深夜に思い浮かんだことを、つらつらと。
今まで、旅先でいろんな人に出会ってきた。その中でも、これから就職活動をしようとしている人や、すでに一度就職したけれど転職を考えている人が、異口同音に口にすることがある。
「‥‥できれば、旅に関係のある仕事がしたいんです!」
その気持、わかりすぎるほどわかる。旅の自由がもたらす解放感とみずみずしい感動に、仕事を絡めて生活していけたら、どんなにいいだろう。でも、「旅を仕事にする」のは、簡単なことではない。
たとえば、旅行会社に就職したからって、誰もが添乗員として年中あちこち旅して回っているわけではない。大半の時間は地道なオフィスワークに明け暮れる。たまに添乗に出たとしても、四六時中お客さんに気を遣って、ぶっちゃけ、ゆっくり旅を楽しむどころではない。添乗に出ずっぱりなら、それはそれで体力的にきついし。はたで見ていても、本当に大変そうな仕事だ。
では、トラベルライターやフォトグラファーはどうだろう。これも、概して非常にささやかな予算と弾丸スケジュールの中で、あれ見てこれ見てそれを見て、と取材に追いまくられ、帰国後、ライターには苛酷な〆切が待ち構えている。それでもなかなか食っていけないのが実情だ。
どの職業にも共通しているのが、自分で旅の行先や行動を選ぶ自由がとても限られている、ということ。仕事だから仕方ない面もあるが、そこに、かつての旅で感じた解放感や感動を見出すのは、かなり難しいと思う。
「じゃ、自分で好きなように旅をして、それを本や写真で発表しよう!」という人もいるかもしれない。僕自身の仕事で一番知られているのも、ラダックを好きなように旅して過ごして、それをまとめた本だ。「旅を仕事にする」という意味では、もっともそれに近い選択肢と言えるかもしれない。
でも、この選択肢は、自分で言うのも何だが、かなりリスキーだ。これだけで生活していくのは難しい。今の僕は、他の仕事も請け負いつつ、機を見て好きなように旅をして、それをどうにかこうにか形にする、という感じでやりくりしている。依頼される形でのトラベルライターやフォトグラファーの仕事は、それを完全にメインにすると自分の旅ができなくなりそうなので、積極的に営業をかけるつもりは今のところない。
ただ最近は、もう少し別の形で「旅を仕事にする」ということが実現できるのではないか、とも思っている。自分がある程度イニシアチブを握れる環境を整えて、自分の旅の本づくりもしつつ、それとはまた別のスタイルで、自分や、自分に近い立場の人の旅を形にする仕事ができたら‥‥。
今、水面下でたくらんでるのは、そんなプロジェクトだったりする。