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それは誰の言葉?

夕飯にキャベツとコンビーフを煮ていた時、電話がかかってきた。フレッツ光のお得な料金プランがどーたらこーたら、という電話営業だったのだが、何と言うか、とても失礼な印象の電話だった。

言葉遣いが失礼というのではない。それは割と普通だったのだが、こっちが答えるかどうかのうちに、ダダダーッとものすごい勢いで自分の言いたい情報をしゃべりまくるのだ。まったくもって、あちらの手元に用意されているであろうマニュアル通りに。こっちがどんな反応や言葉を返すのかとか、全然おかまいなしに。

人と話をする業務の発生する仕事には、言葉遣いに関するマニュアルは別にあっていいと思う。編集・校正の仕事で表記統一ルールがあるみたいに。ただ、会話というのはあくまでも、相手に応じた反応があってこそ自然に成り立つものだ。ただただ機械的にしゃべくりまくるためのマニュアルなんて、相手に悪印象しか与えないと思う。

それはいったい、誰の言葉? 相手のことを考えずにマニュアルを読み上げるなら、ペッパー君に任せといた方がよっぽどうまくやってくれるよ。

佐川急便、御乱心

年末のこの時期、宅配便の仕事はめちゃくちゃ忙しいらしい。お歳暮のやりとりとか、クリスマスプレゼントをネットで買う人とかも多いからだろう。僕の家でも、昨日のうちに着くとヤマト運輸から連絡された荷物がいつまでたっても届かず、結局届いたのは夜の10時頃だった。

今日の夕方、近所の行きつけの理髪店で散髪をしてもらったのだが、その間中、店主さんがずっと話していたのも、宅配便にまつわる話だった。

先日、店主さんが飼い犬を連れて近所を散歩していて、車1台と人が通れるくらいの狭い道で、犬がトイレをしていたタイミングで、1台の車が近づいてきた。犬が動けないので危ないと思った店主さんは、車に向かって手を上げ、ちょっと待ってくれと合図を送った。ところが、その車はまったく止まろうとせず、店主さんの手に車をぶつけて、通り過ぎてしまったのだ。

その車は少し進んだところで停まり、運転席から、佐川急便の制服を着た中年の男が降りてきた。ぶつけてしまったことを謝るのかと思ったら、「何でぶつかってくるんだ、この野郎!」と、まさかの逆ギレ。あまりの態度に怒った店主さんは、その後、佐川急便の配送所と警察に連絡。警察官を伴って現場検証をしていたところに、佐川急便の上司がその運転手を連れてきたのだが、なんと、警察官の目の前だというのに、店主さんに向かって「この当たり屋が!」とまたしても逆ギレ。あまりのトンデモぶりに、一同、開いた口がふさがらなかったそうだ。

その運転手は、佐川急便が直接雇っている従業員ではなく、個人で運送業をやっている人で、仲介業者を通じて佐川急便が雇っているのだそうだ。理髪店の店主さんとのこの一件以外でも、いろんなところでトラブルを起こしている人だそうで、佐川急便に問い合わせた時も「またあの人ですか!」と言われたそうだが、そんなトラブルメーカーを雇い続けていること自体、佐川急便の体質的な問題ではないかと思う。もし、店主さんが車をぶつけられた手を怪我していたら理髪店の仕事に大きく差し支えていただろうし、ぶつけられたのが年配の方や子供だったら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

店主さんに「これからどうすればいいと思います?」と聞かれたので、とりあえず、知り合いの弁護士さんに同席してもらう形で、佐川急便と仲介業者とその運転手の関係者全員に集まってもらって、法的手段に訴えることを検討していると伝えた上で、相手方の誠意と対応を聞いてみては、とアドバイスしておいた。来月散髪に行く頃には、その後どうなったか、経過を聞けるかもしれない。

とりあえず、宅配便業者のみなさん、忙しいとは思いますが、くれぐれも安全運転でお願いします。

キュレーションメディアとリライトライターの闇

最近、巷で話題になっている、DeNAのキュレーションメディアの問題。きっかけは、医療情報サイト「WELQ」が日々大量にアップロードし続けていた信頼性に乏しい粗悪なクオリティの記事の数々が、「医療デマ」の流布にあたるのではという批判が相次いだことだった。

DeNA側は専門家による監修や通報フォームの設置を実施すると表明したものの、最終的には「WELQ」の記事をすべて非公開状態に。その後には、同社系列のキュレーションメディアのうち、「MERY」以外の8つのサイトの記事もすべて非公開にされた。唯一残った「MERY」も、10万本以上あった記事の大半が非公開状態となっている。「WELQ」の医療デマに対する批判がここまで燃え広がったのは、BuzzFeed Newsの告発記事の影響が大きい。

DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言

キュレーションメディアというのは、一般の人が投稿した記事を集めて掲載するサイトという建前になっているのだが、上の記事によると、DeNAは自社系列のキュレーションメディアを運営するにあたり、ランサーズやクラウドワークスといったクラウドソーシングサービスを通じて、社名を隠しながら1000人単位でライターを集め、指定した内容の記事を大量生産させていた。報酬は1文字あたり0.5円かそれ以下という極端に安い金額。作業内容も、会社側が指定した複数のサイトからその内容をパクってツギハギにし、写真も同じく適当にパクってきて、記事っぽく仕立てさせるというものだった。コピペだとバレないようにリライトさせるための指示マニュアルまであったのだという。

DeNAに限らず、世間一般のキュレーションメディアと呼ばれているサイトのほとんどは、記事の内容の面白さやオリジナリティは関知していない。とにかく大量の記事を、サーチエンジンの検索結果の上位に来るように細工して投入する。少しでも多くの人間にクリックさせて、広告収入を稼ぐ。彼らの目的はそれだけだ。DeNAのキュレーションメディアはその最大手クラスだが、ほかにも有象無象のキュレーションメディアは山ほど存在する。

ここで問題になるのは、1文字0.5円以下という極端に安い料金の募集でも、それに応募してくる人がいるということだ。その多くはいわゆるプロのライターではなく、お小遣い稼ぎの内職として申し込んでいる素人の人たち。ランサーズやクラウドワークスは、完全に確信犯的にそうした素人ライターを集めてキュレーションメディアに送り込んでいる。DeNAと同様に彼らもまた、一般のサイトからパクってきた内容をバレないようにリライトさせるためのマニュアルを用意して、それを自社サイトで堂々と公開していた。

初心者にも分かる!リライト作業の具体的な進め方とは?」(元ページは内容が書き換えられたので魚拓から)

「リライトライターでも立派なライターであり、ライターとはまた違う能力が求められていると自覚しましょう」とまで書いてある。正直、読んでいて気持悪くなって、吐き気がした。何? リライトライターって? パクリライターじゃないのか?

文章を書くことに対するモラルや志や愛着をまったく持たないまま、単なる小遣い稼ぎの内職としてこういうリライトライターに応募してくる人は、これからも後を絶たないのかもしれない。最近では、コピペだとバレないかどうかを判定する自動診断ツールや、コピペ元のテキストを入力すれば自動的にリライトした文章を生成するツールまであると聞く。粗悪なパクリ記事を大量投入してそのページビューで広告収入を稼ぐというこの悪辣なビジネスモデルが駆逐されないかぎり、こうした傾向はなくならない気がする。

僕のようなフリーライターは、淡々と、コツコツと、自分自身の言葉で文章を書いていくことしかできない。今までも、これからも、それだけだ。でも僕は、そういう自分の仕事に誇りを持っている。こんな時代だからこそ、なおさらそう思う。

やさしさのない世界

連日の深夜に及ぶ編集作業で疲れてたのか、今日、目が覚めた時には昼を過ぎていた。あわてて起き出し、近所におひるのパンを買いに行く。空はよく晴れていて、風が冷たい。はっきりと冬の気配を感じた。

アメリカでは、どうやらトランプが大統領になるらしい。かの国の人々の選択した道に唖然としつつ、これから先、暗い方向に突き進んでいくであろう世界の行く末について思う。他者への思いやりもやさしさもない世界に。

夕方、コーヒー豆と晩ごはんの食材を調達するために外に出ると、風はいっそう冷たくなっていた。今日は、木枯らし1号が吹いたのだそうだ。

レッドネック

僕はもともと色白なたちだが、しばらく日に当たっていればそれなりに日焼けする。普通の人とちょっと違うのは、一年のうちで一番日焼けしているのが、今、11月初旬の時期ということだ。げにおそろしきは10月のタイ取材である。

もちろん、夏の間にインドやラダックにいる時も、強烈な日差しでそれなりに日焼けはする。特にトレッキングに行くとてきめんだが、それでも手足は長袖の服を着ているので、そこまで焼けない。しかし、タイではほぼ1カ月、Tシャツと短パン。夏休みが終わって2学期の始業式に来た小学生並みに日焼けする。足先にはサンダルのストラップの模様がくっきりと残ってしまうほどだ。

元が色白なだけに色が白く戻るのも早いのだが、それでもしつこく残るというか、年中日焼けで黒いままの部分がある。それは首筋、後頭部。ここはもう、日焼け止めやら何やら塗ったとしても、防ぎようがない。

ところで、米国の大統領選関連のニュースを見ていて最近知ったのだが、米国では、強烈な日差しの野外で肉体労働をしていて首筋が赤く日焼けした労働者階級の貧しい白人の人たちを、「レッドネック」という侮蔑的な呼称で呼ぶ層がいるのだそうだ。僕自身も世間的には見下されている部類に入るとは思うが(苦笑)、米国のそういうところは、やっぱり好きになれない。しかしまあ、大統領選、どうなるんだろ。