名を成すことには興味ない

「あなたの職業は何ですか?」と訊かれると、僕の場合、フリーランスの編集者であり、ライターであり、時にはフォトグラファーでもある、という答えになる。最初からこうなりたいと思っていたわけではないが、いつの間にか、よろず屋稼業になってしまった。

では、編集者として、ライターとして、あるいはフォトグラファーとして、自分がどれくらいの価値のある人間なのかと訊かれると、ちょっと困ってしまう。一応、それなりのキャリアは積んでいるけれど、何十万部も売り上げた著書があるとか、華々しい賞を受賞したとか、そういうわかりやすい世間からの評価は受けていない。海千山千のフリーライター、みたいなざっくりした見られ方をされるのだろうし、ある意味それは当たっている。

でも僕は、自分が名を成すことには、興味がない。評価はされるに越したことはないけれど、世間から評価されるためにこの仕事を選んだわけではないから。ただ、本づくりの仕事が好きなだけ。編集と執筆と写真をかけ持ちしているのも、それが自分の目指す本づくりに必要だったから。

たぶん、僕が作る本は、百人のうち一人にしか評価されないような本なのだろう。でも、その一人の心を揺さぶれるのなら、僕の仕事には意味があるのかもしれない。肩書や世間体よりも、僕の仕事の価値は、これまで作ってきた、そしてこれから作る、一冊々々の本が語ってくれるのだと思う。

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