文章がうまい、写真がうまい、というのは、ボクシングにたとえると、軽快なフットワークで動き回りながら、華麗なコンビネーション・ブローをヒットさせていく、というスタイルに似ている気がする。プロとしてやっていくには、そういううまさ、器用さは、確かに必要なのだと思う。
その一方で、人の心をぐっと揺さぶる文章や写真は、ガードを固めて我慢しながらじりじり近づいて、ここぞというタイミングで繰り出す、渾身の一撃に似ている。不器用で愚直な一撃。たった数行の言葉、たった一枚の写真。だからこそ、届けられるものもある。
仕事で文章や写真に携わっていると、どうしても、うまいことやって綺麗に仕上げてしまおうと本能的に考えてしまいがちなのだが、時には愚直な一撃の大切さも、思い出してやっていかねば、と思う。