僕が日本を留守にしている間に、奥華子の新しいアルバム「うたかた
」が発売されていた。インディーズ時代の作品を除くと、彼女の五枚目のフルアルバムということになる。
帰国した翌日に新宿のタワレコで買ってきて、最初に聴いた時の正直な印象は、「あれっ? こんなもん?」という感じ。今年の春にスマッシュヒットを記録した「初恋」も収録されているものの、キャッチーでインパクトのある曲はあまり多くなく、どちらかというと控えめで、後ろ向きな印象の曲が中心になっている。アレンジもそれに合わせて抑制を効かせている感じで、それがちょっと拍子抜けするような第一印象に繋がったのだろう。
でも、二度目を聴き、三度目を聴き、iPhoneに曲を入れて電車での移動中に聴き‥‥と、くりかえし聴いているうちに、次第にこの「うたかた」の魅力がじんわりと伝わってくるようになった。何度くりかえしても聴き飽きることのないメロディ。それまで何気なく聴き流していたのに、ふいに心にするっと入り込んでくる歌詞。たとえは悪いかもしれないが、噛めば噛むほど旨味が出てくる、スルメのようなアルバム。特に、終盤に収録されている「元気でいてね」は、自身のライブに足を運んでくれるお客さんのことを思って作った曲だと思うのだが、作り手の素直な気持がこもっていて、いい曲だなと思う。