本づくりという仕事

昨日の夜は、上野毛にある多摩美術大学へ行き、西村佳哲さんのプレデザインをテーマにした一般公開授業を聴講してきた。この日のゲストは、夏葉社の島田潤一郎さん。このお二人の組み合わせなら、必ず面白いお話が聞けると思っていたのだが、予想に違わず、とても面白かった。

吉祥寺で、たった一人で出版社を営んでいる島田さん。世の中に足りないと自分が思える本、三十年後も書店に並んでいるような、長く読み継がれていく本を作りたい、と話していた。本は、必ずしもわかりやすいものではない。でも、単なる情報の容れ物とは違う、読んだ時の記憶や感情が宿ったものとして存在し続けることによって、生活に豊かさをもたらしてくれる、と。そういう話からは、島田さんの本に対する愛情と畏敬の念がひしひしと伝わってきた。

本づくりという仕事では、作家や装丁家、書店員との間でのコミュニケーションがすべての根幹だと島田さんは考えている。相手の仕事を尊敬していると誠心誠意伝えて、できれば自分のことも好きになってもらって、相思相愛になる。そうして自分が好きな人と一緒に仕事をするのが、一番幸せなのではないか、と。本の企画を考える時は、人が見えないとわからなくなる。実際に存在する具体的な読者を二百人くらいはイメージできるけど、何万人もは無理。あと、こういう仕事ではゼロから始める感覚が重要で、前と同じやり方でうまくいくと予測できてしまう仕事は面白くないし、やりたくない、とも話されていた。

なるほど、と気付かされることもあり、あるある、と共感できることもたくさんあった。肩肘張らない自然体で、まごころの籠った本づくりをしている方の話を聞いて、いい波動を受け取れた気がする。何だか元気が出てきた。

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