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仕事のスイッチ

ふと気がつくと、自分自身が楽しむという目的のために、文章を書いたり、写真を撮ったりすることは、とんとなくなってしまったな、と思う。

ストラップを首にかけてカメラのグリップを握れば、それだけで自分の中で仕事のスイッチがぱちんと入る。ICレコーダーをオンにする時、紙のノートにペンを走らせる時、仕事机でキーボードを叩く時。文章も写真も、僕にとっては仕事に必要な作業という位置づけになってしまった。

でも、それはそれでいいのかもしれない、とも思う。そうして仕事のスイッチがぱちんと入っている時は、大変な時もあるけれど、何だかんだで楽しいから。仕事を楽しめているのなら、それが一番いいのかなと思う。

来年もいろんな仕事をすることになると思うけど、気持よく楽しめる仕事になるべく多く当たりますように。

丁寧に積み上げる

仕事のことでいろいろあって、正直、ちょっとやさぐれた気分になっていた時、こんなツイートのまとめがタイムラインに流れてきた。「逃げるは恥だが役に立つ」の作者の海野つなみ先生が、おかざき真里先生のツイートをまとめたものだ。

おかざき真里先生の思う「丁寧に積み上げる」「それを受け手が丁寧に拾っていく」ことの大事さ

これがもう今まさに自分が直面している事態とドンピシャすぎて、思わずハグさせていただきたくなった(すみません、苦笑)。

ジャンルもレベルも違いすぎるけれど、僕が生業としている、文章を書いたり、写真を撮ったり、編集したりといった仕事は、自分自身で大切だと思えることを、細かなディテールにまでこだわりながら一つひとつ丁寧に積み重ねていって、それを読者に「いかがでしょうか?」と差し出す仕事だと思っている。表面的にウケのよさそうな惹句で気を引こうとするとか、変に茶化して面白がらせようとするとか、そういう仕事ではない。それをやってしまったら終わりだと思っている。

きついし、しんどいし、やせ我慢かもしれないけれど、僕は読者を裏切れないし、自分自身も裏切れない。しゃあない、逃げるか(笑)。

冬至

終日、部屋で仕事。黙々と原稿を書き、データを揃えて、サーバにアップロード。今日明日で片付けなければならなかった作業が、夜中までかかったものの、どうにか終わったので、ほっとする。

今日は冬至らしいのだが、一年で一番日照時間が短い日という割には、妙にぬくいというか、空気がぬるい。明日明後日はさらに最高気温が上がるみたいだ。異常気象という言葉もすっかり耳慣れてしまった感があるが、それにしても変な天気である。

明日からは、日の射す時間が、少しずつ長くなっていく。そう思うと、ちょっと気分が軽くなる。

孤独の意味

「誰もいない原野の真っ只中で、たった一人でいることが、嬉しくて、嬉しくて、仕方なかった」

20年以上前、ある人が、ある人と、ある人について話した言葉。当時、それを耳にした僕は、その意味がまったく理解できなかった。でも、今はたぶん、ほんの少しだけ、その真の意味が理解できるような気がしている。

危険をかえりみずに冒険をしたことを後で人に自慢しようとか、そんな薄っぺらい気持では断じてない。他の人間と関わるのが嫌で一人になりたかったというのとも違う。たった一人で、誰もいない原野にいる。でも、つらくはないし、寂しくもない。完全な孤独の中に身を置くからこそ、理解できる感覚。世界のすべての存在の中で、自分はそのほんの一部分に過ぎないということ。

あの感覚を、人に説明するのは、とても難しい。

本とコーヒーとピザトースト

妙に生暖かい天気。昼、八王子方面で大学案件の取材。どうにかこうにか対応した後、立川から中央線で一気に都心へ。夕方から有楽町で、吉田亮人さんの写真展示のレセプションがあったので。

ちょっと早く有楽町に着きすぎてしまって、腹も空いているしと、ひさしぶりに、紅鹿舎へ。ここはピザトースト発祥の店なのだそうで、僕もここに来たらたいていピザトーストとコーヒーのセットを注文する。店内は空いていて、楽しげにおしゃべりしてる韓国人の女の子たちや、音楽談義に花を咲かせるご婦人方などで、くつろいだ雰囲気。

夏の終わりから読みかけのままだった、ハードカバーの本を読む。サイフォンでいれたコーヒーと、とろっとろのチーズのピザトーストをおともに。ほおばるたび、ピザトーストの影の主役はピーマンだよなあ、などと思いつつ、コーヒーを一口すすり、また本のページに目を落とす。

しばらくすると、仕切りを挟んで隣の席に割と年配のおじさんが来て、クリームがこってり山盛りの大きなベイクドパイを注文し、そんなに急いで大丈夫かと心配になるほどのスピードで、パリパリ、むしゃむしゃ、パリパリ、と無我夢中でほおばっていた。ちょっと申し訳ないけど、夏にラダックで見た遊牧民のヤギを思い出してしまった(苦笑)。

喫茶店で、本とコーヒーとピザトースト。いいもんである。