前回の更新から、ずいぶん間隔が空いてしまいました。ここ最近は、ラダック本の企画プレゼンのために出版社を回るかたわら、友人たちに招かれて連日連夜飲み続けたり、安曇野で岡山の実家の人間たちと一年ぶりに会ったりしていました。気のおけない友人たちとのひとときは底抜けに楽しかったし、安曇野では、なついてくれている姪っ子や生まれたばかりの甥っ子に会うことができたし、いい気晴らしになりました。
でも、彼らと会ってケラケラ笑っている時も、僕の頭の中にはずっと、チベットのことが、のどに刺さった魚の小骨のようにひっかかっていました。
デプン・ゴンパを訪ねた時、ニコニコ笑いながら何杯も何杯もバター茶をごちそうしてくれた、あのお坊さんたちは無事だろうか。ナムツォの湖畔ではにかみながら写真を撮らせてくれたあの女の子は、親を連行されて一人で泣いてはいないだろうか。
たぶん、チベットのことなんて、忘れてしまった方がラクなのだと思います。家族や友達と過ごす楽しい時間のこととか、今がんばっている仕事のこととか、そういったことだけを心に思い描いていた方が、きっと幸せな気分でいられる。今、ネット上のブログや掲示板で中国に対して怒り狂ってる人たちも、あと何カ月かすれば次第に減っていくでしょう。コカコーラやマクドナルドはオリンピックのキャンペーンCMをばんばん流しはじめ、テレビや新聞はまるで何事もなかったように「ガンバレ! ニッポン!」と言いはじめるでしょう。
そうしてみんな、少しずつ、チベットのことを忘れていく。
でも、僕はやっぱり、忘れることができません。
3月27日、中国当局の企画で海外メディアの記者団がラサのジョカンを訪問した際、数十名の僧侶が突如カメラの前に現れ、涙を流しながら訴えていた映像が世界に配信されました。日本のマスメディアは無機質なコメントを添えて報道しただけでしたが、彼らの行動がどんなに大変なことだったか、いったいどれだけの人が理解しているでしょうか?
あの僧侶たちは、間違いなく逮捕され、そしておそらく、処刑されます。仮に処刑を免れても、何年も投獄され、苛酷な拷問とダライ・ラマを否定する「愛国教育」を課せられ、身も心もぼろぼろになってしまうでしょう(参考)。彼らは、それを百も承知でカメラの前に現れた。厳しい戒律の下で修行を積み、めったなことでは涙を流さない僧侶たちが泣き叫んでいるのを見て、僕は胸が締めつけられるような思いでした。
この僧侶たちだけではありません。これまでデモに参加して殺されたり、逮捕されたりしたチベットの人々はみな、そうなることを覚悟していたのだと思います。そこまでして伝えたいことが、彼らにはあった。チベット人として、人間として、自由に生きたい、ただそれだけなのだ、と。
だから、僕は忘れない。
チベットの人々が感じている痛みに比べれば、その何万分の一でしかないけれど、僕も今感じている痛みを抱えたまま生きていこう。彼らの痛みが和らぐまで、決して忘れないようにしよう。そして、自分にできることを精一杯やっていこう。今はそう思っています。
日本のマスメディアのチベットに関する報道は次第に少なくなっていますが、草の根レベルでのチベット支援活動は、むしろ拡大しています。
以前にも紹介したフリーライターの長田幸康さんのブログ「チベット式」では、いくつかのチベット支援団体が主導する、日本政府をはじめとする関係各所への署名送付活動がわかりやすくまとめて紹介されています。随時更新されていくようなので要チェックです。
チベットをサポートする署名・FAX・手紙
http://tibet.cocolog-nifty.com/blog_tibet/2008/03/2008fax_d5f4.html
より具体的なアクションについては、チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン(TSNJ)やそのサポーターが主催する大小さまざまなイベントが、TSNJのブログで随時告知されています。東京だけでなく地方開催のイベントもたくさんあるので、ブログに掲載されているイベントカレンダーで確認すると便利でしょう。
