昨日は、丹沢へ山歩きをしに行った。去年の春に歩いたのと同じ、ヤビツ峠から塔ノ岳を経て大倉に降りる、約六時間の行程。前日の天気予報では晴れと聞いていたけど、ヤビツ峠に到着してみると、鈍色の雲が空を覆うぱっとしない天気。澄み渡る青空の下で紅葉の山々を堪能できると楽しみにしていたのに、ちょっとがっかり。
登りはじめて約一時間後、二ノ塔の手前のあたりでふりかえると、雲間から射す光が海を照らしていた。
尾根筋に入ると、白い霧が次から次へと斜面を這い上がってきて、あたりはみるみるうちに真っ白に。吹きすさぶ風に粉雪が舞う。寒い。一時間に一度のペースで休憩し、タルモスに入れて持ってきていた温かいほうじ茶を、一杯ずつ大事に飲む。やれやれ、秋山をのんびり歩くつもりでいたのに(苦笑)。
三ノ塔のお地蔵さんも、何だか寂しげ。立ち止まると風でどんどん体温を奪われてしまうので、先へと進む。
霧に閉ざされた幻のような世界を、一人で歩き続ける。ふと目を上げると、たくさんの白い花を咲かせている木々が見えた。‥‥花? この季節に?
白い花に見えたのは、木々の梢で凍りついた樹氷だった。塔ノ岳の手前、標高1400メートルを越えたあたりでは、梢という梢に、びっしりと氷の花が咲いていた。
塔ノ岳の頂上で、冷えきったおにぎりをほうじ茶の残りと一緒に頬張り、一目散に大倉尾根を下る。秋の丹沢らしい眺望はほとんど楽しめなかったけれど、あんな樹氷の光景を見ることができたのは、それはそれで得難い体験だったと思う。冬はもう、すぐそこまで来ている。