卒業論文

今の時期、大学四年生の人はそろそろ卒論を提出する頃なのだろうか。自分が卒論を提出した時のことを、今でも時々思い出す。

大学時代、僕は本当に不真面目な学生で、授業もろくすっぽ出ず、評価も「可」に相当する「C」や「D」ばかり。スレスレで単位を取っているような状態だった。西洋史専攻だったので、卒論も何か歴史に関すること(当たり前だ)を書かなければならなかったのだが、思案した挙句、選んだテーマは「グラフ・ジャーナリズムの歴史的展開」。20世紀初頭、新聞や雑誌に写真が使われはじめた頃からの流れを、フォトジャーナリストたちの人生とともにまとめるという目論見だった。歴史といえば歴史だが‥‥(苦笑)。

とりあえず、書かなければ絶対卒業できないということで、資料をあれこれ突き合わせながら、どうにかこうにか3万字ほど書き上げ、年末の〆切までに提出。で、その少し後に、卒論の担当教授との面接審査が行われることになり、僕はなぜか、いの一番に呼び出された。問題児は最初に呼ばれるということか‥‥と、僕はすっかり観念して、研究室のドアをノックした。

ところが、担当教授は思いのほか上機嫌だった。

「山本君、これ、面白かったよ! 特にこの章のこの部分の表現が、洒落てていいね! それからここも‥‥」

え? これ、卒論の審査じゃ‥‥?

「でもね、面白かったんだけど、これにいい評価はあげられないなあ。これは論文というより‥‥読み物だよね!」

僕は椅子からずり落ちそうになった。そっか、論文じゃないのか‥‥(苦笑)。

「まあでも、読み物としては面白かったから、この論文は返却せずに研究室にキープさせてもらうよ。いいかね?」

そんなわけで、僕の「読み物」は無事に単位をもらって、研究室に保管されることになったのだった。今でも、あそこにあるのかな?

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