旅をしてきた本

この間、パタゴニア東京ゲートシティ大崎店で開催した、冬のラダックをテーマにしたトークイベントでのこと。

イベント終了後、会場では「ラダックの風息」と「ラダック ザンスカール トラベルガイド」も販売させていただいたのですが、実は、あんまり売れませんでした(苦笑)。というのも、ご来場いただいた方々の多くが「もう持ってる」と。会場で売れた数よりもっと多くの方々が、自宅からわざわざ本を持ってきて、サインを依頼してくださったりしました。

そんな中、今年の秋にラダックに行ってきたという女性が、「すみません、こんなにボロボロになっちゃってて、どうかと思ったんですけど‥‥サインをお願いできますか?」と、「ラダック ザンスカール トラベルガイド」を差し出してくれました。それはもう、ほんとにボロボロで(笑)、カバーはなく、表紙は折れ曲がり、ページの角は擦り切れてしまってました。でも僕は、それがとてもうれしかったんですね。

きっとこの本は、彼女が旅程を組む時から何度もめくられてたに違いありません。そしてカメラやパスポートと一緒にバッグに入れられ、飛行機に乗ってはるばるラダックまで運ばれて、現地に着いてからも、路上で、宿で、食堂で、時には誰もいない荒野で、何度も何度もバッグから取り出され、めくられ、また突っ込まれ‥‥彼女の旅を支え続けて、また日本に戻ってきたのです。旅をしてきた本。それはガイドブックとして、一番幸せな読まれ方ではないでしょうか。

おつかれさま。そして、ありがとう。僕はボロボロになったその本に、声をかけてねぎらってあげたくなりました。

4件のコメント

私も9月に少しばかりラダックに行ったのですが
旅仲間の女性も 「トラベルガイド」を持っていました。
何かあると 常に開いて見ていました。
そう言う私も 実は同じなのでした。
見やすいのに 丁寧に書かれていて 次回も
絶対に持って行きます。
なので・・・大事に見て それほど過酷には
扱わないように気を付けました。(笑)

>霧のまちさん
ありがとうございます。もちろん、大事に扱っていただけるのもうれしいです(笑)

おはようございます。
その、ボロボロのガイドブックを差し出した者です。先日はありがとうございました。
10月のラダック行き(夏ではなく、10月でした)はわたしにとって大切な旅だったので、ずっといっしょだったあの本にサインをいただきたくて、失礼を承知でお願いしました。こんな風に思っていただけるなんて、思い切ってお願いして良かった。
おっしゃる通り、あの本は日本でしばらく朝夕の満員電車に揺られ、その後飛行機に乗ってデリーからレーに入り、チャン・ラを超え、カルドン・ラを超えて、トゥルトゥクで日向ぼっこをしてきたものです。まだいつになるかわかりませんが、今度はザンスカールに連れていきたいと思っています。花の民の夜祭りにもいつか。
ちなみに、カバーは紛失したわけではなく、帯といっしょに本棚で留守番してもらっていました。あの日山本さんにサインをいただいた本は、いまはカバーをかけた状態で、やはりボロボロになった 旅行人ノート・チベット の隣に並んでいます。
素晴らしいガイドブックをありがとうございました。出発前にこの本に出会うことができて、ほんとうに幸運でした。

>あらいゆうこさん
こちらこそ、どうもありがとうございました。あの本、そんな長旅をしていたんですね(笑)。本当に、とても幸せな一冊になったと思います。いつか、ザンスカールにもお伴させてあげてください。

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