衰えていく国

スーパーに食材の買い出しに行くと、何もかも値上がりしてるなあ、と感じる。野菜や肉、卵などはわかりやすく高くなっているし、パッケージされた商品も、値上がりしてるか、内容量が減らされてるか、あるいはその両方だったりする。

僕の住んでいる西荻窪は、駅の界隈にたくさんの個人商店が集まっているのだが、閉店したまま次が決まらず、空いたままになってる物件も結構目につく。隣駅の吉祥寺は、住みたい街ランキングでトップ争いの常連だが、そんな街でも空き店舗物件があちこちにある。大手のデパートの中もスカスカで、埋められないスペースを安い衣料雑貨のワゴンセールとかで誤魔化してるところも多い。無人で、カプセルトイの機械を並べただけのところもあったり。

都心の繁華街もそうだ。原宿や渋谷のような一等地でも、かつてはお洒落なアパレルショップだった場所が、うらぶれた空き家になっている。新しいショッピングモールが次々に開業する一方で、既存のテナントビルはスカスカのまま閑古鳥。対照的に元気なのは新大久保界隈とかで、アジア各国の商店や食堂がぎっちぎちにひしめき、どこかが空いてもすぐに埋まるというが、日本人経営の店はあまり見当たらない。

近所で行きつけにしてる老舗のパン屋さんで、おひるによく買って食べていた名物のカレーパンが、ある日、1個420円になっているのを目にした時は、さすがにびっくりした。地元の人々に愛されている、良心的なお店なのだ。そういう店がそこまで値上げをしなければやりくりできないほど、今は何もかもが厳しい状況になっている。

先日、1ドルが160円台になったという経済ニュースで、日米の金利差が原因云々という記事が溢れていたけれど、それ以前に、日本円の価値が根本的に下がってしまっているのだと思う。日本という国そのものが刻々と衰退し、貧しくなっているのだ。取材で海外の国々との間を行き来していると、いろんな場面でそう感じる。日本の社会自体から、力が失われていると。

そう遠くないうちに、海外旅行などは日本人にとって、一部の富裕層に限られた娯楽になってしまうのではないかと思う。自分自身の仕事のやり方も、あらためて、いろいろ考えてみなければならないと感じている。

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石川美子『山と言葉のあいだ』読了。仏文学の研究者でもある著者が、自身がフランスで生活していた時の経験と、デュマやバルザック、スタンダールといった古今の作家たちにまつわるエピソードを絡めて書き綴ったエッセイ集。静謐で清々しい文体で、読んでいて心が落ち着く。とりわけ印象に残ったのは、マダム・ミヨーにまつわるエッセイで、数奇な運命の巡り合わせに滲む著者の思いに、胸を打たれた。

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