今週月曜から木曜までの3泊4日で、一人で温泉旅館に籠もってひたすら原稿を書くという、原稿執筆ぼっち合宿を実行してきた。滞在地に選んだのは、湯河原。夏目漱石や芥川龍之介など、明治・大正期の文豪も、よくここの温泉宿に籠もって原稿を書いていたという。
今回のぼっち合宿では、The Ryokan Tokyo YUGAWARAという旅館の「大人の原稿執筆パック」というプランを利用した。朝・昼・晩の3食の食事付きで、通常の食事付きの宿泊よりも割安に泊まれるプランだ。部屋は畳敷きの和室で、外からは秋虫の鳴き声がかすかに響くだけで、とても静か。館内ではWi-Fiも利用できる(が、接続が時々切れる)。いやが上にも執筆が捗りそうな環境だ。
温泉旅館なので、館内にはもちろん大浴場があって、朝方と、夕方〜夜の時間帯に、自由に利用できる。自分の場合は、朝起きてすぐに温泉に入ってさっぱりし、8時に朝食。午前中に執筆を進め、12時に昼食。午後も引き続き執筆し、18時に夕食。その後また温泉に入って、23時頃まで執筆。冷蔵庫に入れておいたビールを飲んで就寝、というスケジュールで過ごした。
1日3食の食事は、この旅館が通常用意しているメニューよりコストを抑えた、定食スタイルのものが出てくる。3泊4日の滞在中、毎食違うメニューを用意してもらえたので助かった。地元の食材を活用していて、味もなかなか。追加料金を払えば、通常の宿泊者向けの豪華なメニューへのアップグレードや、深夜にお茶漬けなどの夜食を用意してもらうこともできる。
食事をする時間は、昼は12時で固定だが、朝と夜は1〜2時間の幅で前後にずらしてリクエストできる。その時間に行けばすぐに出してもらえるので、旅館の外に食べに出かけたりするのと比べて、時間のロスがまったくない。原稿に集中するには地味に助かる。
「大人の原稿執筆パック」では、滞在中にコーヒーと紅茶が飲み放題。頼めばポットで用意してもらえるので、部屋で原稿を書きながら、好きなだけ飲むことができる。普段から仕事中はコーヒーが欠かせないカフェイン党なので、これはとてもありがたかった。部屋には空の小型冷蔵庫もあるので、冷たいドリンクやビールを入れておける。
館内には、3度の食事を出してくれるカフェレストランのほか、自動販売機も2、3台あるが、品揃えはそこまで多くなかったので、執筆中のちょっとしたおやつなどがほしい人は、湯河原駅などであらかじめ買っておくか、宿の近くの店(名物のきび餅などで有名な店のほか、コンビニも1軒ある)で買うといいと思う。
今回の滞在では、例のGO TOトラベルキャンペーンを利用したので、宿泊料金が35%割引となったほか、15%分の地域共通クーポンを旅館からいただいた。この地域共通クーポン、まだ使える店は限られているそうなのだが(特に電子クーポンは対応が遅れているとか)、旅館のカフェレストランで使えるとのことだったので、部屋で飲む用のボトルビールの購入にクーポンを利用した。あとは東京へのおみやげの購入代金と、さらに残った分は帰京した時に八重洲ブックセンターで本を購入する代金にクーポンを充てた。
それにしても、何とも利用しづらいシステムではある。もうちょっと頭のいい観光振興策はなかったのだろうか、日本政府……。まあ、今回のぼっち合宿に関しては、都内からの移動を伴う旅行ではあるけれど、他の人と極力接触せずに部屋に籠ることで感染リスクを抑えつつ、旅行費用が実質半額になるシステムをどうにかこうにかうまく活用した、という形にはできたと思う。
湯河原の温泉街は、びっくりするほど急峻な地形に温泉旅館や民家がひしめいていて、ひなびた風情で良い雰囲気の街だった。普通に湯治と観光に来ていたら、もっとゆっくり散歩して楽しめたと思うのだが、まあ、今回は原稿を書くのが唯一最大の目的だったので。
原稿の執筆自体は、自分でもびっくりするくらいはかどって、本全体の執筆スケジュールを一気に短縮することができた。朝から晩までひたすら原稿を書き続けて、疲れたら温泉に浸かって全回復という、温泉ドーピングみたいな3日間だったが、やってよかったなあと思う。ただ、3泊以上になると、非日常の環境に慣れてきて、集中力も限界に達して、だんだんだれてくると思う。人にもよるが、この原稿執筆パックは、1万字くらいの原稿を2泊3日で書くのに利用するくらいが、ちょうどいいような気がする。
何だかんだで、温泉旅館での原稿執筆、とてもよかったので、いつかまた本の書き下ろし作業が発生したら、何らかの形でまたやってみようと思う。
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