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標高5400メートルの記憶

ちょっとした思いつきで、ブログのデザインを変えてみることにした。背景の木目調のテクスチャを明るい梨地のものにして、ヘッダ部分の写真も入れ替えた。

この写真を撮ったのは、2008年の夏、ラダック南東部の高原地帯、ルプシュ地方をトレッキングで旅していた時のこと。標高約5400メートルのキャマユリ・ラという峠から、遥か彼方、標高4500メートルのところにあるツォ・カル(白の湖)をふりかえった光景だ。

数十歩ごとに膝に手をついて呼吸を整えなければ歩けないほど酸素が薄い場所なのに、足元にはなぜか、小さな黄色い花が一面に咲いていた。二日前に通り過ぎてきたツォ・カルの岸辺には、名前の由来となった、白く凝固した塩の塊が広がっているのが見える。その向こうに連なる山々には、すぐ上に浮かぶ雲が、まだらに影を落としていた。

峠の頂上で、岩に腰を下ろして水筒の水を飲んでいると、馬に跨がった遊牧民の若者が、下から駆け上がってくるのが見えた。こんな途方もない世界で、何物にも縛られることなく、自由に生きている人々がいるのだ。

あの時、頬をなぶっていた風のひんやりとした感触を、僕は今も憶えている。いつか、あの場所に戻る時が来るのだろうか。

胡桃の味

今日も雨。まだ五月だというのに、早くも台風が接近しているらしい。

家に閉じこもっているのも癪だし、かといって、雨の中を遠出したくもない。がっつり酒を飲む気分でもない‥‥。というわけで、晩飯は東小金井のインド富士へ。初夏にふさわしく、カツオのカレーがラインナップ。何とも言えない甘味があって、素晴らしく美味。ビールと一緒に注文したホタルイカのマリネともども、おいしくいただいた。

その後、西国分寺のクルミドコーヒーへ。レアチーズケーキにはちみつレモンをかけ、深々煎りコーヒーとともにいただく。あまりにうまくて、コーヒーをおかわりしてしまった。

クルミドコーヒーでは、テーブルの上に胡桃と胡桃割りが置いてあって、お客さんが好きなだけ自分で割って食べることができる。試しに一つ、二つ割って、ぽりぽり食べてみる。懐かしい味。ラダックのダーにいた時、村の少年が僕にくれた、あの胡桃の味。

誘惑の到来

ここ数日寝不足だったせいか、昨日の夜は思いっきり爆睡してしまい、起きたら昼過ぎ。いささか焦る‥‥。

デリーで某マスメディアの仕事をしている知人から、夏にラダックで取材をするかもしれないという相談のメールが届く。今年の夏は、思っていた以上に友人・知人がラダックに集結することになりそうだ。みんなとのんびり遊びたいところだが、今回は取材でぎっちぎちなので、そういうわけにもいかない。

午後、アップルストアに注文していたiPad 2が届く。予定より二日ほど早い。とりあえず基本的なセットアップをしただけなのだが、動作はきびきびしてるし、なかなか魅力的なガジェット。もう少しアプリを追加して使ってみてから、このブログでもレビューを書いてみようと思う。

そんなこんなで、今日は全然仕事がはかどらなかった(汗)。これから、もうちょっと進めてみる。

二つの居場所

朝から代々木公園へ。アースデイ東京に出展しているジュレーラダックのブースで物販を手伝う。何人ものお客さんに声をかけていただいて、ありがたいかぎり。まったく初対面の人なのに、相手は自分のことをかなりいろいろ知っているという状況には、いつまで経っても慣れないのだが(苦笑)。

お客さんの一人に、こんなことを訊かれた。

「そんなにラダックのことが好きになった後に日本に帰ってきて、嫌になってしまったりしませんでしたか?」

正直言って、全然嫌になったりしなかった。

ラダックと日本の間を行き来しはじめた頃は、何から何まで違う二つの社会のギャップに戸惑ったりもしたのだが、時間が過ぎ、ラダックのことを知れば知るほど、日本のよさも改めて感じるようになった。どちらの社会にも、いい面もあれば、悪い面もある。見境のないグローバリゼーションはもちろん支持したくはないが、さりとて懐古主義的なローカリゼーションを安易に盲信するつもりもない。要は、バランスの問題なのだと思う。

ラダックのシンプルな社会では、人と人とを互いに結びつける強い絆が、とてもわかりやすい形で存在する。でも、そうした絆は、日本にも、世界のどこにでも、何らかの形で必ず存在しているのだ。どこの国だとか、そんなことは関係ない。その絆を、大切にできる人間になれるかどうか。自分はまだまだだと思う(本当に未熟者だ‥‥)けど、少しでも納得のいく生き方をできるようになれたら、と思う。

ラダックも、日本も、どちらも僕にとっての居場所。

風の旅行社「風通信」No.42

風の旅行社が年に三回刊行している無料の情報誌「風通信」に、「もうひとつの居場所、ラダック」と題した4ページのフォトエッセイを寄稿しました。表紙の写真と目次の写真も提供しています。エッセイは完全書き下ろし。写真は「ラダックの風息」に掲載していないものを中心に選んでいます。

風通信」は、お問い合わせ用メールフォーム、または電話(東京0120-987-553、大阪0120-987-803)で風の旅行社に申し込むと、無料で送ってもらえるそうです。数に限りがあるそうなので、お早めにどうぞ。発送開始時期は、4月22日(金)頃の予定です。