本の値段

あらゆるものの値段が、上がっている。

ほぼ毎日、食材を買いにスーパーに行っているので、野菜や肉、調味料などの値段がじりじり上がってきているのは、日々実感している。コンビニは普段あまり利用しないのだが、この間、ひさしぶりに入った時、弁当の類の値段の高騰ぶり(そして容量は減っている……)にびっくりした。

書店に行くと、新刊本の値段も上がっている。単行本は、仕様にもよるが、2000円を超えるものも珍しくなくなった。文庫本も、1000円台のものが増えた気がする。ほんの少し前まで、出版業界には「2000円を超えると本は売れなくなる」という、「ラーメンは1000円を超えると売れなくなる」というのに近い基準の見方があり、それは実際かなり当たっていた部分もあったように思う。僕自身の著作も、これまでは本体価格1800円+税=1980円という、2000円以内に収めるような価格設定をしてきた。

しかし、この間出した新刊『ラダック旅遊大全』では、本体価格を2000円に設定せざるを得なかった。理由はシンプルで、本に使う用紙やインクなどの値段が、ここ数年でめちゃめちゃ上がっているからだ。あらゆる面で原価を切り詰める工夫をしても、単行本の値段を税込2000円以下に収めることは、とても難しくなってしまった(そういえばラーメンも、1000円を超える値付けをする店が珍しくなくなった気がする)。

値段が一冊2000円を超えるのが当たり前になってしまった今、紙の本はもう、ぜいたく品の部類に属する存在になってしまったのかもしれない。そういうモノを作る仕事をしている以上、お金を払って買ってくれた人を後悔させないよう、今まで以上に丁寧に本づくりをしていかねば、と思っている。

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川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』読了。ほんの少し前まで、何から何まで自分たちで作るのが当たり前だった、ラダックの人々の暮らしを思い起こしながら読んだ。「自分たち」で作る、というのがポイントなのかな……。互いに手伝い、助け合いながら、生きるために働き、生きるために生きる。そうした日々の暮らしが、人と人との結びつきを形作っていく。社会のシステムが複雑化すると見失われがちな人のありようの原点は、実はちょっとした思い切りで、また見つけ出せるのかもしれない。

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