Tag: Work

「アラスカの無人島で過ごした四日間」

以前、「バター茶の味について思い巡らすこと」というエッセイを執筆した金子書房のnoteに、新しいエッセイを寄稿しました。「アラスカの無人島で過ごした四日間」という文章です。同社noteで組まれている「孤独の理解」という特集のテーマに沿う形で執筆しました。

よかったら、読んでみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

一冊、一冊

午後、西荻の喫茶店それいゆで、初対面の編集者の方との打ち合わせに臨む。

その出版社との仕事は今回が初めてで、作ることになりそうな本のジャンルも、今までに経験したことのない分野だ。2時間近く、あれこれ打ち合わせをしているうちに、自分の内側のテンションが、じりじり上がってくるのを感じる。未知の領域への挑戦に、少しワクワクしていたのかもしれない。

相手の編集者の方も、びっくりするほど熱心で、著者の意志を尊重するのと同じくらい、自分たちの積み上げてきた媒体の価値に自負を持っているのを感じた。今度は、良いチームワークを実現できそうな気がする。それも、少しワクワクしていた理由だったのかもしれない。

この企画が世に出るのは、どんなに早くても再来年以降になるのだが、文字通り、1ページ1ページにじっくりこだわって取り組めそうなので、楽しみになってきた。来年の後半くらいのリリースを目標にしている別の出版社との本の企画もあるし、いろいろがんばらねば。

良い本を作ろう。一冊、一冊、自分の力が続くかぎり。

チームワークについて

次に出す新刊の制作も、いよいよ佳境。来週明けに再校、六月中旬に色校、七月頭に見本誌をチェックし終えたら、無事に完成ということになる。最後の最後まで、まったく気の抜けない作業が続く。

一般的な本の場合、著者は原稿を書き終えたら、その後の作業は編集者にまるっと託して、自身は著者校正や、折々のちょっとした確認、デザイン案などで意見を求められた時に答える程度の状態に落ち着くのが普通だと思う。ただ、去年出した本と今回の本の場合、著者である僕は、原稿を書き終えてからも関わらざるをえない作業が、やたらと多い。結果的に、編集実務のほぼ九割くらいを請け負う状態になってしまっている(ちなみにその分もらっているわけではない)。

台割の策定。写真のセレクト。帯文のコピーライティング。各人からの校正のとりまとめ。デザインの修正提案。特典グッズの提案と準備。進行スケジュールの提案と不備の指摘。何もそこまでしなくても、というところまで関わってしまっている。自分の本だから何一つ適当に済ませたくないし、任すに任せられない厄介な事情もあるのだが、正直、めっちゃ疲れる(苦笑)。

これまで、いろいろな出版社と本づくりの仕事をしてきた中で、各々の担当分野で誠実に協力してくれる方々と非常に良いチームワークを実現できたこともあれば、残念ながらあまり良いチームワークにならなかったこともある。本づくりという仕事に対する姿勢や思い入れの違いとか、理由はいくつかある。僕はただ、読者の方々に喜んでもらえるような本を、一冊々々、誠実に届けていくために、できる努力を全力で尽くしていきたいだけなのだが、世の中には、それが優先事項にならない人もたまにいる。その場合は、もう、折り合えない。

いつもの本づくりでは、書いている時も編集している時も楽しくて、いつまでも校了しなければいいのに、とまで感じる時もある。でも、今作っている本は、できるだけ速やかに、事故なく無事に完成させてしまいたい、と思う。良い本にしたいとは思っているし、自分なりにやり遂げる自信もあるが、正直、あまり楽しくはないし、とにかく疲れる(苦笑)。チームワークの大切さを、痛感している。

はあ。やれやれである。

———

李娟『冬牧場 カザフ族遊牧民と旅をして』読了。中国・アルタイの辺境で遊牧生活を営むカザフ族の一家とともに、真冬の放牧地で過ごした数カ月間の記録。軽やかな、でも深みのある筆致で、遊牧生活の素朴さと厳しさ、温もりと孤独が、丹念に描かれている。チベットやモンゴルと同じく、アルタイのカザフ族の遊牧生活も、中国政府が推し進める遊牧民の定住化政策によって、刻々と失われつつある。すっかり消え失せてしまうかもしれない冬牧場での素朴な生活を想う李娟さんの気持は、僕にも痛いほどわかる気がする。

ひさびさの一人暮らし

今週の水曜から土曜の夜まで、相方は法事のため、関西に帰省中。旅に出る以外ではひさしぶりの、一人暮らしのような時間を過ごしている。

とはいえ、連休中なのに仕事は山のように積み上がっているので、毎日、黙々と机に向かっている。先週の平日に取材した大学案件の取材原稿はあらかた片付いたが、別のところからエッセイの原稿を依頼されたので、ここ三日間はそれをずっと書いていた(予想以上に手間取った……)。ついさっき、それもどうにか形にできたので、ようやく一息ついたところだ。まあ、新しい本のゲラチェックはまだこれからだし、大学案件の新しい取材も来週すでに何件か入ってるしで、まったく気は抜けないのだが。

なので、一人暮らしの間は、自炊に時間をあまりかけないことにした。午前中に朝昼兼用でインスタントラーメンか食パンを食べ、コーヒーをいれて、ごりごり仕事。夕方は西荻界隈のカレー屋さんのどこかに行って、さっといただいて、家に帰って、またごりごり仕事。そんな風にして、いささか無味乾燥な日々が過ぎていっている。

でも、とりあえず明日は、息抜きの日にしておこうかな。来週も再来週も、相当忙しくなりそうなので。

春を飛び越えて

桜が咲いたと思ったら、ほんの一週間ですっかり散ってしまって、今は若葉が青々と繁っている。今日は暑かった。27度くらいまで上がったらしい。春を飛び越えて初夏になってしまった感じだ。

毎年この時期は、大学案件の取材の仕事が立て込むので、かなりせわしない。あと、なんでかこの時期に自分で書いた本の編集作業が重なることが多く、去年に引き続き、今年ももろにかぶっている。来週明けには初校が出てくる予定なのだが、よりによって来週は、平日の四日間だけで七件も取材が入っているのだ。一番忙しい時期がかぶってしまうこの現象を、何と名付けたらいいのだろう(苦笑)。

新しい本の刊行時期は、九月に決まった。時間的には余裕があるように見えるが、校了は六月末の予定。なぜかというと、七、八月はラダック方面の取材を計画しているので、九月発売の方が、著者が関わるプロモーション活動を発売のタイミングに合わせやすいからだ。僕の都合というか要するにワガママなのだが(申し訳ない)、九月開催ですでに決まっているイベント的な企画もあるので、続報を待たれよ、というところである。

それより何より、まずは、来週からGWにかけての修羅場を、どうにか乗り切らねば……。

———

ウィリアム・ダルリンプル『9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて』読了。インドの多種多様な信仰に生きる人々の姿を切り取った、壮大なノンフィクション。膨大な調査と緻密な取材、あらゆる予断を排したロングインタビュー、流麗な筆致、卓越した構成力……。個人的には、ジャイナ教の尼僧の話と、ダライ・ラマ法王14世の亡命時の警護を務めたチベット仏教の老僧の話が、強く印象に残った。こういう本に出会うと、自分も、書き手の一人としてもっと頑張らねばな、とつくづく思う。良い本だった。