巣鴨地蔵通り商店街

昨日は千石にある出版社で打ち合わせ。それが終わった後、巣鴨のプルジャダイニングに晩ごはんを食べに行くつもりだったのだが、夕方の開店まで少し時間があったので、巣鴨の地蔵通り商店街を、端から端までぶらぶら歩いてみた。

初めてここに来たのは、二十代の頃だったろうか。東京のほかの場所とは明らかに異質な、高年齢のお客さんをターゲットに徹底的に絞り込んだ店や商品の並びに、なんかすげーなあ、自分は場違いだなあ、と当時は圧倒された記憶がある。でも昨日、ひさしぶりに歩いてみると、昔よりは全然異質な感じも受けず、なんか馴染める感じがするなあ、と思った。理由は単純で、僕がそれだけおっさんになったからだと思う。

あの界隈は、歩道脇とかあっちこっちに、ベンチがたくさんあるのが、休憩するのに助かるんだよな。ほら、完全におっさんだ。

ひさびさの一人暮らし

今週の水曜から土曜の夜まで、相方は法事のため、関西に帰省中。旅に出る以外ではひさしぶりの、一人暮らしのような時間を過ごしている。

とはいえ、連休中なのに仕事は山のように積み上がっているので、毎日、黙々と机に向かっている。先週の平日に取材した大学案件の取材原稿はあらかた片付いたが、別のところからエッセイの原稿を依頼されたので、ここ三日間はそれをずっと書いていた(予想以上に手間取った……)。ついさっき、それもどうにか形にできたので、ようやく一息ついたところだ。まあ、新しい本のゲラチェックはまだこれからだし、大学案件の新しい取材も来週すでに何件か入ってるしで、まったく気は抜けないのだが。

なので、一人暮らしの間は、自炊に時間をあまりかけないことにした。午前中に朝昼兼用でインスタントラーメンか食パンを食べ、コーヒーをいれて、ごりごり仕事。夕方は西荻界隈のカレー屋さんのどこかに行って、さっといただいて、家に帰って、またごりごり仕事。そんな風にして、いささか無味乾燥な日々が過ぎていっている。

でも、とりあえず明日は、息抜きの日にしておこうかな。来週も再来週も、相当忙しくなりそうなので。

春を飛び越えて

桜が咲いたと思ったら、ほんの一週間ですっかり散ってしまって、今は若葉が青々と繁っている。今日は暑かった。27度くらいまで上がったらしい。春を飛び越えて初夏になってしまった感じだ。

毎年この時期は、大学案件の取材の仕事が立て込むので、かなりせわしない。あと、なんでかこの時期に自分で書いた本の編集作業が重なることが多く、去年に引き続き、今年ももろにかぶっている。来週明けには初校が出てくる予定なのだが、よりによって来週は、平日の四日間だけで七件も取材が入っているのだ。一番忙しい時期がかぶってしまうこの現象を、何と名付けたらいいのだろう(苦笑)。

新しい本の刊行時期は、九月に決まった。時間的には余裕があるように見えるが、校了は六月末の予定。なぜかというと、七、八月はラダック方面の取材を計画しているので、九月発売の方が、著者が関わるプロモーション活動を発売のタイミングに合わせやすいからだ。僕の都合というか要するにワガママなのだが(申し訳ない)、九月開催ですでに決まっているイベント的な企画もあるので、続報を待たれよ、というところである。

それより何より、まずは、来週からGWにかけての修羅場を、どうにか乗り切らねば……。

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ウィリアム・ダルリンプル『9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて』読了。インドの多種多様な信仰に生きる人々の姿を切り取った、壮大なノンフィクション。膨大な調査と緻密な取材、あらゆる予断を排したロングインタビュー、流麗な筆致、卓越した構成力……。個人的には、ジャイナ教の尼僧の話と、ダライ・ラマ法王14世の亡命時の警護を務めたチベット仏教の老僧の話が、強く印象に残った。こういう本に出会うと、自分も、書き手の一人としてもっと頑張らねばな、とつくづく思う。良い本だった。

「メイド・イン・バングラデシュ」

バングラデシュでは数少ない女性の映画監督、ルバイヤット・ホセイン監督の作品「メイド・イン・バングラデシュ」を岩波ホールに観に行った。予想通りというかそれ以上に、重い内容の映画だった。

舞台は、バングラデシュの混沌の首都ダッカ。衣料品の縫製工場で働くシムは、工場の火災で同僚を失ったのを機に、従業員の労働組合を作ろうと決意する。労働者保護団体からの助言を受けながら、同僚たちとともに密かに署名を集めたり、職場の写真を撮影したりするシム。劣悪な労働環境、未払いのままの給料、腐敗した経営者と役人、そして社会に根深くはびこる女性蔑視。傷つき打ちのめされながらも、労働組合設立のために奔走するシムの目指す先には……。

「このTシャツ、1日何枚作ってる?」「1650枚」「あなたたちのひと月の稼ぎは、このTシャツ2、3枚分」

僕たちの身近で販売されているファストファッションの衣類の多くは、シムたちのように劣悪な環境と安い賃金で働く労働者たちからの搾取によって成り立っている。衣類だけでなく、皮革製品や、釘やネジなど、さまざまなものがそうだ。そうした搾取の上に僕たちは胡座をかいて、見て見ぬふりをしているのだと思う。この作品は、若い頃からバングラデシュでの労働闘争に関わってきた女性の実体験をもとにしている。フィクションではあるが、投影されているのはまぎれもなく、バングラデシュの、そして世界の現実だ。

ハッピーエンドともバッドエンドとも言えない幕切れは、バングラデシュの女性たちの闘いが、まだこれからも続いていくことを示している。

次のフェーズへ

午後、表参道方面へ。今年の夏頃に出す予定の新刊の、デザインについての打ち合わせ。

去年出した「インドの奥のヒマラヤへ」と同じ方々にご担当いただくので、作業の進め方をお互い共有できているから、その点ではかなり心強く、安心してお任せできる。あとは、編集段階での著者校正と、入校前の色校正に、しっかり集中して取り組まねば、だ。

正直、自分が書き下ろした原稿、いまだにあれで大丈夫なのかどうか、自分で自信が持ち切れないでいるのだけど(汗)、ここまで来たら、次のフェーズへと突っ走っていくしかない。常に最善を目指し続けていれば、たぶん、一番良い形に収まる、はず。たぶん……。

校了まで、がんばろ。それしかない。

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焦桐『味の台湾』読了。素晴らしかった。今年これまで読んだ中ではベストの一冊。台湾ならではの食べ物や飲み物について、ひたすら滔々と綴られているのだけれど、その中に、著者自身の人生の光と影が、漂うように滲んでいて。この本に書かれていたことを思い出しながら、いつかまた台湾を訪れたい。