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仕事始め

年末年始は、2泊3日で実家のある岡山に帰省した。母と妹一家とですき焼きを食べ、姪っ子に学校と部活の話を聞き、甥っ子1号と公園でサッカーをし、甥っ子2号は頭をピコピコハンマーで叩いて……あとはこたつで本を一冊読んだくらいか。大晦日もテレビはほとんど見ず、元旦は雑煮とおせちを食べて近所の神社に初詣に行き、昼過ぎ発の新幹線で東京に戻ってきた。

今朝は昼頃までゆっくり寝て、そこから仕事始め。BE-PALのサイト向けの原稿を1本仕上げる。今年からしばらくの間、BE-PALのサイトで週イチ連載を担当するので、今の時点で書ける原稿はできるだけ書き溜めておかないと、後で困ることになるからだ。今作っている本に関連する件で書かねばならない長めの原稿もあるし、週明けからはインタビュー取材の手配もいくつかしなければならない。連休明けには大事な打ち合わせもいくつかあるし、その後は2冊の本の編集作業が本格化する。1月末か2月頃には、沖縄取材も控えているし。

よっしゃ。とりあえず、できることから、がんばろ。

「書く」ということ

部屋で仕事。来年出す予定の本に収録するための原稿を書く。

しばらく前から準備していたこの原稿は、今年取り組んだ中でも、自分にとって一番大切な文章だ。今年だけじゃなく、ここ数年の間でも一番大切かもしれない。どんな文章にするかというイメージは、ずっと前から自分の中で思い描いていて、かなり具体的な形になっていた。でも、なかなか書きはじめられないでいた。少し怖かったのかもしれない。慎重に言葉を選び、自分の気持ちに重ね合わせ、これか、いや違う、と逡巡をくりかえしていた。

でも今日、その文章……たった3000文字ちょっとの長さだけれど、それを最後まで書き終えることができた。書いている間、自分でもびっくりするほどの集中力で、ありったけの気持ちを注ぎ込み、一文字ごとにもがきながら、必死になってキーボードを叩いていた。自分の中に魂みたいなものがあるとしたら、今日一日で、ごっそり削れてしまっただろうと思う。

そうしたら、本当に最後の数行の部分で、自分でも思っていなかったような言葉……たった六文字の言葉が、すっと浮かんできたのだ。その六文字が入ることで、すべてがぴったりと重なり合う。これで書ける、とようやく確信することができた。最後の一行まで書き終え、最初から読み直した時、バカみたいだけれど、ちょっと涙が出そうになった。

「書く」というのは、たぶん、こういうことなのだ。だから僕は、この仕事を続けているのだと思う。

うっかり同じ

夜、仕事が一段落すると、WordPressの管理画面を開き、このブログに載せるための文章を書く。

何を書くかは、書きはじめる時点でぼんやり考えている。長さや内容にもよるが、短いものなら10分か15分で書いて、簡単に推敲して、すぐにアップしてしまう。文章を書く際の瞬発力みたいなものを錆びつかせないためには、悪くないトレーニングだと思っている。

ただ、たとえ大半がどうでもいい内容であっても、これだけ毎日々々書き続けていると、たまに昔書いた文章とそっくり同じ内容になってしまうことがある。そういう時は、書いていて「なーんか、既視感あるなあ‥‥」と思えてきて、サイト内を検索してみたら、あーやっぱり、となったりする。

で、何が言いたいのかというと、今日もそんな風にして昔書いたのとほとんど同じような趣旨の文章をうっかり書きそうになったということと、今日書いたこの文章みたいなのも、3年後くらいにうっかりまた書いてしまうかもしれない、ということである。

‥‥ほんとにどうでもいい内容だな、今日は(笑)。

旅の本、冬の時代

旅の本が、売れていない。書店の旅行関連コーナーに行っても、平積みされている新刊の点数が明らかに少ない。各社でシリーズ化されている旅行ガイドブックも軒並み低調だそうで、コスト的に改訂のメドが立たないものまであるという。

そもそも、海外旅行業界全体が思わしくない状況のようだ。長引く円安傾向に加え、混迷を極める中東の政情不安は、テロという形で欧米諸国にも波及している。地震などの自然災害や、少し前のエボラ出血熱の流行など、マイナス要因を挙げはじめたらきりがない。プラスになりそうな要因は、原油安による燃油サーチャージの低下くらいだろうか。今、日本からの旅行先で安定して人気なのは、台湾だけではないかと思う。その証拠に、台湾関連の本や雑誌、ムックの刊行点数だけが、最近飛び抜けて多い。

こういう状況になると、しばらく前からいつのまにか「トラベルライター&フォトグラファー」みたいなレッテルを貼られている(苦笑)僕のような人間は、やっぱり困る。僕自身は別に旅だけを専門にしてるわけではなく、今も旅とはまったく関係ない本を編集していたりするのだが、個人的に大切にしている企画のいくつかが旅にまつわる本であることは間違いないので、こういう旅行書の冬の時代の到来はきつい。

新しい旅の本の企画書を作っても、出版社では今、前にも増してなかなか相手にしてもらえない。多くの出版社が望むのは、とにかく確実に売上が見込める本。斬新なアイデアは敬遠される。だから、他社の売れ筋企画を臆面もなくパクった本が次々と出てしまったり、同じ地域についての本ばかりが妙に増えてしまったりする。本が売れないから、出版社が用意する予算はどんどん少なくなり、それにつれて品質も下がっていく。

そんな冬の時代に、僕のような人間には、何ができるのだろう?

この仕事をしている以上、常に心のどこかで、カキーンと逆転満塁ホームランを放つためのアイデアを考え続けてはいる。でも、その確率はあまり高くないし、たとえ打てたとしても、実際はそれほど潤沢に報われるわけでもない。

それよりもたぶん大事なのは、逆転満塁ホームランとは別に、本当の意味で自分が大切にしているもの、作りたいと思える本のアイデアを、ぶれずに心の中で持ち続けることなのだと思う。仕事をどうにかこうにかやりくりして持ちこたえながら、チャンスが訪れるのを、息を潜めて虎視眈々と待ち続けるしかないのだ。

‥‥ほんと、バイトでもしようかな(苦笑)。でも、もうしばらく、がんばろう。作りたい本を、作るために。

仕事の後の甘やかし

まるで台風のような、生ぬるい強風が吹き荒れた日。終日、部屋で仕事。

先週収録したインタビューの音声起こしがようやく終わり、それを基にした原稿の執筆に着手。言葉を選び取って磨きをかけるうちに、たぶん文字数は半分以下になってしまうと思うけど、単調で果てしのない音声起こしに比べれば、言葉を研ぎ澄ませていくのは、ずっと愉しい作業だ。

とはいえ、異様に集中力を要求される作業でもあるので、数千字も書いていると、脳がめっちゃ疲れる。こういう時は、仕事の後の甘やかしが必要だ。今宵のおやつは、ひさびさに買った、レヴェのポムドテール。しかも2個。じゃーん。

深夜、一人ぼっちの部屋でうれうれとミルクティーをいれている、しがないおっさんであった。