Days in Ladakh

ラダック東部でのインド軍と中国軍の衝突について

コロナ禍で難しい状況に置かれているラダックに、また一つ新たな問題が生じました。2020年6月16日、ラダック北東部の暫定国境付近で、インド軍と中国軍の衝突が発生。銃火器の使用を伴わない、殴り合いや投石が主体の争いだったそうですが、にもかかわらず、両軍にそれぞれ数十名程度の死傷者が出たとのことです。

衝突が起こったのは、ヌブラから山を越えて東の方面に位置する、ガルワンと呼ばれる地域。ここに限らず、暫定国境付近では、双方の軍による越境しての示威活動が年中行われていて、ちょっとした諍いは日常茶飯事なのですが、今回の衝突のように、発砲を伴わなかったとはいえ、双方に多数の死傷者が出るまでにエスカレートする事態は非常に珍しいです。

現地のインド軍と中国軍との間では、両軍の将校による会談がつい先日も行われていて(上の写真は、そうした会談がよく行われる、ゼロ・ポイントと呼ばれる場所です)、暫定国境付近で睨み合っている両軍の部隊を、それぞれ段階的に撤退させていこうという合意に達したばかりだったと聞いています。その矢先に今回のような衝突が起こってしまったので、事態の沈静化には、しばらく時間がかかりそうです。

砲撃や爆撃を伴うような軍事行動に両軍が踏み切る可能性は依然としてかなり低いと思われますが、それでも通常よりははるかに予断を許さない状況だとも思います。今後、ラダック東部を移動する際には、以前より厳しいチェックや制限が課せられるようになるかもしれません(そもそもコロナ禍でしばらくは行き来自体できませんが)。今後の状況の推移を注視していきたいと思います。

チベットにまつわる、2冊の本

ここ最近、自分の本と仕事関連のツイートばかりだったので、たまには違う話題を。今年の3月と4月、2人の知人の方がそれぞれチベットを題材にした本を上梓されたので、その2冊を紹介しようと思います。

1冊目は、『パンと牢獄 チベット政治犯ドゥンドゥップと妻の亡命ノート』。著者の小川真利枝さんは映像やラジオのドキュメンタリー制作をはじめ、チベット関連では、チベット本土で映画を撮ったことで逮捕された夫ドゥンドゥップ・ワンチェンの釈放を待ちながら、ダラムサラで手製のパンを売って家族を養いつつ暮らす女性、ラモ・ツォを追ったドキュメンタリー映画「ラモツォの亡命ノート」の監督・撮影・編集を手がけられたことで知られています。

今回の『パンと牢獄』では、その映画を撮影した経緯をあらためてなぞりつつ、終盤に映画の完成後に米国への亡命に成功したドゥンドゥップへのロングインタビューが組み込まれています。このロングインタビューが本当に、凄まじい内容で……21世紀にもなって、隣国ではこんなことがいまだに行われているのかと、慄然としました。

読み進めながら強く感じたのは、小川さんの語り口が非常に公平で冷静だということ。こういうテーマの作品は、ともすると書き手の主義主張や思い入れがあふれてバランスを崩してしまいがちですが、この本では小川さんが見聞きして調べた事実をきちっと積み上げて組み上げられていて、ラモ・ツォとその家族に対しても時に客観的なまなざしを向けて、偏りのないバランスを保つことに成功しています。そうした冷静な目線で捉えているからこそ、喜び、悲しみ、強さ、弱さ、したたかさなど、ラモ・ツォたちの「人間らしさ」を素直に受け取ることができたように思います。

2冊目は、『月と金のシャングリラ 1巻』。漫画家の蔵西さんがマトグロッソで3年以上にわたって連載してきた(偶然にも今日が最終回の掲載日だったそうで……本当にお疲れさまでした)コミックの1巻目です。

舞台は、1940年代から50年代にかけてのチベット。山奥にある僧院で、ともに旅していた父親になぜか置き去りにされた少年ダワ。彼は沙弥となって、仲間のドルジェやガワンらとともに成長しながらも、心のどこかで父親を待ち続けるのですが……。せつない物語です。時代背景も、チベットにとってもっとも苛酷な(そしていまだに終わらない)時期の幕開けの頃ですし。8月に発売される完結編となる2巻では、当時のラサの様子なども描かれるはずです。

蔵西さんとはこれまでに、イベントその他で何度もお目にかかって、いろいろお話しさせていただいているのですが、チベットのことが本っっ当にお好きで、好きすぎてやばいんじゃないかというくらいのレベルに達しておられる方です(笑)。この『月と金のシャングリラ』でも、僧院の内部や仏像・仏具、僧衣、民族衣装、僧侶たちの暮らしぶりなどが、尋常でないくらい細かく丁寧に描きこまれています。膨大な量の資料に目を通して検証しなければ、とてもこんな風には描けないでしょう。そうしたディテールの積み重ねが、架空の僧院でのダワやドルジェたちの物語に、生き生きとしたリアリティを与えています。

