ティクセ グストル

10月28日と29日、ティクセ・ゴンパでグストルという仮面舞踊(チャム)の祭りが開催されました。グストルとは9の付く日に行われる祭りのことで、ゲルクパという宗派特有のものです。

グストルの期間中は、魔力が強すぎるため普段は顔を布で覆われているゴンカンの守護尊もすべて開帳されます。ドルジェ・ジッチェ(金剛畏怖)、すごい迫力でした。

今回の祭りで面白かったのは、ラバ(シャーマン)が重要な役割を担っていたということ。パンデン・ラモ(吉祥天女)を降臨させる儀式を行ったあと、ゴンパの屋根の縁を走り回っていました。危ない危ない。

初日は日曜日だったこともあってか、ゴンパの最上部にある会場には、大勢のラダッキが詰めかけました。外国人観光客まみれだった夏のチャムより、よっぽど健全な光景です。地元の村人による会場整理のマネジメントもちゃんとしていて、気持よく見学することができました。

色とりどりの守護尊の仮面が、入れ替わり立ち代わり登場しては、舞を披露していきます。この剣、よく見るとしっかり刃がついているようで、怪我しないかと見ていてヒヤヒヤしました。

ティクセのグストル特有の儀式が、この紙に描かれたダオを焼却する儀式です。僕はカメラを構えて紙に火が付く瞬間を狙っていたのですが、いきなり目の前でものすごい火柱が上がって、「おおぅ!」と思わずファインダーから目を離した隙に、紙のダオは一瞬で燃え尽きてしまいました‥‥。このへんがプロのフォトグラファーとのウデの違いですね‥‥。

鹿の仮面も登場。彼らは結構派手な舞を踊る役割を担っているようです。

少年僧が扮したアツァラ(チティパティ)も登場。観客の帽子や持ち物を取り上げて放り投げたり、いきなりひざの上にどすんと座ったり、傍若無人の限りを尽くしていました(笑)。

2日目の午前中には、所属するすべての僧侶とともに、ティクセ・ゴンパの座主、ケンポ・リンポチェが登場。地元の有力な支援者と思われる人々を迎えてのセレモニーが行われました。

ティクセでは、ほかのゴンパの祭りに比べて、少年僧を積極的に登用して、いろんな役割を担わせていたのが印象的でした。この小坊主さんも、合図の笛を一生懸命吹いていましたね。なんだかディジー・ガレスピーみたいだなあ(笑)。

パンデン・ラモの仮面も登場。こんな怖い顔をしていますが、これでも女尊です。孔雀の羽をあしらった頭上のパラソルがチャームポイント。

祭りの終盤には再びラバが登場。手渡されたチャンをぐい飲み(するフリを)しては、屋根の縁を右に左に駆け回っていました。観客の大半もお目当てはこのラバの神託だったようで、みな一心に手を合わせて祈っている姿が印象的でした。

初日には鹿の仮面、2日目には黒帽の僧侶シャナクによって、ダオの破壊の儀式が行われました。最後はゴンパの裏手で、トルマというバターで作られた彫刻を火の中に投じる儀式が行われ、グストルは終了。

帰り道、現地で知り合った日本人の方々と「いいお祭りでしたね!」と何の気兼ねもなく言い合える、充実した内容だったと思います。観光化されていない本来の姿のチャムを見るなら、このグストルのように、冬に開催されるものを訪れた方がいいかもしれません。

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