カルシャを発った僕たちは、パドマ君とツェリン君の故郷、ツァザルに向かいました。途中で川の凍った部分を渡り、崖の上にある村を目指します。
パドマ君のおじさんの家にお邪魔すると、奥さんが毛糸を紡いでいる最中でした。ふわふわした灰色の羊毛がみるみるうちに細い糸となってきれいに巻き取られていくさまは、まさに職人芸といった感じ。
ツァザルからピドモに移動した日の夜は、今回の旅の中でも一番の冷え込みで、家の中で寝ているのに寒くて何度も目が覚めました。翌朝、ザンスカール川からはまるで雲のような霧が立ち上っていました。
ハヌミル近辺から、再びチャダルを歩く旅が始まります。帰りの行程は全般的に天気もよく、写真を撮るにはうってつけでした。
強烈な陽射しが雪や氷に反射するので、顔がどんどん日焼けしていきます。まさか、チャダルで日焼け止めを使うことになるとは思いませんでした‥‥。
チャダルの撮影では、夏のザンスカールでのトレッキングの時と同じく、トキナーのAT-X 124 PRO DX 12-24mm F4という広角レンズをメインに使用しました。というのも、チャダルの風景はスケール感がすごすぎて、一般的なズームレンズのワイド端の18mm程度では、とてもじゃないけど収まりきらないのです。12mmでズバッとフレーミングしてシャッターを切るのは快感でした。
難所のオマも、帰りの時にはちょこっと氷が張っていてくれて、なんとか崖を登ることなく、歩いて渡り切ることができました。危険な、しかし美しい場所です。
ニラクの茶店では、学校に戻るためにレーに向かったソナム君の代わりに、ワンチュクさんという老人が店番をしていました。「来年、わしのガールフレンドになってくれるような日本の女の人を連れてきてくれたら、ヤクを一頭タダでやるぞ!」えっと、もらったとして、どこで飼えばいいんですか(笑)。
チャダルの道中にはいくつもの氷の滝がありますが、その中でも最大のものは、ニラクの近くにあるこの滝でしょう。氷って、青いんですね‥‥。見れば見るほど、現実離れした光景です。
以前、リンシェで会ったことのある僧侶の一行と道連れになりました。パドマ君が氷の悪いところを迂回して岩場を越えるルートを案内します。
「ユキヒョウの足跡だ」とパドマ君。足跡はかなり大きく、太い尻尾を引きずった跡がついています。一度この目でユキヒョウを見てみたいものです‥‥(危険)。
出発して19日目の朝、スタート地点のグル・ドに到着。この後チリンまで歩いて、その日の夕方に一台の乗り合いジープを捕まえ、12人ものすし詰め状態でレーに戻りました。
凍てついた川を辿る、長く苛酷な旅。ラバーブーツもダウンジャケットもない遠い昔、このチャダルを旅していたザンスカールの人々は、どんなことを思っていたのでしょうか。