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立ち止まる冷静さ

これは、自分自身もやってしまうかもしれないことなので、自戒の意味も込めて書くのだけれど。

今の世の中では、あらゆる情報がいとも簡単に拡散していく。一昔前はテレビや新聞などのメディアによる拡散がほとんどだったが、今はFacebookやTwitterやLINEによって、それが劇的に加速している。もともとワンクリックで広まるような構造のツールだから当然なのかもしれないが、それは時に、えげつないほどの破壊力を伴う。

ある事件が起こった時、その渦中にある人に対して、ネットを介して強烈な罵倒や嘲笑が嵐のように浴びせられることがある。たとえば、それが犯罪の加害者であれば、社会に非難されるのもある程度仕方ないのかもしれない。でも、それが犯罪なのかどうかも判然としない段階で、まるで匿名の集団リンチのように、ネットを通じてとんでもない量の罵詈雑言が叩き付けられている場合もあるように思う。最近では、そうした人々を意図的に焚き付けるような報道をしているメディアも見受けられる。

ネット上で、時に匿名という安全な立場から、非難の対象となる人を罵倒し、嘲笑い、いっときの正義感を満喫し、そしてすぐに忘れる。そうしたネット上での罵詈雑言や心ない噂話に巻き込まれるのは、非難の対象となる張本人だけではない。事件によっては、その被害者も事を荒立ててほしくないと思っているかもしれないのだ。でも、ネットでの情報拡散はそうした思いさえ許さず、何も悪くない弱い立場の人を好奇の目に晒してしまったりする。

僕たちは、ワンクリックでシェアとかリツイートとかをしたりする前に、立ち止まって考えてみる冷静さを持つべきだと思うのだ。それは本当に正しい情報なのか。それを人に伝えることで、何がもたらされるのか。取り返しのつかないほど傷ついてしまう人はいないだろうか。自分自身の言葉で、責任を持って語れるだろうか。

もう一度、ネットに対して、自分自身に対して、冷静になってみるべきだと思う。

食糧の買い出し

ぽんこつな状態で過ごすのにもちょっと飽きてきたので、午後、吉祥寺に出かける。月末からのアラスカ旅行で必要になる食糧の買い出し。

今日買った食糧のほとんどは、山菜おこわや、パスタ、スープなどフリーズドライのもので、あとはインスタントラーメンなど。アウトドアショップで売られている登山用に適したパッケージのものだ。食事としてはいささか味気ないが、場所が場所だけに仕方ない。

日程表からあらかじめ必要な数をそれぞれ算出しておいたのだが、実際に買ってみると結構な量で、レジではお姉さんたちが二人がかりでチェックして袋詰めしてくれた。たぶんその二人には「この人、二、三人のグループでお盆休みにどこかの山へ、二泊三日くらいの縦走に行くのね」とでも思われたんじゃないかと思う。

すみません。一人ぼっちで合計九日間、アラスカくんだりでキャンプを張る物好きです。

三井昌志「写真を撮るって、誰かに小さく恋することだと思う。」

torukoi昨日の昼、銀座のキヤノンギャラリーで開催されていた三井昌志さんの写真展にお邪魔した時、会場で先行販売されていた三井さんの新刊「写真を撮るって、誰かに小さく恋することだと思う。」を買った。たぶん書店の店頭には、八月中旬頃から並びはじめるのだと思う。

三井さんには「撮り・旅!」にもミャンマーの旅の写真と文章を提供していただいているし、それ以前からサイトも拝見していたので、この本に収録されている写真の中には、僕にとって結構なじみ深いものも少なくなかった。でも、小ぶりでかわいらしいこの本を開いてみると、いい意味で、全然違うのだ。ページをめくるたびに、写真とそれに添えられた短い言葉から、ふわっとたちのぼる気配。めくればめくるほどそれは濃くなっていって、懐かしいような、せつないような、そんな気持で胸がいっぱいになる。写真集という形だからこそ伝えられるメッセージが、この本には込められている。

「写真を撮る時は、とても素直に撮っています。奇をてらわずに、被写体となる人の一番いい表情をそのまま撮っているんです」と、「撮り・旅!」のインタビューで三井さんは話していた。たぶん、旅をする時に一番大切なのは、写真を撮っても撮らなくても、その国の土地や文化や人々に無垢な気持で向き合い、好きになっていくことなのだ。そうした無垢な気持を忘れずに旅をしているからこそ、人々は三井さんに心を許して、素晴らしい表情を見せてくれる。まるで、小さな贈り物をさしだすように。

この冬にはまた、三井さんの新しい旅が始まる。今度はどこで、どんな「恋」に落ちるのだろうか。

「ダバング 大胆不敵」

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先週末からシネマート新宿での公開が始まった「ダバング 大胆不敵」(この邦題はとても良いと思う)を観に行った。毎週月曜はメンズデーだそうで、1100円で観ることができた。

インドでは知らぬ者のいない「3カーン」の一人、サルマン・カーンの代表作のこの作品は、これぞまさにマサラ・ムービーと呼べるもの。笑いやロマンスや家族愛、悲劇にスリルにサスペンス、激闘、復讐、そしてハッピーエンド。あらゆるドラマ要素をぶち込んで、歌とダンスと一緒にぐつぐつ煮込んだ映画だ。

ありえないくらいデタラメに強く、結構あくどいこともするんだけど、お茶目で優しいところもあったりして、どうしても憎めないやつ。そんな主人公のチュルブル・パンデーが、物語を最初から最後まで、ハチャメチャな勢いで引っ張り続ける。この映画、少なくとも初見では細かいことをいちいち思いめぐらしながら観るような映画ではない。頭をカラッポにしてぼーぜんと眺めながら、「ねーよ! んなわけねーよ!」と心の中でツッコミまくり、喜怒哀楽のアップダウンに思うぞんぶん浸って、「はー、すっきりした」と言いながら映画館を出るような映画だと思う。

日本人でインドという国を好きな人と嫌いな人とが結構はっきりと分かれるように、ある意味インドの濃縮果汁みたいなこの映画も、日本では好き嫌いがはっきり分かれると思う。決して万人受けはしないと思うが、インドの庶民が一番食いついて観るのはこういう典型的な娯楽映画なのだ。だから、この「ダバング 大胆不敵」が日本で公開されたのは、これからの日本でのインド映画の扱われ方にとって大きな意味があったと思うし、できれば少しでも良い興行成績をあげてくれればと思う。

「“旅”が始まったばかりの国、バングラデシュ」

ダイヤモンド・ビッグ社の「地球の歩き方」編集部のサイトで、今年二月に行ったバングラデシュの取材レポートを遅まきながら連載していくことになりました。これから十月頃(「地球の歩き方バングラデシュ」の改訂版が発売される時期)までかけて、全部で四回に分けて掲載されていくそうです。これに合わせて写真を選び直し、文章も新たに書き起こしました。サイトのデザインがやや古いため見づらく感じられるかもしれませんが、写真は一応Retina対応にしてもらっているので、ある程度はディテールも見られると思います。

タイトルは「“旅”が始まったばかりの国、バングラデシュ」。まだ観光というものが未発達な、でも、だからこそ感じることのできるバングラデシュの魅力と奥深さを、門外漢ながら伝えていければと思っています。