チャダル(5):ツァザル〜グル・ド

カルシャを発った僕たちは、パドマ君とツェリン君の故郷、ツァザルに向かいました。途中で川の凍った部分を渡り、崖の上にある村を目指します。

パドマ君のおじさんの家にお邪魔すると、奥さんが毛糸を紡いでいる最中でした。ふわふわした灰色の羊毛がみるみるうちに細い糸となってきれいに巻き取られていくさまは、まさに職人芸といった感じ。

ツァザルからピドモに移動した日の夜は、今回の旅の中でも一番の冷え込みで、家の中で寝ているのに寒くて何度も目が覚めました。翌朝、ザンスカール川からはまるで雲のような霧が立ち上っていました。

ハヌミル近辺から、再びチャダルを歩く旅が始まります。帰りの行程は全般的に天気もよく、写真を撮るにはうってつけでした。

強烈な陽射しが雪や氷に反射するので、顔がどんどん日焼けしていきます。まさか、チャダルで日焼け止めを使うことになるとは思いませんでした‥‥。

チャダルの撮影では、夏のザンスカールでのトレッキングの時と同じく、トキナーのAT-X 124 PRO DX 12-24mm F4という広角レンズをメインに使用しました。というのも、チャダルの風景はスケール感がすごすぎて、一般的なズームレンズのワイド端の18mm程度では、とてもじゃないけど収まりきらないのです。12mmでズバッとフレーミングしてシャッターを切るのは快感でした。

難所のオマも、帰りの時にはちょこっと氷が張っていてくれて、なんとか崖を登ることなく、歩いて渡り切ることができました。危険な、しかし美しい場所です。

ニラクの茶店では、学校に戻るためにレーに向かったソナム君の代わりに、ワンチュクさんという老人が店番をしていました。「来年、わしのガールフレンドになってくれるような日本の女の人を連れてきてくれたら、ヤクを一頭タダでやるぞ!」えっと、もらったとして、どこで飼えばいいんですか(笑)。

チャダルの道中にはいくつもの氷の滝がありますが、その中でも最大のものは、ニラクの近くにあるこの滝でしょう。氷って、青いんですね‥‥。見れば見るほど、現実離れした光景です。

以前、リンシェで会ったことのある僧侶の一行と道連れになりました。パドマ君が氷の悪いところを迂回して岩場を越えるルートを案内します。

「ユキヒョウの足跡だ」とパドマ君。足跡はかなり大きく、太い尻尾を引きずった跡がついています。一度この目でユキヒョウを見てみたいものです‥‥(危険)。

出発して19日目の朝、スタート地点のグル・ドに到着。この後チリンまで歩いて、その日の夕方に一台の乗り合いジープを捕まえ、12人ものすし詰め状態でレーに戻りました。

凍てついた川を辿る、長く苛酷な旅。ラバーブーツもダウンジャケットもない遠い昔、このチャダルを旅していたザンスカールの人々は、どんなことを思っていたのでしょうか。

7件のコメント

写真を拝見していると、結氷状態が、悪かったみたいですね〜
水の中を、ジャブジャブと、歩きましたか?
雪豹は、チャダルで、いままで、3回見ましたよ〜

takaさん、チャダルおかえりなさい。何事もなくて良かった。
投稿は初めてだけど、鹿狩りのkojiといえばわかるでしょうか?
どうやらずっと歩いて行けたようで、下半身裸の徒渉はなかったのでしょうか?温かかったので心配してましたが、ちゃんと冷え込んでくれたようで、よかったよかった。

>himarayaさん
氷の状態が特に悪かったのは、ホトン・ヨグマとオマのあたりでしたが、履いていた長靴より深い水の中を歩くことはなかったです。崖を登る時の方がしんどかったですね。
ユキヒョウ、3回ですか? すごいですね〜。絶滅危惧種なのに。ブログには載せていませんが、アイベックスの群れには遭遇しました。
>kojiさん
もちろんわかりますよ。狩られてた側ですから(笑)。下半身裸はなかったです。ネタにならなくて申し訳ないです(笑)。チャダルを旅してる間は、寒いなんてもんじゃなかったです。息を吐いた途端、まつげや襟元で凍りつきますからね‥‥。

初めまして。あふれてくる自分の気持ちが止められず、コメントを書き込むことにしました。
寒い時期の山歩きのブログ、とても興奮し、楽しく、ドキドキして見せていただきました。
ラダックはこの十何年、自分がいつか行きたいところで気持ちが変わらないのに、縁がなく、まだ涎を飲み込みながら指をくわえているところです。その日々の様子が伝わるこのブログは大好きです。
yama_takaさんが、よい仲間に巡り会え、準備を周到にして、大変な道のりを乗り切った賜物。安易に実現しない自分次第の冬の山歩きの写真、とても美しい!怪我無く帰って来れてよかったです。
いつか、わたしも季節が自分の手に負えそうな頃に、ラダックやザンスカールの山歩きしたいという夢があります。
それまで、楽しみにブログを見せていただこうとおもいます(^_^)

>コロさん
コメントありがとうございます。このブログを楽しんでいただけているようで何よりです。ザンスカールへのトレッキングは、信じられないほど雄大な景色と、穏やかで優しい人々に出会うことができる、とてもいい体験になると思います。時間さえ都合がつけば決して実現不可能な旅ではないので、いつの日か、ぜひ。

素晴らしい風景と素敵な人たちばかりでため息が出ます、ふぅ。
でもやっぱりかなり厳しそうですね、いつかぼくも行ってみたいなあ。

>きよしさん
そう遠くない将来に、チリンとパドゥムを結ぶジープロードが開通するそうですから、そうなっちゃうとチャダルの魅力も半減しちゃうんですよね。開通前に、ぜひ(笑)。

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