ラダックやザンスカールで、もっとも素晴らしい仏教美術が残っているのはアルチ・チョスコル・ゴンパだということは、誰に聞いても疑いの余地がないところだと思います。実際、毎年大勢の観光客がこのゴンパを訪れているのですが、古くてデリケートな壁画や仏像に対してカメラのフラッシュを浴びせるアホな輩が絶えないせいか、最近では内部での撮影が禁止されてしまいました。
しかし、写真が撮れないからといって、そのままアルチを去るのはまだ早い。この村にはもう一つ、見応えのあるゴンパが残っているのです。
この小さなゴンパは、「トゥジェチェンポ」あるいは「ツァツァプリ」と呼ばれているもので、正式な名称や由来などは不明です。僧はおらず、隣に住む村人が鍵を管理しているので、ここも「鍵を開けてくださーい!」と声をかけて頼むことになります。
中に入ると、周囲をぐるりと取り囲む見事な曼荼羅の洪水に、ただただ圧倒されます。先に紹介したピャンのグル・ラカンと同じく、赤を基調としたサキャパ様式の壁画であることから、描かれたのは13〜15世紀頃ではないかと考えられています。僕は特に、この写真の中央の観音様が気に入りました。ドンヨー・シャクパ(不空羂索観音)でしょうか?
この女性は誰だろう? さらりと軽快に描かれた画風に、独特のセンスを感じますね。
このゴンパ、壁画の保存状態は残念ながらあまりよくありません。剥落した部分はかなり稚拙な修復を受けていて、堂内の雰囲気を壊してしまっています。とはいえ、ご覧のように素晴らしい壁画が残っている部分もありますし、何よりここでは写真が撮れる(笑)。アルチに来たならぜひ立ち寄りたいゴンパです。‥‥ただし、くれぐれもフラッシュはOFFにして。
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