この写真を撮ったのは、2007年5月13日。足かけ一年半に及ぶラダックでの長期取材のため、レーの街に到着したまさにその日のことでした。
それ以前に何度かラダックを訪れていた時も、僕は結構たくさん写真を撮っていたのですが、そのほとんどは、旅行の時にいつも持ち歩いていたGR DIGITALというコンパクトカメラで撮ったもの。取材のために持ち込んだ一眼レフでラダックの人々を撮った経験はなかったので、「こんなでかいレンズを向けたら、みんな萎縮するんじゃないか‥‥」と、ちょっと不安に思っていましたし、それを自分がクリアできるという自信もありませんでした。
ノルブリンカ・ゲストハウスに部屋を取り、ひと休みしてから、僕はカメラバッグを肩に出かけました。メインバザールに出てぶらぶらと通りを歩いていた時、ふと目が合った一人のおばあさん。道端でネックレスやブレスレットなどのチベタン・アクセサリーを売っていた、チベット人のおばあさんだったのですが、僕は何となく、「最初に誰か撮るなら、このおばあさんにしよう」と思ったのです。
とはいえ、その頃はまだナクシャ(写真)という言葉も知らなかったし、英語も通じそうになかったので、僕はカメラを見せながら必死で笑顔を作って、どうにかこうにか、写真を撮らせてもらったのでした。
でも、この一枚を撮らせてもらったことで、自分の中で、ぽん、と見えない枷のようなものが外れたような気がしました。ちゃんと向き合って一生懸命に気持を伝えれば、こんな自然なまなざしの写真を撮らせてもらえる。それからの僕は、調子に乗ってバンバンというわけにはいきませんでしたが、言葉を覚えたりしながら、少しずつ、ラダックの人々と真正面から向き合えるようになっていったと思います。
そういう意味でも、この写真は、僕にとって思い出深い一枚です。
このおばあさん、私が出掛けた今年の10月から11月にも、メインバザール付近でアクセサリーを売っていましたよ。
絶対とは言い切れませんが、たぶん、この方だと思います。
大きなモスクの斜め前辺りの道端でした。
道端というか、建物と建物の間のようなところで、道端よりは一段上がったところに布を敷いて、アクセサリーを並べていました。
宿で仲良くなったカナダ人の女の人が、何度か通った末に、とても美しい大振りのネックレスを買ったんです。
価格交渉を続けた結果、1,100ルピーまで下がったのを、彼女が「1,000!」ともう一声かけたところ、「うーん、1,200にまけた!」とまた上がっちゃたりして、面白いおばあさんでした。
結構値の張るネックレスだったからか、その後、一週間以上店じまいしていました。
>bpさん
コメントありがとうございます。たぶんそのおばあさんだと思います。いつもメインバザールの同じ場所に陣取っているので。この時撮った写真は、プリントアウトしておばあさんにあげました。