TSNJ関連イベントカレンダー
http://tsnj2001.blogspot.com/2010/01/tsnj.html
これらのアクションの中でも規模の大きな企画は、次のようなものがあります。詳細についてはTSNJのブログなどで確認してください。
・名古屋フリーチベットデモ
日時:2008年4月19日(土)13時〜
場所:愛知県名古屋市中区矢場町 若宮広場(ほぼ確定・調整中)
「チベットの平和を願い、中国政府によるチベット弾圧に対する抗議だけを目的としたシンプルなデモです。反中・中国バッシングデモではありません」とのこと。
・北京五輪聖火リレーに合わせたアピール
日時:2008年4月26日(土)集合時間・場所調整中
場所:JR長野駅前ほか(許可申請中)
参加:要問い合わせ(警察との調整が長引いているため)
主催:SFT日本 http://www.sftj.org/
「聖火リレーの日本通過に合わせ、非暴力、平和的、合法的に声を上げます」とのこと。
・大阪フリーチベットピースウォーク
日時:2008年4月27日(日)
場所:調整中
「大阪で今度こそピーススタイルで歩く&亡くなったチベット人の冥福と世界平和を祈るキャンドルナイトをしよう」とのこと。
また、5月6日(火)から10日(土)にかけては、胡錦濤国家主席が来日します。TSNJではまだ具体的なアクションを企画していないようですが、2ちゃんねるでは、彼をただただ無言でチベット国旗で出迎えようというオフが企画されているようです。5月8日(木)には早大を訪れるそうなので、盛り上がる(?)とすればそのあたりでしょうか。
胡錦濤来日時に日本中をチベット旗だらけにするOFF
http://www8.atwiki.jp/tibet_wiki/
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僕は、チベットのことを忘れません。だから、あなたも忘れないでください。
はじめまして!いつも拝見させて頂いています。今回のチベット問題ではたくさんの情報ありがとうございます。
そして,今の此の状況について,話が流れない友人達に,私を含めこれでよいのかと疑問を持ちはじめています!
昨夜フランスのニュースでマラソンに参加しているランナーが「走るのは好きだが人権を足げにするのはお断り」のステッカーを貼って走っている〜
考えさせられますね。
>ホシアザミさん
はじめまして。コメントありがとうございます。パリマラソンでのステッカーのアイデアは秀逸でしたね! パリの聖火リレーはこれから始まりますが、どうなることやら‥‥。
私も全く同じ気持ちでいます。
仕事に行き、ご飯を食べ、週末は桜を見て友人とはしゃぎながらも
まさに「のどに刺さった魚の小骨のように」チベットが頭から
離れる事がありません。
社会生活を送りながらも、ネットのニュースを見ては涙を流し、
ずっとずっと心のどこかが痛い。
本当にチベットのことを忘れてしまえば楽に、心安らかにいられます。
でもそれは自分の良心と引き換えにすることに等しく、
痛みの代わりに後ろめたさをずっと抱えて行くことになります。
それだけは、やってはいけないと思っています。
私も痛みを抱えながらチベットを忘れないでいます。
ご覧になられたかもしれませんが、先日関西テレビの「ぶったま」
という番組で、書寫山圓教寺の大樹執事長が生放送で訴えをされました。
この方も「忘れない」決心をされたのだと思います。
Youtube リンク張らせて頂きます。
http://jp.youtube.com/watch?v=cSTnWfigTPo
http://jp.youtube.com/watch?v=sdsz08iwr7o
>chandraさん
コメントありがとうございます。自分と同じような思いをされている方がいるとわかって、とても心強いです。
「ぶったま」の動画は僕も見ました。ものすごい英断だったと思います。惜しむらくは、こういう骨のある報道を、関東のキー各局がまったくといっていいほど行っていないということです。そんなに中国支局が当局のお取り潰しにあうのが怖いんでしょうか?
