ホースマンのコンチョックさんのお宅で一晩お世話になった僕は、彼や馬たちとともに、再び山の中に分け入っていくことになりました。ハンカルの村を過ぎたあたりに、立派なマニ壇がありました。
タチュンツェというキャンプサイトを過ぎ、さらに上へ上へと登っていくと、思いがけないところに小さくて綺麗な池がありました。馬たちとともに先行していたコンチョックさんが待っていてくれて、ここでおひるごはん。チャパティとゆでたジャガイモ。この池の水もおいしかったです。
標高4000メートルを軽く超える場所なのに、周囲には黄色や紫のごく小さな花々が一面に咲いていました。何だか不思議な気分です。
雲の切れ間から射し込んできた日の光にふと顔を上げると、僕の頭上のすぐ上を、二羽の巨大なゴールデンイーグルが、ゆったりと弧を描きながら舞い上がっていきました。その神々しさに、僕は圧倒されてしまいました。
最後の峠、ゴンマル・ラのベースキャンプ、二マリン。標高4700メートルに達するこの場所は、真夏でも非常に寒く、夜は氷点下まで気温が下がります。持っている服を全部着て寝袋にくるまってもほとんど眠れず、翌朝は、テントも靴も凍り付いていました。
二マリンで幕営した日の夕方、近くに住む遊牧民が、ものすごい数の羊やヤギたちを追って家に戻っていきました。羊もヤギも冷たい川の中に入るのは嫌なようで、一つだけある橋を行儀よく渡っていきました。
その羊やヤギたちがどんな場所で寝ているかというと、こんな感じです。これだけぎっしり集まっていれば、多少はあったかいのではないでしょうか。
最後の峠、ゴンマル・ラの高さは5000メートルを超えます。周囲にはまだ残雪が残っています。ひさびさに峠らしい写真を撮ってみました(笑)。
峠から下っている途中、宝石のように綺麗な花々の群生地を見つけました。こんなに美しい野生の花を見たのは初めてです。
野生の羊の一種、ブルーシープの群れに遭遇しました。驚かさないように、そっと望遠レンズで写真を撮り続けていたら、思いがけないほど近くにまで来てくれました。
峠を越えてからトレッキングの終点のシャン・スムドまでは、赤い岩の渓谷を流れる沢沿いの道を下っていきます。右に左にとしょっちゅう沢を渡らなければならなかったので、楽しかったけど、結構疲れました。
ふと横を見ると、小さな沢が山塊を真っ二つに叩き切ったような垂直の断崖がそびえていました。こんな光景が当たり前のように見られるのも、ラダックならではです。
終点のシャン・スムドに到着した僕は、翌朝のローカルバスでレーに戻りました。とりたてて大きなトラブルもなく、なおかつラダックの人や自然の在りように直に触れることができた、愉しい旅になりました。