本の価値というものは、当たり前だが、単純な尺度では測れない。何十万部も売れているベストセラーよりも、500部しか刷られていない私家版の詩集に心を深く揺り動かされることだってある。本から感じ取ることは、人それぞれ。本と本の間には、たぶん、勝ち負けなんてない。
ただ、作り手の側にとっては、勝ち負けを感じることもあるかもしれない。
たとえば、出版社から「あの会社のあの本が売れてるから、ああいう感じのやつを作ってくださいよ」と言われてしまった時。内容であれ、デザインであれ、他社の売れてる本のアイデアをパクるのは、どんな事情があるにせよ、作り手としては恥ずべき行為だ。たとえそれなりに売れたとしても、最初にパクってしまった段階で、その本はとても不幸な負い目を背負ってしまう。その時点で、決定的に負けだ。
そういう本はやっぱり、世の中に出すべきではないと、僕は思う。何よりも、その本と、それを手にしてしまった読者がかわいそうだ。