小川さんの本も蔵西さんの本も、それぞれのライフワークとも呼べるテーマに真正面から取り組んでおられて、本当に読み応えがありました。ノンフィクションとフィクションの違いはありますが、どちらの作品も、チベットという土地とそこに生きる(あるいは生きていた)人々について、きちっと本質を捉えているという点では共通している気がします。今の時代を生きる人が、これらの本を、かの地について知るきっかけにしてくれたら、と思います。

『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』写真展開催のお知らせ

『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』の刊行元、雷鳥社による企画で、東京・池袋のジュンク堂書店池袋本店で、写真展を開催させていただくことになりました。写真展の開催期間は、5月13日(水)昼頃から6月22日(月)まで(当初の予定より10日間延長されました)。会場はジュンク堂書店池袋本店2Fの旅行書コーナー付近の壁面です。

今回の写真展では、本に収録した写真の中から、特に選りすぐったものを中心に展示する予定です。未読の方も、すでにお読みいただいた方も、楽しんでいただける展示にできればと思っています。

会期中、ジュンク堂書店池袋本店では、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』に限定特典のミニ写真集『夏の旅 ラダック、東の高地へ』を同梱した形で販売していただきます。『夏の旅』の同梱は、用意した在庫がなくなり次第終了になりますが、それなりに潤沢な数をご用意していますので、よかったらぜひご検討ください。

このようなご時世ですが、お近くにお越しの機会がありましたら、お立ち寄りいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

『冬の旅』&『夏の旅』セット販売実施中の書店リスト(2020.6.5〜)

『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』の購入特典としてご用意した、数量限定のミニ写真集『夏の旅 ラダック、東の高地へ』。この2冊を同梱したセット販売を実施していただいている書店が、ゴールデンウイーク明けから増えました。下記に最新のリストを掲載します(2020年6月5日更新)。実施店舗は今後もさらに増える可能性があります。

・紀伊國屋書店 新宿本店
・ジュンク堂書店 池袋本店
・代官山 蔦屋書店
・六本木 蔦屋書店
・丸善 丸の内店
・書泉グランデ(オンラインでのセット購入可能
・有隣堂 ヨドバシAKIBA店
・ジュンク堂書店 吉祥寺店
・ブックファースト アトレ吉祥寺店
・くまざわ書店 武蔵小金井北口店
・ジュンク堂書店 立川高島屋店
・ブックファースト ルミネ川越店
・丸善 ラゾーナ川崎店
・有隣堂 厚木店
・ポルベニールブックストア(オンラインでのセット購入可能
・MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店
・ジュンク堂書店 盛岡店
・ジュンク堂書店 新潟店
・うさぎや 栃木城内店
・精文館書店 豊橋本店
・丸善 松本店
・旭屋書店 なんばCITY店
・ジュンク堂書店 近鉄あべのハルカス店
・ジュンク堂書店 神戸住吉店
・ジュンク堂書店 三宮駅前店
・丸善 広島店
・丸善 博多店

書店によっては、時短営業や土日祝休業などを実施している場合がありますので、ご訪問の際は、事前に最新の状況をご確認ください。また、それぞれの書店で『夏の旅』の在庫が切れてしまった場合は、その書店でのセット販売は終了となる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

アマゾンなどで『冬の旅』を単体で購入された場合も、ご希望の方には、郵送にて『夏の旅』をプレゼントする企画を実施中です。詳細はこちらのエントリーの後半部分をご参照ください。

これから一人でも多くの方のもとに、『冬の旅』が届くことを願っています。よろしくお願いします。

bayfm78「ザ・フリントストーン」出演のお知らせ

FMラジオ局bayfmで毎週土曜の夕方18時から放送されている番組「ザ・フリントストーン」。僕も以前に二度出演させていただいたことがあるのですが、このたび、三度目の出演をさせていただくことになりました。放送予定日時は、2020年5月2日(土)18時から。内容はもちろん、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』で書いた冬のザンスカールでの旅についてです。

時節柄、今回はスタジオ収録ではなく、同番組でも初という、Web経由でのインタビューとなりました。自分の家でパソコンの画面を見ながら収録に参加するというのは、何とも不思議な感覚でした。ひさしぶりのラジオだったので、あまりうまくしゃべれなかったような気もしていますが(苦笑)、お時間ありましたら、聴いていただけると嬉しいです。

bayfmの放送エリア外の方でも、radikoを使えば聴くことができます。関東以外からでも、プレミアム登録すれば聴けるとのことです(登録初月は無料)。また、リアルタイムで聴き逃した方も、radikoのタイムフリー機能を使えば、1週間以内ならいつでも聴けます。『冬の旅』についてのトーク、この機会にぜひ。