ダラムサラ 祈りの灯火

ダラムサラは、インド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州、標高1700メートルの地点にある、人口2万人ほどの小さな街です。1959年にダライ・ラマ14世がチベット本土から亡命して以来、この街にはチベット亡命政府の拠点が置かれています。

ダラムサラの街は、山のふもとに広がるロウワー・ダラムサラと、チベット人が多く住む山の上のマクロード・ガンジに分かれています。マクロード・ガンジは、ラダックのメインバザールを数段垢抜けさせたような感じで、おいしいレストランやカフェ、チベットグッズショップなどが立ち並ぶ、とても居心地のいい場所です。ここに半年、一年と長期滞在して、チベット語や仏教の勉強をする旅行者もたくさんいます。

街角でギュマ(血のソーセージ)を炒めて売っているおばちゃん。こういう光景を目にすると、なんだかほっとしますね。ちなみに僕は、ギュマはちょっと苦手です。

道端の露店には、ダライ・ラマ法王やカルマパ17世、仏教の諸尊のポストカードがずらりと並んでいます。さすがお膝元。

ダライ・ラマ法王のパレス。ポタラ宮に比べるとずいぶん簡素です。ツクラカン(中央寺院)前の広場に面しています。

ツクラカンに掲げられた、チベットで虐殺された被害者の写真。殺された同胞の痛みを忘れないために、こういった写真は街の至るところに張られています。

中国当局へ抗議の意志を表明するハンガーストライキは、今もマクロード・ガンジで続けられています。少し前までは、この街でも毎日のように数千人規模のデモが行われていたそうです。

3月14日以来、毎日続けられているキャンドルライティング。この日は49日目ということで、いつもより大勢の人々が集まりました。

ろうそくを手にした人々の長い列は、夕方18時頃にマクロード・ガンジのバススタンドを出発して、街の中を回った後、ツクラカンに向かいます。

僧侶の方々だけでなく、じいちゃんばあちゃん、おじさんおばちゃん、小さな子供たちまで、たくさんの人々がろうそく片手に歩いています。外国人も大勢参加していました。

ツクラカンに着くと、手渡された小さな灯明にろうそくで火を付けて、境内に置かれたテーブルに並べていきます。

ツクラカンでは大勢の僧侶たちが、腹にずしんと響く低い声で読経を行っていました。ギュト寺の僧侶の方々の声明だと思います。

人々はツクラカン前の広場に座って、虐殺の犠牲者たちのために祈りを捧げます。隣に座っていた僧侶のろうそくの脇に、ぽとりと一枚、緑の葉っぱが落ちていました。

読経が終わると、人々は立ち上がって黙祷を捧げ、最後に「ツェメーユンテン」という祈りの歌を歌いました。この歌の詞は、ダライ・ラマ法王がインドに亡命された頃、ご自身で書かれたものだそうです。

張り裂けんばかりの悲しみと、いじらしいほどささやかな願い。人々の歌声を聞いていると、思わず目に涙がにじんできました。

この歌に込められた法王やチベットの人々の祈りに比べれば、先日の長野の聖火リレーに中国大使館からおこづかいをもらってやってきて、ヘラヘラ笑いながら五星紅旗を振っていた中国の人たちの「愛国心」なんて、ひどくうすっぺらいものに思えてしまいます。自分の国を愛する前に、苦しんでいる人々を思いやる気持を持ってもらいたいものです。

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