Days in Ladakh

ラダックの結婚式

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2015年の夏、スピティでのテレビ取材のコーディネートの仕事を終え、マナリから車でレーに到着したのは、7月中旬のことでした。

いつものようにノルブリンカ・ゲストハウスに到着し、台所でチャイをすすっていると、
「タカ、今度、結婚式があるよ。パドマ(次男ジミの奥さん)の妹さんの」とデチェン。
「ふーん、そうなんだ。おめでとう。行けたら行こうかな」
「何言ってるんだよ。あんたは正式に招待されてるんだよ。行かなきゃダメなんだよ」
「‥‥えぇ?!」
「カメラ持ってきてくれよな。みんなに話は通しとくから、写真よろしく」とジミ。

一応僕も部外者というか、この宿の宿泊客なので、「よかったら見にくる?」くらいの話なのかと思いきや、完全に親族のラインナップに加えられ、撮影スタッフにまでされてしまっていたのでした(苦笑)。

というわけで、この夏、盛大に催されたラダックの伝統的な結婚式の様子を、写真を交えてご紹介しようと思います。

ラダックの結婚式では、「移動」が大きな意味を持ちます。新郎の家から使者たちが新婦の家に移動し、新婦とともに新郎の家に移動するという行為自体が大事なのだそうです。今回は新郎が新婦の家に婿入りする結婚だったので、新婦の家から使者たちが新郎を迎えに行くという、通常とは逆の形になりました。夜の8時頃、烏帽子のようなものを被った男性が「シャシャシャシャーッ!」という威勢のいい声を上げ、チョグラムサルにある新婦の実家から、いざ出発です。

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レー郊外のハウジングコロニーにある新郎の家に到着してみると、うわあ、と思わず声が出てしまうほど、すごい数の人。新郎側が招待した知り合いや近所の人たちが、外の広場に設けられた宴会場に集まっていました。親族などもっと近しい関係者の多くは、家の中にいます。

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次男のジミがバターを、三男のツェリンがチャン(どぶろく)の入ったポットを持ち、宴会場に集まったお客さんたちにふるまい酒を注いで回ります。バターはチャンを注ぐコップのふちに、ちょこっとつけるのです。他の親族の男性たちはカタ(絹のスカーフ)をお客さんたちの首にかけて回ります。何しろ人数が人数なので、この挨拶回りが終わるまで何時間もかかります。宴会場の外では大がかりな炊き出しが行われていて、この後、お客さんたち全員にご馳走がふるまわれました。

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ご馳走を食べ終えた後は、スピーカーから大音量で流れる音楽に合わせて、若い人たちを中心に踊りの輪ができます。この時は新郎側の好みなのか、ボリウッド映画のサントラで使われていたノリノリの曲がたくさんかけられていて、みんな大盛り上がりでした。ちなみにこの時点で、時刻は深夜2時くらいです。

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午前3時を過ぎた頃、一行は新郎とともについに出発。婿入りする新婦の家へと向かいます。途中、路上の何カ所かで小さなかがり火が焚かれていて、そのたびに短い祈りが捧げられます。

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ついにチョグラムサルに到着した一行。深夜というか明け方近くにもかかわらず、大勢の人たちが路上に並んで、新郎が乗る車を出迎えます。

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新郎のデルダン・ナムギャルさん。緊張した、神妙な面持ちです。首の周りには、お祝いのカタや紙幣をつないで輪にしたものが、何重にもかけられています。

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新郎と並んで僧侶の前に座り、結婚の儀式を受ける、新婦のチュスニット・ラドゥルさん。彼女が被っているのは、ラダックの女性が使う伝統的なヘッドギア、ペラク。トルコ石をびっしりちりばめたこの装身具は、母から娘へと伝えられる家宝なのだそうです。

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結婚の儀式が終わると、周囲で二人を見つめていた大勢の人々から、喜びと安堵の歓声が湧き起こります。その時、チュスニットさんのまつげに、ひとしずくの涙がきらりと光るのが見えました。おめでとう。

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「いい結婚式だったね!」とみんなで笑い合いながら、ノルブリンカGHに帰り着いたのは、朝の六時半。夜を徹して行われるラダックの結婚式は、フルに参加すると本当にハードです。自分の部屋でぶっ倒れるように寝た後、昼過ぎにようやく起き出した僕の顔を見て、パドマが、
「タカ、今夜はチョグラムサルの家でパーティーがあるのよ。必ず来てよね!」
「今夜もあるの?! そ、そうなんだ‥‥」
「当然よ。パーティーは今夜が本番なんだから! もっちろん来るわよね?」

ラダックの結婚式、本当にハードです‥‥。

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新婦側の家の外の広場で夕方から催されたパーティーは、前夜以上に大勢の人が集まっていました。この日は太鼓と笛で奏でられるラダックの伝統的な音楽に合わせて、村ごとのグループだったり、お医者さんである新婦の同僚のみなさんだったり、いろんな集まりごとに入れ替わり立ち替わり、ラダックならではのダンスが繰り広げられました。

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本当にこてんぱんというか、ある意味、ヘタな取材より疲れた二日間でしたが、それでも、幸せにあふれたたくさんの笑顔を見ることができたのは、僕にとっても本当にうれしいひとときでした。そうした幸せのあふれる場に、自分のような人間が居させてもらっていることにも感謝しなければ、と思いました。

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