上の写真は、2010年の夏、ヌブラのサムタンリン・ゴンパにて。
2015年の初夏、奇しくもほぼ同じ時期に、チベットについての2つのドキュメンタリー映画が日本で公開されます。池谷薫監督の「ルンタ」と、光石富士朗監督の「ダライ・ラマ14世」です。「ルンタ」はチベット本土で後を絶たない中国当局に対する焼身抗議を主題に扱い、「ダライ・ラマ14世」はダライ・ラマ法王への密着取材を核に構成された作品です。
どちらもドキュメンタリー作品ですから、観る人それぞれによっていろんな感想が生まれるのは当然だと思います。同じ作品の中でさえ、強く共感できる部分もあれば、その伝え方はちょっと違うんじゃないかと感じる部分もあるかもしれません。でも、まず何よりも考えなければならないのは、これらの映画の中で紹介されているチベットにまつわる過去からの出来事や今の状況について、よく知らない、もしくはまったく知らないという人が、日本にはまだあまりにも多いということです。
たとえば、これまで百数十人ものチベット人が、法王の姿を思い浮かべながら、あるいはその名を叫びながら、自ら身体に火を放って命を散らしていくのを、誰よりも深く悲しんでいるのは、ダライ・ラマ法王ご自身です。仮に自分がその立ち位置に置かれたとしたら、とてもじゃないですが、精神的に耐えられないと思います。ダライ・ラマ法王やチベットについてありのままの事実を知り、そこに思いを巡らせることから始めなければ、チベットも、そこから連なる世界も、何も変わりません。
今回の2つの映画は、チベットについてあまりよく知らない人にとっても、そこに思いを重ねていくための最初のきっかけとして、1つの足がかりにはなるはずです。僕たちの無関心こそが、チベットの人々に対するもっとも冷たい仕打ちだと思いますから。
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