十年分の素材

午後、玉川学園前で取材。ひさしぶりに、今季初の大学案件。

コロナウイルス禍に世界が翻弄されている昨今、同業者でも特に旅を主戦場にするライターやカメラマンの方々は、取材などの仕事が吹っ飛んだりして、大変そうだ。僕も少なからず影響は受けているが、それでも今日みたいに普通に国内での仕事の依頼をもらえる境遇にあるのは、まだ恵まれている方だろうなと思う。まあ、国内は国内でどこの企業もいろいろ大変なので、例年よりは仕事の本数も目減りするとは思うが。

そんな状況なのだが、実は思いの外、次の目標はすんなりと定まりつつある。

来月刊行される予定の本の原稿を書き上げた時、うまく言えないが、自分の中で何かがすとんと腑に落ちたような、とてもすっきりした気分になった。それと同時に、2009年に書いた最初の本「ラダックの風息」と、今回の本との間に流れた十年間の歳月の中で、自分があの土地でやってきたことをすっかり振り返って、整理し直し、今までやってこなかった別の形でまとめることができそうな感覚が、掴めてきたのだ。それもこれも、今回の本を書く過程で、自分の中で腑に落ちたものがあったからこそだと思うが。

いったん思いつくと、構成のアイデアは、次から次へと出てくる。各年の取材ノートも残っている。写真ももちろん残っている。十年分の素材が手元にある。家にいながらにして取り組めることが、文字通り、山のようにある。

まずは来月出す本をきっちり仕上げて、その後は、それらのアイデアに取り組もうと思う。がんばろ。

QOLを上げる

コロナウイルス禍で不要不急の外出の自粛が叫ばれる昨今(まあそれでも用心しつつ出かけてるけど)、相対的に自宅で過ごす時間が長くなる。ならば、せっかくなので、家の中でより快適に過ごせるように、クオリティ・オブ・ライフとかいうやつを上げてこう、と思い立った。

自炊の時に使うデニムのエプロンを買う。使い込んでボロボロになってたキッチンミトンを業務用のやつに買い替える。台所の棚を整理して、道具や調味料を使いやすい配置に収納する。玄関と洗面所の古くなった蛍光管を新しいのに交換する。

そして今日。ネット接続用のルーターとケーブル類を、ルーター収納ボックスに収納する。

うちにはなぜか、ルーターが3台もある。マンションの屋内配線用のルーター(だと思う)、NTTのルーター、ソフトバンクのルーター(ソフトバンク光なのにNTTのルーターをかまさなければ使えないという不条理さ)。これらを全部繋ぎ合わせて、電源もそれぞれ差して、その上でWi-Fiとバックアップに使うTime Capsuleや、コードレス固定電話の親機や、事務用プリンタも電源とともに繋いでおかなければならない。今まではそれらのルーターや配線が剥き出しになったまま、部屋の隅で魑魅魍魎の鉄男状態と化していたのだった。

で、つい先日、雑誌の記事でサンワサプライのルーター収納ボックスという商品を知って、寸法を見たら、うちで使うのにちょうどぴったりのサイズだった。即決で注文。で、今日届いた。

設営はかなり大変だった。ボックス自体はほぼ組み立て済みだったのだが、魑魅魍魎の回線の再接続が。ネットワークケーブルは間違えないように極力いじらず、電源アダプタケーブルを抜き差しして所定のポジションに通し直し、電源タップの長さが足りなかったので近所に買いに走り(苦笑)、手の甲に軽い擦り傷も作りながら、どうにかこうにかルーターを押し込んでレイアウト。

すべて移設して収納し直し、機器の動作確認も問題なし。いやー、びっくりするほど、すっきり。あの魑魅魍魎が視界から見えなくなっただけで、これだけ見映えが良くなるとは。見た目だけでなく、機器や電源タップを埃から守るのにも、理にかなった収納になった。やった。がんばった。

これぞまさしく、QOLの向上である。にしても、地味なところでばかり上がってるなあ、僕のは(笑)。

エプロンを買う

ほぼ毎日、台所に立っているのに、今の今まで、エプロンを使ったことがなかった。だから、思い切って、買ってみた。自分専用のエプロン。

きっかけは、以前、西荻窪の広島風お好み焼きの名店、カンランに行った時のこと。店員さんたちが身につけていたオタフクソースのデニム製エプロンがとても良い感じで、ああいうのがあったらほしいなあ、と思っていたら、オタフクソースの公式オンラインショップで販売していたので、ぽちっと。

