午後、メールで吉報が届く。今、準備を進めているラダックに関する本の企画が、出版社内で承認されたという。
この本の企画は、今年の初め頃に出版社に持ち込んで、すぐに担当編集者さんについてもらえるなど、割と順調な滑り出し。五月頃までには新刊会議での承認を経て予算を付けてもらって、夏にラダックに取材に行く計画だった。ところが、三月の東日本大震災の影響で、その出版社内での企画の検討がストップ。編集者さんからは「取材は来年にしたらどうか」とも言われたのだが、そうすると、本を出すのが再来年になってしまう。僕はしばらく考えた末、新刊会議での承認を待たず、取材費を自腹で一時立て替える形にして、ラダックに取材に行くことにした。
正式な予算がついていないのに、見切り発車で海外取材。他の人から見たら、相当に無謀に思われるかもしれない(苦笑)。でも、僕としては十分に勝算があったし、前に「ラダックの風息」を書くために、出版社のアテも何もない状態で取材をした時の方がはるかに大きな博打だったから、それほど心配はしていなかった。
正式承認までずいぶん時間がかかってしまったが、発売予定の来夏までには、まだまだ時間がある。戦いの火蓋が、いよいよ切って落とされた。