チャダル(3):ニラク〜ザンラ

チャダル(3):ニラク〜ザンラ

ニラクに着いた日に降りはじめた雪は激しさを増し、丸2日降り続けました。次の行程には難しいポイントが待ち構えているため、僕たちは村の下手にある小さな石造りの小屋の茶店に泊めてもらって、天候の回復を待つことにしました。

茶店の店番の少年、ソナム君。ものっすごくきらきらした目と人なつこい笑顔の子ですが、いったん仲良くなると、「にーちゃん、彼女いる? 彼女の夢見て×××××」とエロいことばかり聞いてくるので、頭をぴしぴし、ぐりぐりしてやりました。どこの国でも、12歳の少年はみんなエロガキです。

ニラクでお茶をご馳走になった一家の若奥様。ザンラ出身だそうです。こんなに若くてかわいいのに、すでに3人の子持ち。ご主人とはレーで知り合った恋愛結婚だとか。

チャダルで最大の難所、オマ。両岸は切り立った断崖絶壁で、川の流れも速くて結氷しにくいという難しいポイントです。この日は氷がほとんどない部分が多く、崖にはいつ崩れるかわからない雪も積もっているという最悪のコンディション。数メートル上の崖にまばらに打ち込まれた鉄筋の足場だけが頼りです。パドマ君たちはこの日行きあわせた別の大人数のグループのポーターたちと協力して、足場周辺の雪を取り除いてザイルを張り、バケツリレー方式で荷物を安全な場所まで運びました。

この別のグループはアメリカ人のライターとインド人のフォトグラファーという、言うなれば同業者たちだったのですが、僕がザイルにつかまって崖をよじ登っている時、背後でアメリカ人の男性が足を滑らせて、川に落っこちてしまいました。うちのツェリン君が自分の身も顧みずに崖から滑り降り、川の中に腕を突っ込んで彼を引き上げなかったら、やばかったんじゃないかと思います。

オマを無事渡りきってひと安心、別グループのポーターたちと休憩中の3人。お手柄のツェリン君は、あちらのグループで一躍時の人となっていました。

この日は、ニラク・バオと呼ばれる洞窟で一夜を明かしました。雪混じりの冷たい風が吹き込んできて、寝袋にくるまっているのにろくに寝られませんでした。

翌日、ニラク・バオを出発して、ハナムルという村を目指します。積もったばかりの雪は深く、足にねっとりと絡みついてきます。疲れる。とにかく疲れる。もうヘトヘトです。

ハナムルの民家に泊まった日の翌朝は、ひさびさの晴天。キンキンに冷え込んだ空気の中、川面からもうもうと霧が立ち上ります。

蓮の葉のように丸い、できたばかりの氷。古代の原始生命体のようです。

ピドモという村で昼飯をご馳走になった、パドマ君のおばさんのツェギャルさん。彼女のお宅には、帰りにも一泊させてもらうことになりました。

トゥンドゥプさんの故郷、ザンラに到着。写真はザンラ・チョモ・ゴンパという尼僧院です。この村には、かつてパドゥム王とともにザンスカールを二分して支配していたザンラ王の末裔が住んでいます。

ちなみにこの日僕が泊めてもらったのは、そのザンラ王の居城、ザンラ・カル。後継者のカルザン・チョトゥク・ナムギャル・デーさんは、パドマ君の大学時代の同級生なのだとか。二階に台所が二つもあったり、客間からトイレまで恐ろしく遠かったり、とにかく大きなお屋敷でした。

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