午前中に都心で用事をすませた後、午後の取材まで時間が空いた。ふと思い立って、青山のBOOK 246へ。
少し前に、このBOOK 246がビルの解体工事に伴って閉店するという話を聞いた時は、正直かなりショックだったし、残念な気持だった。特にとりたてて予定もない天気のいい休みの日に、電車で青山まで出て、隣のカフェでランチを食べ、BOOK 246をのぞいてしばし旅気分に浸り、それから表参道や渋谷までぶらぶら散歩するというパターンが、結構多かったのだ。それに、僕が書いたラダックの本二冊をずっと辛抱強く置き続けてくださっていた、数少ない本屋さんの一つでもあったし。
とはいえ、僕はこのお店で、自分自身の身元を明かしたことは今までなかった。今になって名乗るのも相当気恥ずかしかったのだが、その一方で、このタイミングで一度ちゃんとお礼も言っておきたかった。で、おそるおそる名刺を差し出して名乗ってみると‥‥僕のことを知ってくれている方で、まずはそれにほっとした(笑)。その後、何だかんだでラダックやアラスカの話ですっかり盛り上がってしまい、一時間も店内でおしゃべりさせていただいてしまった。思っていた以上に共通の知り合いの方が多くて、そのつながりっぷりにもびっくりした。
十年間にわたって本と旅が好きな人たちに愛されてきた、小さな本屋さん。お店の形はなくなっても、その記憶はお客さんたちの心に残っていくと思う。そして、またどこか別の場所で、新しく生まれるものもきっとあると思う。