こんにちは。くっけんと申します。
yama_takaさんには2度ほどお会いしています。
先々週より出張で中国各地を転々としていますが、
地域(ホテル)によっては、yama_takaさんのブログが
ブロックされる状態が続いています。
今は寧波という街にいるのですが、
Mixiさえもブロックされる時があり、困ったものです。
仕事で来ているのですが、出来うる限りチベットの話題を出しています。
触れたくない人、全く知らない人、興味を示す人、それぞれです。
ある人は、
「中国では13人の死者が出たって報道されているけど、日本ではどうなの?」
と聞いてきました。
「世界では130人以上の僧侶が殺されたと報道されてるよ」と言ったら
「おかしいよね。。。」と納得できない様子でした。
こちらでも、新聞報道は日に日に少なくなっています。
昨日、仏教の聖地「普陀山」に行き、仏教について取引先と話をしていたら
チベットに話が及び、その会社の社長は、
チベットは独立したほうがいいという持論を持っていました。
その後「お前もそう思うだろ?」と従業員に訊ねていました。
日本人に向かってこういう発言をする人は珍しいのかも
しれませんが、一人一人に自分の国の一部となっている
チベットについて考えてもらいたいですね。
昨日、「普陀山」の人民解放軍基地の前の茶畑には、
タルチョがはためいていました。
>くっけんさん
こんにちは。はじめまして‥‥ではないんですよね。どこでお会いした方なのか‥‥(気になる)。コメントありがとうございます。
中国からの貴重な情報、ありがとうございます。そうですか、やはりブロックされてますか(笑)。これだけ「危険」なキーワードが入っていたら当たり前ですね。
中国でも、皆が皆、当局=新華社の情報をそのまま鵜呑みにしているわけではないんですよね。僕自身、学生時代に初めての海外旅行で訪れた国は中国(主に敦煌や東トルキスタンなど)でしたし、その時にお世話になった人も大勢います。だから、中国の人々に対して怒りや憎しみは向けたくありません。ただ、間違っていることは間違っている、ときっぱりと言ってあげたいのです。
そういう声を代弁するのが、日本国内閣総理大臣の役割だろうと思うのですが‥‥福田さんには、ちょっと無理みたいですね‥‥。
初めまして。
周囲に、あまりにもチベット問題を真剣に捉えている人が少ないのが悲しくて、ネット上を漂っていてこちらを見つけました。
私はチベットには行った事がありませんし、チベット問題に詳しい訳でもありませんが、いち日本人として今のチベットの状況を大変残念に思っています。
何が残念って、先にも挙げましたが周りの関心があまりにも薄い事です。
暴動前から中国の横暴政策には憤っていましたので、私的には寧ろ、今回の事で(最初の暴動で)世界中のメディアの目が向いた事が実は嬉しかったのですが、関心無い人々にとってはあくまでも宗教紛争のひとつであるようにしか捉えられなかったみたいで…。「直ぐ治まるでしょ」「メディアが飽きたら終わり」といった見方が強く、日本人の関心の低さに愕然としました。
メディアではここ数日派手に取り上げられていますが、本当に26日に日本に聖火が来るのか、それを黙って見送っていいのかという疑問を、本当に誰も抱いていないのかと言いたくなるくらい緊張感がありません。
テレビで放映されているようなデモには、私は反対です。ダライ・ラマ猊下がそれを望んでるとも思えません。ただ、非暴力のデモは寧ろ日本人こそが率先してやるべきではないのかとも思っています。
生憎私自身は名古屋、大阪、長野いずれも仕事の都合で参加できないのですが、日本人の中にもちゃんと人権問題を、チベット問題を真剣に考え行動している人がいるんだと知って、泣きたいくらい嬉しかったです。
応援しか出来ない自分が非常に不甲斐ないですが、どうぞ頑張って下さい。
>kanoeさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
