フリーランスのライターとして活動を始めてから、僕の主戦場はしばらくの間、広告やデザインなどクリエイティブ系の雑誌だった。そこでの主な任務は、クリエイターへのインタビュー。今ふりかえってみても、結構な本数をがむしゃらに捌いていた。
当時も今もクリエイティブ系の雑誌でよく見られるのが、一種のスター・システム。大御所や売れっ子の若手など、著名なクリエイターを華々しく取り上げて、そのポートフォリオで誌面を盛り上げるというやり方。それはそれで、雑誌の一つの切り口としてありだったとは思うし、僕自身、普通ならとてもお会いできなかった錚々たる面々(思い返してみても、いやほんとに)にインタビューさせていただけたのは、恵まれていたなと思う。また、ほとんど無名の頃に取材したクリエイターが、その後みるみるうちに有名になっていくのを見守るのも、ライター冥利に尽きるものだった。
でも、しばらく経ってから思うようになった。これはこれでいい。だが、これ「だけ」じゃいかんだろ、と。
スターを華々しく紹介する記事を書くことは、それを求める読者がいる以上、必要なことなのかもしれない。だが、あまりにもそれに依存しすぎるのは、まるで、その人たちの輝きの「おこぼれ」をコバンザメみたく待ち構えてるようなものじゃないか‥‥。そんな風に感じるようになったのだ。
本づくり、雑誌づくりを生業に選んだなら、「おこぼれ」だけでなく、自分自身の目線と言葉でも勝負できるようになりたい。それは作り手のエゴなのかもしれないが、それくらいでなければ、この仕事を選んだ甲斐がない。だからその後は、自分で企画・執筆・編集する書籍を主戦場にした。それには、壮絶なやせ我慢を伴ったが‥‥(苦笑)。
僕は、自分にとって大切に思えることを、自分らしい形で伝えていきたい。せいぜい、六等星くらいの輝きでしかないのかもしれないけれど。