自費出版とクラウドファンディング

クラウドファンディングという手法は、日本に上陸してからまだそんなに年月は経っていないが、それなりに世間で認知されて浸透してきているように思う。何かのプロジェクトを実現させたい時、単なる資金集めの方法としてだけでなく、クラウドファンディングを行うことで一種の情報拡散効果も狙えるという点で、プロジェクトの内容や企画者のネームバリューによっては、かなり効果的な場合もある。

じゃあ、たとえば僕が、何かの本を自費出版(この場合の自費出版とは、出版社に費用を払って出版してもらうのではなく、デザインと印刷・製本以外は制作から販売の手配まで自分で行うやり方のこと)しようとした場合、クラウドファンディングを利用すべきかと考えると……あまりうまくマッチングしないように思う。

クラウドファンディングは基本的に、集まった金額が目標額に達しなければ成立しない。僕の場合は目標額が集まるかどうかで本を作るか作らないかを決めはしないので、そこがまず噛み合わない。大口のパトロンが現れてくれるならもちろんそれはありがたいけれど、それよりも一人ひとりに一冊ずつ、きちんと本を届けることを最優先に考えたい。

デザインと印刷・製本以外をすべて自分でやる自費出版の場合、僕が懸案事項と考えるのはただ一つ。「本を何冊作ればいいか」という点だ。オフセット印刷で本を作る場合、印刷部数が多ければ多いほど、一冊当たりの原価は安くなる。読者が買いやすい価格にするなら、たくさん印刷しなければならない。でも、予定した販路で捌ききれないほど作りすぎてしまうと、在庫の山を抱えてどうしようもない状況に陥ってしまう。多すぎず、少なすぎず。部数の見極めはとても難しい。出版社から本を出す時も常にそうだ。

だから、もし僕が将来、自分で本を作って売るプロジェクトを手がけるとすれば、制作費はクラウドファンディングに頼らずに何とか調達し、印刷に入る前に必要十分な部数の見極めができるように、Webサイト上などで事前予約を受け付ける形にするだろう。もちろん、予約購入特典で何かサービスかおまけをつけて。そういうやり方の方が、自分の本づくりには合っているのかも。と、そんなことをつらつらと考えてみた。

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