三鷹北口界隈には、何軒かのラーメン屋がある。うちから一番近いのは、チェーン店を除くと、たぶんその中でも一番後発の店だ。
その店がオープンしたばかりの頃は、割と大勢のお客さんが来ていて、外で待たなければならない時もあるほどだった。でも、去年あたりからは、だんだんそういうことも少なくなって、夕方にふらっと行くと、他に誰も客がいないことも珍しくなくなった。まだ若くて愛想のいいご夫婦がやっている店なのだが、そんな風にがらんとした時に店に入ると、二人はしんどさを押し殺すようにして笑顔を見せるのだった。
味はけっして悪くないし、むしろなかなかうまい。店のしつらえからメニューまで、丁寧に気を配っていると思う。ベストを尽くしているはずなのに、うまくいかないもどかしさ。そういう思いは、場所や仕事は違えど、今の世の中でたくさんの人が抱えているものなのかもしれない。僕自身も含めて。
今日の夕方も、その店の暖簾をくぐった時は他に誰もいなかったのだが、その後、とととっと立て続けにお客さんが入ってきたので、少しほっとした。ちょっとなれなれしい感じの二人連れの女性客の一人が店のご主人に「おいしいラーメン屋さんがあるからって、この子を連れてきたんですよ!」と話しかけると、ご主人は「ありがとうございます。これからも続けていけるように、がんばります!」と頭を下げていた。
「ごちそうさま」と言って席を立つと、「いつもありがとうございます! またよろしくお願いします!」という二人の声が背中を追いかけてきた。
お互い、がんばりましょうね。ベストを尽くして。折れない心で。