めぐりあわせというもの

ちょっと、というか、かなり残念なお知らせです。今年の夏、ラダックで計画していたトレッキングに行くのを、断念することにしました。

そもそも、今回僕が計画していたのは、ラダックのツォ・カルからツォ･モリリを経てスピティのキッバルへ至る、12日間に及ぶ長いトレッキングでした。「ラダックからスピティまで歩いて行ってみよう」という単純な思いつきが発端だったのですが、途中には遊牧民が暮らすエリアが数多くあるほか、最後のパラン・ラという巨大な峠を越える際には氷河を横切るなど、とても魅力的なコースだったのです。

6月末にラダックに到着して以来、撮影の仕事の合間にこのトレッキングの準備をずっと続けてきたのですが、困ったことに、この地域のトレッキングに同行してくれる馬とホースマンの人がどうしても見つからないのです。以前一緒に旅した旧知のホースマンの人がほかのグループに押さえられてしまっていたり、ルプシュ界隈のラダック人ホースマンで予定が空いてる人もなかなか見つからなかったり。辺鄙な地域というのもあったのですが、いつもならすんなり決まるところが、なかなかうまくいかないのです。

出発日を遅らせたり、日程を8日間に短縮してツォ･モリリスタートにするなどの妥協をくりかえしながら調整を続け、ようやくマナリ人の馬の元締のような人が馬を用意してくれるというので打ち合わせをしてみたのですが、合意していたはずの出発日をさらに遅らせろと言ったり、8日間のトレッキングなのに「馬はマナリから来てるからその分の代金も払え」と、22日分（！）という法外な料金を要求されたりしたため（マナリからの行程は別のグループからの依頼で来ているので、本来払う必要はないのです）、合意には至らず。これ以上引き延ばすとスピティ内での取材にも影響するため、ここが潮時と、トレッキングをあきらめることにしました。

日本にいる頃から東京近郊の山歩きをして体調を整えたり、トレッキング用の装備を吟味して持ってきたりなど、それなりに時間と手間をかけて準備してきていたので、残念といえば確かに残念です。ただ、僕の中では、「今回はこういうめぐりあわせだったのだから、しかたない」と静かに納得している部分もあります。逆に、これ以上妥協をくりかえして、自分の望まない形で無理してトレッキングに行くと、思わぬアクシデントが起こりそうな、悪い予感もしていたので。

僕がこれまでラダックでくりかえしてきたトレッキングでは、寡黙だけど頑強で（たまに頼りない人もいたけど、笑）、親切で信頼のおけるホースマンと常に一緒でした。そういう人とともに、できるだけ彼らの流儀に近い形で山の中を旅するのが、僕にとってのラダックでのトレッキングだったのだと思います。しかし今回の流れでは、たとえ妥協点が見つかったとしても、そういうトレッキングはできそうにありませんでした。

まあ、僕はこれまで、本当にありあまるほどたくさんのものをラダックの人たちからもらってきていますから、このくらいのトラブルで不満を言うのは贅沢ですよね（笑）。

数日後には、バスかシェアタクシーで、スピティ方面に向かいます。