以前、社会で働きはじめたばかりの人や、これから社会に出ようとしている人たちと話をしていた時、「仕事って、何ですか?」という質問をされて、こう答えたことがある。
「誰かのために働く、ってことじゃないですかね」
すると、「いや、仕事というのは自分のためにするものでしょう!」という反応が返ってきた。確かに、それは間違っていない。自分がやりたいこと、大切にしていることを仕事に選ぶのは、とてもいいことだと思う。
でも、その「自分がやりたい仕事」が、「自分のため」だけで終わってしまったとしたら、もったいないな、と思う。その仕事の先に「誰か」がいて、自分が生み出したり成し遂げたりしたことを受け取ってくれるかどうかで、仕事の価値はまったく変わってくる。誰かのために何かをしてあげて、対価とともにささやかな感謝の気持を受け取る。人間の世界の仕事は、結局、そのシンプルなやりとりに尽きる。
そう考えると、誰かのために働ける仕事は、世の中にとてもたくさんあることに気付く。むしろ、世間的に華やかで報酬の割がいい商売ほど、往々にして、それが誰のためになっているのかはっきりしないことがある。また、その仕事によって、たとえほんのわずかでも、誰かが傷ついたり踏みにじられたりするのであれば、何の価値もないと思う。
誰かのために。そうでなければ、意味がない。