熊美と熊五郎

今週は毎晩、やけに鮮明な夢を見続けている。普段は、夢を見てもその内容を憶えてることはほとんどないが、今週見た夢は、どれもかなりはっきりと思い出せる。

とりわけよく憶えてるのが、水曜の明け方に見た夢。

僕は、どこかの旅先の宿で、ダッフルバッグの荷造りをしている。あれこれいろいろあってなかなか終わらず、少し目を離していると、二頭のちっこい子熊が、僕の荷物をめっちゃめちゃに荒らしている。

「こらー! 熊美ー! 熊五郎ー!」と叫びながら子熊たちを止め、熊五郎の方を抱き抱えると、熊五郎は僕の黒革の財布に牙をがっしりめり込ませてくわえている。財布を口から離すと、熊五郎は、にぱっ、と笑った。……という夢。

これは、いったい……どういう夢なのか……なんで子熊……しかも、熊美と熊五郎……。

謎は謎のままで、終わりそうな気がする。

新しいオーディオ

ひさしぶりに、自宅のオーディオ機器を刷新した。特にスピーカーは、10年以上ぶりの買い替えになる。

新しく導入したのは、デノンのRCD-N12というネットワークCDレシーバーと、ダリのOBERON 1というブックシェルフスピーカー。CDの再生環境を維持するかどうかは、かなり悩んだ。最近は、ネットワーク機能のみを備えた小型で高性能なアンプが人気のようだし、自宅でCDを聴く頻度も少なくなってきているし。ただ、僕も相方もそれなりの量のCDのコレクションをまだ持っているので、今回はCD付きの機器にしておこう……と考えた次第。

実際に機器を入れ替えてみると、すこぶる快適。RCD-N12の動作は今のところ安定していて、iPhoneをAirPlayでつないでの音源やradikoの再生も、まったくストレスなく使えている。スピーカーのOBERON 1は、音の定位感や解像感が以前のスピーカーとは段違いで、小さめの音量でもクリアに粒立って聴こえる。このスピーカー、コスパ的にもかなり優秀だ。スピーカーはそう簡単に壊れるものでもないので、末永い付き合いになりそうな気がする。

僕たちの家にはテレビがなく、朝起きてまずつけるのは、ラジオ。オーディオ機器の良し悪しは、我が家のQOLに直結している。今回は、良い選択だったんじゃないかなと思う。

寝る前に本を読む

今年に入ってから、毎晩、寝る前に30分から1時間ほど、本を読む時間を作ることにした。

きっかけは、去年の暮れに相方から、ポール・オースターの『4321』をもらったこと。晩年のオースター渾身の大長編なので楽しみにしていたのだが、この本、異様にでかくて重い。A5判ハードカバー、800ページ、重さ約1.1キロ(キッチンスケールだと計りきれなくて、体重計で計った)。僕は普段、本は鞄に入れて持ち歩いて、電車の中や喫茶店で読むことが多いのだが、この鈍器本を持ち歩くのはさすがにしんどい。それで、持ち歩き用の本は別に用意して、『4321』を家で読み進める時間を日課として設けてみよう、と考えた次第。

実際に毎晩、決まった時間に本を読む習慣を作ってみると、思いのほか、いい感じ。デスクライトの下で分厚い本を開く時間が来るのが、待ち遠しくなる。今読んでいるのが、圧倒的な物語力を持つ『4321』だからというのもあるが、別の大作系の本でも愉しくなりそうだ。岩波文庫版のメルヴィルの『白鯨』とか、ブルース・チャトウィンの伝記とか、家にある未読の本を手に取る時間にしていこうかな、と思う。

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ハン・ガン『すべての、白いものたちの』読了。ポーランドの首都ワルシャワに滞在しはじめた「私」と、もしかしたら「私」の代わりに生きていたかもしれない「彼女」のまなざしで、「白いもの」にまつわる断章が、選び抜かれた一語々々で綴られていく。清冽で、穏やかで、哀しく、美しい本。昨年のノーベル文学賞の受賞以来、日本の書店にもハン・ガン作品のコーナーが作られていて、売れ行きも好調のようなのだが、この『すべての、白いものたちの』を読めば、誰もが納得すると思う。

新しいバックパックで


書籍の作業が少し落ち着いたので、今日は平日休みにして、今年初の山歩きへ。おなじみの陣馬山から高尾山までの縦走コース。空は、完璧なる快晴。数日前の雨でトレイルはぬかるんでるかも、と思っていたが、明け方に氷点下まで下がった冷え込みのおかげで、湿った地面のほとんどは凍って霜柱になっていた。

ざくざくっ、と靴が霜柱を踏む音。コココココッ、とキツツキが木の幹をつつく音。時折、尾根の上を、氷のように冷えた風が吹き抜ける。冬の低山ならではの心地よさだな、と思う。こういう気候が、やはり性に合うのかもしれない。

書き納め

年末年始は、やはりというか、予告通りというか、原稿を書き続けていた。

大晦日の前日に書いたのは、連載の最終回に掲載する予定の、3000字少々の短いエッセイだった。連載を開始した当初から、この内容の文章を最終回に用意することは、自分の中で決めていた。良い出来かどうかは、読者の方々に委ねるしかないが、ある意味、とても僕らしい……僕にしか書けない文章になったとは思う。

一年の最後に、自分で納得できる文章を書き上げることができて、少しほっとした。

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シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』読了。2024年に自分が読んだ本の中で、どれがよかったかな……と考えていた頃、年の瀬にふと読みはじめたこの本が、大外から一気にまくっていった感がある。少しずつ読むつもりが、ぐいぐい惹き込まれて、大晦日の夜に読み切ってしまった。サリンジャーの作品群と比較して語る人が多いようで、それはもちろんわかるのだが、個人的には同じ米国人女性作家のカーソン・マッカラーズを思い起こさせる読後感だった。みずみずしく、奔放で、時に可笑しく、時に哀しく……。本当に美しい、珠玉のような文章で、日本語訳の丁寧さ、誠実さも素晴らしかった。