二年前の今頃、僕はチャダルを辿って、真冬のザンスカールを旅していました。
地形が影響しているのかもしれませんが、ラダックと比べるとザンスカールはさらに雪が深く、歩いても、歩いても、見渡すかぎりの銀世界。くるぶしの上、時には膝近くまで埋もれる雪の中を歩き続けるのは、恐ろしく疲れます。しかも標高は3000メートル以上。足を一歩踏み出すたびに、ぎゅっと歯を食いしばらなければならないほどでした。
だから、折り返し地点のカルシャで丸一日休憩することができたのは、本当にありがたかった‥‥。正直、身体が文字通りバラバラになりそうなほど疲れきっていたからです。幸運にも、その日は雲一つない晴天で、僕はカルシャの村の人たちの暮らしぶりを、たくさん写真に撮らせてもらうことができました。
屋根の雪かきに精を出す人、氷のように冷たい湧き水で洗濯をする人、もこもこの上着を着て元気に遊ぶ子供たち。こんな雪深い山奥で暮らすというのは大変なことなのだろうなと最初は思っていたのですが、会う人会う人の表情を見ていると、当たり前というか、慣れっこというか、本当に何とも思っていない感じ。まあ、考えてみれば、ザンスカールの人々を、僕みたいに東京暮らしに慣れっこになっている軟弱者と比べるのもおこがましい気がします(笑)。
村の中で、雪が積もってところどころ凍りついている坂道を歩いていた時。へっぴり腰でおっかなびっくり足を運ぶ僕のそばを、一人の少女が両手を広げて勢いよく足を滑らせながら、ぴゅーっ!と風のように坂道を下っていきました。
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