奥華子「うたかた」

僕が日本を留守にしている間に、奥華子の新しいアルバム「うたかた」が発売されていた。インディーズ時代の作品を除くと、彼女の五枚目のフルアルバムということになる。

帰国した翌日に新宿のタワレコで買ってきて、最初に聴いた時の正直な印象は、「あれっ? こんなもん?」という感じ。今年の春にスマッシュヒットを記録した「初恋」も収録されているものの、キャッチーでインパクトのある曲はあまり多くなく、どちらかというと控えめで、後ろ向きな印象の曲が中心になっている。アレンジもそれに合わせて抑制を効かせている感じで、それがちょっと拍子抜けするような第一印象に繋がったのだろう。

でも、二度目を聴き、三度目を聴き、iPhoneに曲を入れて電車での移動中に聴き‥‥と、くりかえし聴いているうちに、次第にこの「うたかた」の魅力がじんわりと伝わってくるようになった。何度くりかえしても聴き飽きることのないメロディ。それまで何気なく聴き流していたのに、ふいに心にするっと入り込んでくる歌詞。たとえは悪いかもしれないが、噛めば噛むほど旨味が出てくる、スルメのようなアルバム。特に、終盤に収録されている「元気でいてね」は、自身のライブに足を運んでくれるお客さんのことを思って作った曲だと思うのだが、作り手の素直な気持がこもっていて、いい曲だなと思う。

写真の迷い

今年の夏のラダックでは、写真の撮り方について、さんざん悩んだ。

ラダックの風息」を書くための取材をしていた頃は、がむしゃらというか、必死というか、無我夢中でシャッターを切り続けていた。小手先のテクニックなどいっさい使わず(というか、そんなもの何も知らない)、真正面からの体当たり。だからこそ撮れた写真もあったし、ラダックの自然や人々にも、素直な気持で向き合うことができたと思う。

だが、ラダックという場所に慣れ、言葉を覚え、自分なりの撮り方が固まっていくうちに、本当にこの撮り方だけでいいのだろうか、という疑問が頭をもたげてきた。子供のかわいい笑顔が撮れたら、それで満足なのか? 笑顔は確かに魅力的だけど、それ以外の写真を撮る選択肢もあったかもしれないのでは? と。

滞在中、そんなことを考えているうちに、写真を撮る時、なんとなく迷いを感じるようになった。たぶんそれは、テクニック面ではなく、気持の面での問題だったのだと思う。なまじ、ラダックでいろんなことに慣れてしまったから、その上で、どういう気持、どういう心構えで写真を撮っていけばいいのか、わからなくなってしまったのだ。

一枚々々にきちんと気持を込めて写真を撮り続けるには、その気持をどういう方向に向けて放っていくのかを確認しておかなければならない。自分が伝えたいことは何なのか? それは自分にとって何なのか? そこがはっきりしていれば、どんな場面に遭遇しても、脊髄反射でシャッターを切ることができるはず。だが、今回のラダック滞在では、そこがちゃんと固まりきっていなかった。納得のいくカットより、反省すべきカットの方がはるかに多かった。写真の難しさ、写真の怖さというものを、今さらながら痛感している。

迷いは、今も晴れてはいない。さて、いったいどうしたものか‥‥。次にラダックに戻る前に、短期間でいいからどこか別の場所を撮りに行って、自分の撮り方を再確認してみてもいいのかもしれない。

再びブログ制作

昼、ひさしぶりに文蔵に行く。今やすっかり名店の風格が漂うこの店、土日になるとものすごい長蛇の列なのだが、今日は10分ほど待っただけで中に入ることができた。店の人は感じがいいし、ラーメンはうまいし、お気に入りの店。お客さんが多すぎるのはちょっと困るけど、オープンして間もない頃から通っている身としては、何だかうれしい。

午後はこいけ菓子店を訪ねて、店主の深澤さんと打ち合わせ。以前、「人が集まるブログの始め方」という本を書いた時、サンプルブログの素材用にお菓子を撮影させてもらったり、店の設定を参考にさせてもらったりしていたのだが、「じゃ、そのサンプルをベースに、実際にこいけ菓子店のブログを作っちゃいましょう」という話になったのだ。

WordPressのテーマは、「人が集まるブログの始め方」で使ったwp.Vicunaにしようかとも思ったのだが、深澤さんからの要望をまとめたところ、レイアウトは2カラムにして、使用頻度の低いナビゲーションのウィジェットはフッタにまとめた方がよさそうだったので、このブログと同様、Twenty Tenをベースに制作していくことにした。

そういえば、もうすぐ発売される大藤幹さんの「基本からしっかりわかる WordPress 3カスタマイズブック」には、Twenty Tenの解説とカスタマイズ指南がバッチリ載っているらしい。まさに渡りに船(笑)。まだ構造の把握があやふやなところもあるので、参考にさせてもらおう。

心意気

午後、外苑前で知人のデザイナーさんと打ち合わせ。来月中旬から開催するラダックのチャリティ写真展のために、ポストカードフライヤーを作ることにしたのだ。何のビジネスにも繋がらない仕事なのに、快く引き受けてくださったデザイナーさんの心意気に感謝。縁というのは、ありがたいものだなあと思う。

夕方、四ッ谷で途中下車して、ひさびさに洋食エリーゼに行く。オムライスかそれ以外のメニューにするか、さんざん迷ったあげく、ポークソテー定食を注文。豚肉は分厚いのに柔らかくて、脂身までちゃんとおいしい。それにかかっているデミグラスソースも、お皿をなめたくなるほどの味。やはりこの店は、都内最強の洋食屋さんだ。

夜、家に帰ってくると、数時間前に打ち合わせしたばかりのデザイナーさんから、もうポストカードフライヤーのレイアウトデザインがメールで届いていた。早っ! 本当に感謝。このポストカードフライヤー、来週のナマステインディアや再来週のグローバルフェスタに出展するNGOジュレーラダックのブースで配れると思うので、お楽しみに。

人に会う

雨が降るたびに、めっきり涼しくなっていく。夏ももう終わりだ。

昼、渋谷でラダック生まれのチベット人の友人と会い、チョグラムサルにある彼の実家から預かってきた荷物を渡す。彼は来週、槍ヶ岳を登りに行くのだという。僕も誘ってもらったが、その頃はいろいろバタバタしていそうだったので断念。たまには日本の山も歩いてみたいのだが。

午後、渋谷から原宿まで歩いて、とある編集の仕事の打ち合わせ。この案件、まだラダックにいる頃にメールで打診があったのだが、作業が本格化するのはもう少し先になりそう。先方の事務所は人手が足りなくてかなり忙しそうだったので、来月あたりに別の地方取材の案件をお手伝いすることになった。

夜は、鎌倉在住の文化人類学者の友人と、新宿の陶玄房で飲み会。さんまの天ぷらがうまい。この友人にも、ラダックから預かってきた荷物があったので、それを渡す。ラダックの人々とある程度関わると、こうして運び屋にさせられることが常態化するのだった(笑)。

それにしても、今日はたくさんの人に会った。何だか新鮮(笑)。