届いたものを身につけて使ってみると、なかなかいい。まず、デニムの風合いがとてもいいし、おなかのあたりにある左右のポケットにミトン(鍋つかみ)とかを突っ込んでおけるのも便利。胸にステンシルで入ってる「There is a smile around okonomiyaki, Borderless Happiness.」というコピーも、何だか笑える。

さて、食事の支度を始めるか、とこのエプロンを身につけると、それだけで何かのスイッチが入るような感じがする。家で原稿を書き始める前に、ペーパードリップでコーヒーをいれて、一口飲んだ時のような。インタビュー取材を始める前、筆記道具とICレコーダーを点検して、机上に並べた時のような。撮影の前に、カメラを首にかけ、指の腹でシャッターボタンやダイヤルの感触を確かめた時のような。

良い買い物だった。このエプロンとも、長い付き合いになるといいな、と思う。

台所に立つ

一人暮らしから二人暮らしに移行して、ほぼ毎日、食事の支度で台所に立つようになった。最近、それにすっかり馴染んできたように感じる。

八百屋やスーパーの店頭で、安くてぷりぷりにうまそうな野菜を吟味するのが好きだ。エコバッグから長ネギを突き出させながら、馴染みのパン屋で食パンを買うのが好きだ。冷蔵庫の中の食材を無駄なく消費していけるような献立を考えるのが好きだし、ちょっと珍しい調味料やスパイスもまんべんなく使い切れるようなレシピを考えるのも好きだ。ストウブの鍋でカレーをコトコト煮込むのが好きだし、鉄のフライパンを威勢よくふるってチャーハンを作るのも好きだ。初めて作ってみた料理で改善点を見つけて、二度目か三度目にもっとうまく作れた時は嬉しい。そして何より、仕事先から疲れた顔をして帰ってきた相方が、もぐもぐうまそうにごはんを頬張ってるのを眺めるのが嬉しい。

料理というのは、別の誰かにうまいうまいと食べてもらえると、さらに嬉しいものなのだな。だから僕は、今日も台所に立つ。

星球大戰

午後、荻窪で打ち合わせ。来月出す新刊の著者校正を終えたゲラを担当編集さんに引き渡す。この後、再校を外部校正者の方に見てもらって、細かい修正が終わったら、月末には印刷所に入稿だ。いよいよだなあ、という気分になってくる。

打ち合わせの後、喫茶店でしばらく本を読み、夕方から新宿で「スター・ウォーズ」のエピソード9を観賞。今日が公開最終日だったそうで、ぎりぎり映画館で観ることができた。ド正道な筋立てでまとめてきたなあ、という印象。エピソード8でだいぶふらついてた印象があったけど、どうにかうまく締め括ったようで、何より。

「スター・ウォーズ」は、エピソード4、5、6を子供の頃に家のテレビで、エピソード1、2、3と7、8、9は映画館で観た。一番印象に残ってるのは、やっぱり第一作のエピソード4。単純明快でこれぞスター・ウォーズという作品。あとは、哀しい人間の業の詰まった、エピソード3。ある意味、一番ジョージ・ルーカスらしい作品だと思う。

エピソード7、8、9を、もし、ルーカスが引き続き自ら手がけていたとしたら、どうなっていただろう。たぶん、僕らが「スター・ウォーズはこうあってほしい」という想像を良くも悪くも裏切りまくる、突拍子もないアイデアやイメージがぶっ込まれてたんじゃないかな、と思う。今となっては、詮無い妄想だけど。

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島田潤一郎「古くてあたらしい仕事」読了。夏葉社という出版社を一人で立ち上げて10年続けてこられた島田さんが、2年以上の時間をかけて書いた本。職種が違ったとしても、島田さんのような思いを抱きながらコツコツと仕事に取り組んでいる人には勇気を与えてくれる本だし、いろんな事情で忸怩たる思いを抱えながら働いている人にも、そっと寄り添うような優しさの籠められた本だと思う。僕もがんばらねばな、と思った。