Tag: Writing

誰かのために

終日、部屋で仕事。今書いているラダックの本で、最初の難関にさしかかる。

これまでにざっくり考えていたページ構成が、うまくいかない。必要事項をリストアップし、構成を煮詰め、台割を見直してページ割を変え、ラフを描き‥‥。ああでもない、こうでもない、と、夜遅くまでグダグダ悩む。結局、今日は一文字も書けなかった。

こんな日は途方に暮れて、暗澹とした気分になる。この仕事、「自分の職業だから」という気持だけでは、たぶん僕には続けられない。でも、僕が本を書くのは、それを手に取ってくれるかもしれない、誰かのため。ページをめくって目を輝かせてくれるかもしれない誰かがいてくれるから、僕はこの仕事をやっていられるのだと思う。

いつか本ができたら、その誰かのもとへ、届きますように。

無音の中で

終日、部屋に籠って原稿を書く。連休中はちょっとサボってたから、気合を入れ直さなければならない。

普段、雑誌や本の原稿を書く時は、ラジオをつけたりしているのだが、今回のラダックの本は、原稿を書き進めつつ、編集者の視点でも常にチェックしていく必要があるので、音楽すら聴く余裕がない。何もつけず、無音の中で、時折頭をかきむしりつつ、ひたすらカタカタとキーボードを叩く。こういう時、車通りもほとんどないうちのマンションの立地は、本当に助かる。

キーンコーンカーンコーン、と、武蔵野市が街の中に立てたスピーカーからチャイムが鳴る。もう五時か。テキトーにメシ食った後、第二ラウンドだ。

タンスの整理のように

昨日、今日と、本の原稿に取り組んでいるが、なかなかはかどらない。

書く内容とボリュームを細かく検討しているうちに、前に描いたラフがしっくりこなくなって、ラフを描き直しているうちに台割まで調整するはめになったりと、行きつ戻りつしている感じ。対岸も見えない茫洋とした海に、小舟で漕ぎ出したような気分だ。

一冊の本を書く時には、全体を俯瞰で見渡す目と、細部をきっちり決め込んでいく目が同時に必要になる。全体のことばかり気にしていると細部がおろそかになるし、細部にこだわってばかりだと、他の部分との兼ね合いに問題が出やすい。いいたとえが思いつかないのだが‥‥たくさんの服を、タンスに整理していく時のような感覚だろうか。どこに何をしまうのか、タンス全体での配分を考えつつ、一枚々々の服を丁寧に畳んでいく必要もあるし。

まあ、僕の家のタンスは、パンツも靴下も、ぐっちゃぐちゃだけど(笑)。

「書きたいこと」と「読みたいこと」

永井孝尚さんという方が書いた「会社員が出版社の編集者に会っても、なかなか本の執筆にたどり着けない二つの理由と、その克服方法」というブログエントリーを読んだ。

僕自身、以前「自分の本を出す方法」というエントリーで企画を練ることの大切さについて書いたことがあるが、永井さんのエントリーでも企画書の重要性が強調されている。加えて、本全体のストーリー構成力や、それを最後まで破綻なく書き切る力も必要だと書かれていた。プロの書き手にとっては常識に近いことだが、いつか自分の本を出してみたいと思い描いている人にとっては、参考になる内容だと思う。

ただ、一つだけ、「それはちょっと違う」と違和感を感じたことがある。

企画書を作る際のポイントは、「書きたいこと」ではなく、「読者が読みたいこと」を書くことです。当たり前のことですが、読者はお客様だからです。
(中略)
あくまで出版社からの商業出版をしたいのであれば、出版社もビジネスとしてリスクを取っているのですから、出版社のお客様である「読者が読みたいこと」を書くべきですよね。

永井さんには、「読者が読みたいこと」は商業出版にして、「自分が書きたいこと」は自費出版にすべき、という線引きがあるようだ。だが、僕はそうは思わない。自費出版は、少なくとも僕にとっては、出版社が抱えるさまざまな事情から、自分が思い描いたテーマや仕様での本を出すのが難しい場合に選ぶかもしれない選択肢の一つであって、「読者のニーズには合わないけど、自分が書きたいから」という場合のための手段ではない。

僕にとって本を企画する作業は、「自分が書きたいこと」を練りに練って、「読者が読みたいこと」に昇華していく作業だ。その両方が一致することが、幸せな本を作るために必要な条件だと思っている。出版社から企画を依頼された場合は、その企画の方向性を自分が納得できるものに近づけるための工夫と努力はするし、自分自身で企画を立てる場合は、「自分が書きたいこと」と「読者が読みたいこと」が一致しているという確信が持てなければ、出版社にプレゼンすらしない。

たとえ、それが売れそうな企画だからといって、自分が伝えたいわけでもない文章を書くことは、フラストレーションのたまる労働でしかない。本を書くことの本当の喜びは、自分が心の中で大切にしていることを書き、それを読者に届けて、ほんのちょっとでも心を動かすことに尽きると思うから。

いいチームで

昼、外苑前で打ち合わせ。これから作るラダックの本について、デザイナーの井口さんと編集者さんを交えてのキックオフミーティング。僕としては、長い間一緒に仕事をしてきて気心の知れたデザイナーさんと組めるので、とても助かる。編集者さんも別れ際に「いい本にできるような気がします!」と言ってくれて、心強いかぎり。今回も、いいチームで本を作れそうな気がする。

まあ、実際に作業が本格化すれば、いくつもの修羅場が待ち受けているのは間違いない(苦笑)。ただ、こういうチームで仕事がやれる時は、なるべく他の人にスムーズに気持よく作業してもらえるように、いつもよりなおさら、問題になりそうな部分はできるだけ自分のところでクリアするようにしなければならないな、と思う。自分のところでめいっぱい無理をすることになっても、他の人の力を活かせるなら、それでいい。

いいチームで、いい本を作る。そのためなら、何だってやるさ。