そうなんですよね。日本では、チベット問題への関心があまりにも低い。それにはマスメディアの腰の引けた報道がかなり影響していると思います。前のコメントにも書きましたが、あんまり派手にやっちゃうと、中国支局がお取り潰しになったり、広告主から圧力がかかったり、まあいろいろ大変なんでしょう。そんな中、産経新聞中国総局記者の福島香織さんは、「北京趣聞博客」というブログで、こっちが心配になるくらい積極的に情報発信されています。もし、お知り合いの方にチベットについて知ってもらいたい時は、このブログを紹介してあげるといいですよ。
「テレビで放映されているようなデモ」というのは、聖火を奪い取ったり、消化器を噴射したりするアレですね(苦笑)。あれには僕も反対です。ただ、日本ではああいう場面ばかり報道されていますが、ロンドンでもパリでも、カメラに収まり切らないほどのものすごい数の人たちが、チベット国旗やプラカードを手に、迫力のある、でも整然とした「非暴力」のデモをしていたことも事実です。そしてそういうスマートなデモは、日本人が一番得意なのではないかとも僕は思っています(笑)。
チベットのことを忘れていない人は、kanoeさんのほかにもたくさんいますよ。そういう人を、一人でも多く増やしていきましょう。
今、中国で仕事をしています。去年の5月にチベットへ行ってきました。そんなに深くチベットの人たちと関わったわけではありませんが、それでも2週間ほど滞在している中で、彼らの信仰心の厚さや、やさしさに触れることができたと思っています。あんなに素晴らしい民族の習慣・文化を踏みにじる権利を持っている者はいないはずです。
自分は中国にいるので、日本での活動には参加できませんが(中国国内では無謀なことなので)心から応援します。それにここで言われているように、暴力などのない平和だけど力強いことができればいいなと思っています。暴力的な行動に出てしまえば、相手と一緒になってしまい、何の解決にもならないと思うので。
一人でも多くの心ある日本人がチベット問題に関心をよせ、一言でも声を発してくれることを願います。
>makotoさん
こんにちは。また中国本土から書き込みしてくれた方が現れて、ちょっとびっくりです。このブログ、アクセスできる時もあるのかな?(笑)
暴力的な行動はいけないというご意見、まさにその通りだと思います。チベットが欧米でこれほどまでに支援されているのは、チベット仏教が説く非暴力の教えがあるからこそですから。無駄な殺生はしない、蚊に刺されても決して殺さないほど心優しいチベットの人々のことを、もっと多くの日本人に知ってほしいのですが‥‥。
山高さん、
しばらくです!
チベットに関しては日本でも何かおこればいいですね。ヨロッパ人さすがすごいですね。。。そ言う自身をもって声を出すさむらいがほしいですね。
取り急ぎ
山高さん、
しばらくです!
チベットに関しては日本でも何かおこればいいですね。ヨロッパ人さすがすごいですね。。。そ言う自身をもって声を出すさむらいがほしいですね。
取り急ぎ
>Skarmaさん
おひさしぶりです。ロンドンとパリはすごかったですね。あれで一気に認知度が上がったので、長野にもたくさん人が集まると思いますよ。
今は、日本にいてはるんですよね。連日、日本のメディアにチベット国旗があふれ、これがメディアに取り上げられるのは、チベット人の犠牲があったからか??と複雑な思いにとりつかれています。ラダックの人々と話していると、チベット難民の存在に対しては、好意的なものばかりとは言えないものを感じますが、今のところ、ともかくチベット本土の知り合いたちが無事でいることをいのるばかりです。一部の中国人のあいだでは、チベット問題に対する外国メディアのあり方について非難が出ているようですが、わたしにとって今回のチベット「騒動」というのは、天安門事件を思い起こさせます。ギャミツォ、あなたたちの問題でもあるんですよ、と声を大にして言いたいです。
>にしもりさん
こんにちは。そうです、今は日本です。再来週にはインドに飛びますが、今回はラダックに入る前にダラムサラに寄る予定です。これはチベットで騒乱が起こる前から決めていたことなのですが、これも何かの縁だと思って、現地の様子をこのブログでも紹介する予定です。
天安門事件の起こった半年前、チベットでは胡錦濤による武力弾圧が行われました。今回も同じようなことが起こらないとも限りませんね‥‥。