「百聞」を作る仕事

今年の夏、7月から8月にかけての2カ月間、ラダックに行くことになりました。

割とアバウトな目標設定だった去年の滞在と違って、今年の滞在は、最初から最後まで、予定でびっちり。これから取り組むラダックについての本のための追加取材と撮影。そう、ほとんどが仕事ですね(苦笑)。

これから作ろうとしている本は、「ラダックの風息」とはかなり趣向の違う、実用性を重視した本(といったら、だいたいわかりますよね)になる予定です。まだ正式に出版が決まったわけではないのですが、出版社との打ち合わせはすでにある程度進んでいて、このまま順調に行けば、来年の春くらいには‥‥という感じです。

こういう本作りのプロジェクトに取り組んでいて、最近特に強く思うのは、自分が作る本では、ラダックのありのままの姿を、できるだけ素直な形で伝えたい、ということです。ラダックは、別に絵に描いたような理想郷というわけではないし、逆に大量消費社会に潰されて終わった土地でもありません。いい部分もあれば、悪い部分もあり、その世界の中で人生を送っている人たちがいます。自分の理屈に都合のいいバイアスをかけた情報を選んで見せるのではなく、ありのままのラダックの姿を見てもらいたい。そこから何を感じるか、何を受け取るかは、読者の方々に委ねるべきなのだろう、と。

「百聞は一見に如かず」という諺があるように、本当は、実際にラダックに足を運んでもらって、自身の目で見て、肌で感じてもらうのが一番いいということはわかっています。ただ、昔より格段に便利になったとはいえ、平均標高3500メートルの地は日本人にとっては苛酷ですし、時間が限られた短期の旅行では、ラダックの魅力を十分に感じ取るのはなかなか難しいでしょう。ラダックに興味や憧れを抱いていても、時間、体力、予算など、さまざまな理由で、訪れることが叶わないでいる方も多いと思います。それに、今の日本には、ラダックについての情報は「百聞」どころか、ほんの「数聞」くらいしか存在しません。そんな状態で、ラダックのことをもっと知ってほしいというのは、やはりちょっと無理があるかなあ、と。

ありのままのラダックを理解してもらうための「百聞」を、本という形でコツコツと積み重ねていく。たぶん、それが僕がこれから取り組もうとしていることなのだと思います。

‥‥あ、僕が作ろうとしているラダックの本は、別に、一冊だけとは限らないですからね(笑)。

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