそうです。朝日新聞のサイト「好書好日」に掲載されている同店へのインタビュー記事でもご紹介いただいています。

また、ここ最近、『冬の旅』についての書評記事が、各媒体に続々と掲載されています。『山と溪谷』7月号では、知人の写真家、栗田哲男さんが書評を書いてくださいました。他に『岳人』7月号やVISAカード会員誌『VISA』7月号にも紹介記事が掲載されています。

共同通信社からは6月中旬に、全国の地方紙に『冬の旅』の書評を写真付きで配信していただきました。

こうした一連の書評記事が影響してか、発売から2カ月経った今も、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』は、オンラインを中心に好調なペースで売れているようです。本当にありがとうございます。

思い返せば、約2カ月前に『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』が発売された時は、非常事態宣言の影響で多くの大手書店が休業中という、前代未聞の状況下での船出でした。売りたい本はできあがっているのに、書店が営業していない。大手オンラインショップでも、生活物資を優先して、本の発送は後回しにされている。僕だけでなく、出版社も、世の中の誰も経験したことのない事態です。正直言って、当時は、途方に暮れるという言葉では追いつかないほどのもどかしさを感じていました。

でも、そんな中でも、オンラインを中心に本を販売してくださった書店さんや、営業を再開すると同時にたくさん仕入れてくださった書店さん、そして、近場への外出もままならない中で、本を購入してくださった大勢の読者の方々がいらっしゃいました。メールや手紙で寄せられたたくさんの読後の感想、胸に沁みました。上でご紹介した書評の数々もそうですが、大勢の方々のさまざまな形での支えによって、この本をお届けすることができています。本当に、感謝してもしきれません。

逆巻く荒波を乗り越えて、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』は、どうにか無事に船出して、大海原に漕ぎ出すことができました。これからも、一冊々々、辛抱強く、この本を読者の方々に届けていけたらと思っています。よろしくお願いします。

ラダック東部でのインド軍と中国軍の衝突について

コロナ禍で難しい状況に置かれているラダックに、また一つ新たな問題が生じました。2020年6月16日、ラダック北東部の暫定国境付近で、インド軍と中国軍の衝突が発生。銃火器の使用を伴わない、殴り合いや投石が主体の争いだったそうですが、にもかかわらず、両軍にそれぞれ数十名程度の死傷者が出たとのことです。

衝突が起こったのは、ヌブラから山を越えて東の方面に位置する、ガルワンと呼ばれる地域。ここに限らず、暫定国境付近では、双方の軍による越境しての示威活動が年中行われていて、ちょっとした諍いは日常茶飯事なのですが、今回の衝突のように、発砲を伴わなかったとはいえ、双方に多数の死傷者が出るまでにエスカレートする事態は非常に珍しいです。

現地のインド軍と中国軍との間では、両軍の将校による会談がつい先日も行われていて(上の写真は、そうした会談がよく行われる、ゼロ・ポイントと呼ばれる場所です)、暫定国境付近で睨み合っている両軍の部隊を、それぞれ段階的に撤退させていこうという合意に達したばかりだったと聞いています。その矢先に今回のような衝突が起こってしまったので、事態の沈静化には、しばらく時間がかかりそうです。

砲撃や爆撃を伴うような軍事行動に両軍が踏み切る可能性は依然としてかなり低いと思われますが、それでも通常よりははるかに予断を許さない状況だとも思います。今後、ラダック東部を移動する際には、以前より厳しいチェックや制限が課せられるようになるかもしれません(そもそもコロナ禍でしばらくは行き来自体できませんが)。今後の状況の推移を注視していきたいと思います。

チベットにまつわる、2冊の本

ここ最近、自分の本と仕事関連のツイートばかりだったので、たまには違う話題を。今年の3月と4月、2人の知人の方がそれぞれチベットを題材にした本を上梓されたので、その2冊を紹介しようと思います。

1冊目は、『パンと牢獄 チベット政治犯ドゥンドゥップと妻の亡命ノート』。著者の小川真利枝さんは映像やラジオのドキュメンタリー制作をはじめ、チベット関連では、チベット本土で映画を撮ったことで逮捕された夫ドゥンドゥップ・ワンチェンの釈放を待ちながら、ダラムサラで手製のパンを売って家族を養いつつ暮らす女性、ラモ・ツォを追ったドキュメンタリー映画「ラモツォの亡命ノート」の監督・撮影・編集を手がけられたことで知られています。

今回の『パンと牢獄』では、その映画を撮影した経緯をあらためてなぞりつつ、終盤に映画の完成後に米国への亡命に成功したドゥンドゥップへのロングインタビューが組み込まれています。このロングインタビューが本当に、凄まじい内容で……21世紀にもなって、隣国ではこんなことがいまだに行われているのかと、慄然としました。

読み進めながら強く感じたのは、小川さんの語り口が非常に公平で冷静だということ。こういうテーマの作品は、ともすると書き手の主義主張や思い入れがあふれてバランスを崩してしまいがちですが、この本では小川さんが見聞きして調べた事実をきちっと積み上げて組み上げられていて、ラモ・ツォとその家族に対しても時に客観的なまなざしを向けて、偏りのないバランスを保つことに成功しています。そうした冷静な目線で捉えているからこそ、喜び、悲しみ、強さ、弱さ、したたかさなど、ラモ・ツォたちの「人間らしさ」を素直に受け取ることができたように思います。

2冊目は、『月と金のシャングリラ 1巻』。漫画家の蔵西さんがマトグロッソで3年以上にわたって連載してきた(偶然にも今日が最終回の掲載日だったそうで……本当にお疲れさまでした)コミックの1巻目です。

舞台は、1940年代から50年代にかけてのチベット。山奥にある僧院で、ともに旅していた父親になぜか置き去りにされた少年ダワ。彼は沙弥となって、仲間のドルジェやガワンらとともに成長しながらも、心のどこかで父親を待ち続けるのですが……。せつない物語です。時代背景も、チベットにとってもっとも苛酷な(そしていまだに終わらない)時期の幕開けの頃ですし。8月に発売される完結編となる2巻では、当時のラサの様子なども描かれるはずです。

蔵西さんとはこれまでに、イベントその他で何度もお目にかかって、いろいろお話しさせていただいているのですが、チベットのことが本っっ当にお好きで、好きすぎてやばいんじゃないかというくらいのレベルに達しておられる方です(笑)。この『月と金のシャングリラ』でも、僧院の内部や仏像・仏具、僧衣、民族衣装、僧侶たちの暮らしぶりなどが、尋常でないくらい細かく丁寧に描きこまれています。膨大な量の資料に目を通して検証しなければ、とてもこんな風には描けないでしょう。そうしたディテールの積み重ねが、架空の僧院でのダワやドルジェたちの物語に、生き生きとしたリアリティを与えています。

小川さんの本も蔵西さんの本も、それぞれのライフワークとも呼べるテーマに真正面から取り組んでおられて、本当に読み応えがありました。ノンフィクションとフィクションの違いはありますが、どちらの作品も、チベットという土地とそこに生きる(あるいは生きていた)人々について、きちっと本質を捉えているという点では共通している気がします。今の時代を生きる人が、これらの本を、かの地について知るきっかけにしてくれたら、と思います。