才能と職能

「一人で、書いて、撮って、編集して、一冊の本を作れるというのは、あなたの才能ですよ」という意味のことを、最近、何人かの人から言われた。

たぶん、僕の場合、持ち合わせているのは「才能」ではない。本づくりの仕事に携わるようになってから、必要に応じて身につけてきた「職能」だ。それは、そこそこの水準には達しているかもしれないけれど、個々の分野で燦然と輝きを放つトップクラスの「才能」には追いつけない、という限界も感じている。自分の「職能」の限界は、ずいぶん前から、自分でもびっくりするくらい素直に認めている。

ただ、個々の分野で煌めく「才能」を持っている人たちが、それを世の中に向けてうまく発揮することができずに、道半ばであきらめていくのも、僕は何度も見てきた。彼らには、いったい何が欠けていたのだろう。ほんのちょっとした巡り合わせか、運か‥‥。あるいは、いてもたってもいられないほどの、何かを「伝えたい」という思いか。

今までも、これからも、僕は地べたを這いずるように、じりじりと前に進んでいこうと思う。目指す先に「伝えたい」と思えるものがあると信じて。

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